●保険大再編で動き出した生保の株転(2001年2月22日)
 フィナンシャルワングループ傘下で太陽生命との統合をめざす大同生命が2002年4月に、また、東京海上・日動火災とミレア保険グループを結成する朝日生命が2004年を目途に株式会社に転換する。保険大再編で生保相互会社の株転が、徐々に現実の動きになってきた。
 中堅以上の国内生保はすべて保険業独自の相互会社形態(契約者=社員)となっており、資本調達手段が返済義務のある基金増額や劣後ローン・劣後債の取り入れなどに限られている。そこで、生保の安全ネット構築に関連して、市場から機動的に資金調達できるようにするため、保険相互会社の株転ルールがすでに法制化されているが、超低金利下の逆ざや増大傾向が続く中で、現実論にはならなかった。株転するには、有配当契約の社員権補償として、保険会社の純資産(時価ベースの「資産‐負債」の総額で、株転後の資本金の上限額)に対する個々の契約者の寄与分(貢献度)に応じて株式を割り当てることになるが、逆ざやで純資産の目減りが著しい。とくに大手生保の契約者数は1000万人を超えており、割り当て1株未満の契約者は、保険会社が端株部分を一括売却し代金を交付して整理できるが、それでも200万人前後もの株主が発生する。同時増資により株主数をさらに絞り込めるが、金融機関全体の株価の冷え込みも相まって、株主が納得できる株価は期待できない。全契約個々に行う寄与分計算や各種通知にも巨額の経費がかかる。
中で、大同生命(契約者95万人)は逆ざやもわずかで、株転できることが健全性のPRになる。朝日生命(410万人)は持株会社形態のミレアグループの資本協力が可能だが、今後の統合に向け提携関係にある安田生命・富国生命がこれに続くかどうか……。
 さらには2005年前後〜2010年頃にかけて、第一生命・安田火災グループ、三井・住友グループ、フィナンシャルワングループなど、生保の株転と保険持株会社の設立による生損保大再編あるいは金融持株会社傘下の金融・保険大統合時代になるだろう。 
 なお、契約者側にとって株転は、すでに96年の保険業法改正以降、相互会社でありながら新規契約から3利源の有配当保険が姿を消し、株式会社生保と同じ5年利差配当保険が主力となっているほか、無配当保険の取り扱いも認められていることなどから、商品面で特段の変化はないだろう。合従連衡により破綻リスクが軽減される点が一番大きなメリットになる。ただし、相互会社における契約者配当ルール(剰余の80%以上の配当義務)が無くなるため、株転生保の配当率の低下が懸念されるなど、株転すなわち契約者にもすべて有利になるとはいえないのだ。生保相互会社の株転後、金融庁は契約者保護のため保険業法114条の公平・公正な契約者配当ルールに基づき、きっちり監視する必要がある。(「マネージャパン」2001年4月号掲載筆者稿に加筆)

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