●どうなる?ネット「金融・保険総合口座」(2000年9月4日)
 三和銀行+東海銀行、東洋信託、ユニバーサル証券、太陽生命+大同生命、日本興亜損保(日本火災+興亜火災)が集合するフィナンシャルワングループや、さくら銀行、野村証券、中央三井信託、日本生命、三井海上、三井物産グループなどが相次ぎ金融ポータルサイトを立ち上げ、次第にネット総合口座の実像が見えてきた。
 一つのサイトで預金・決済、株式、投資信託、生保、損保、各種年金、各種ローン、FPサービスなどが一元的に取引できるネット総合口座が実現し、各メニューの利用ポイントに応じて手数料・保険料・ローン金利などが割り引かれるか、ないしはキャッシュバックサービスが行われるならば、利用者にとって優れて便利で有利である。この究極の直販は、保険対面販売チャネルの大半を占めるコンサルティング能力の低い層に決定的なダメージを与えるであろう。
この金融・保険サービスミックスは窓販ではなく、それぞれ個別の商品・サービスを一つのサイト上に集合させるもので、どこかの軒先を借りるものではないから、もはやこれまでの業態別の窓販規制では対応できない。
 イメージはともかく、具体的な手続きを一つ一つ精査すると、実に多くの問題が山積している。入り口の大きな問題として、業態ごとに異なる顧客データベースの名寄せをどう整合するかという壁にぶちあたる。大手生保は商売柄最も名寄せが進んでいるが、銀行は顧客番号、損保は種目別に証券番号で寄せてあり、グループ全体の正確な顧客数すら判然としないのだ。これらのバラバラのデータベースを串刺しにして整理・統合するとなると、厖大なコストと時間を費やさなければならない。各グループの中では、ひとり三和銀行が主役に位置しているフィナンシャルワンの総合口座の立ち上げが最も早いだろう。三和銀行が「オールワン」(円定期預金、外貨預金、投資信託、債券、ローンなどの組み合わせ)の取り扱いで構築したゲートウェイ機能(アウトソーシング)によるデータベースの認識・整理システムのノウハウを活用することで、参加各社が協調しているからだ。規制の中身次第で早ければ2001年度中に立ち上がる可能性もある。
 とくに手続き上抜本的な規制緩和が必要なのが保険で、紙ベースの申し込み手続きが必須要件になっている。生保の危険選択、損保の現物確認(例えば車検証コピーの郵送など)のしばりがある限り、総合口座に持ち込める商品は極めて限定される。顧客情報のグループ会社による共同使用に関する規制がどうなるかという問題も含め、抜本的な規制緩和が行われなければネット総合口座は夢物語に終わる可能性なしとしない。
(「週間金融財政事情」2000年8月21日号の筆者稿に加筆)

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