●生保セーフティネットの整備進む(2000年4月15日)
保険契約者保護のための新しいセーフティネットの整備が急ピッチで進んでいる。今国会で預金保険法改正法案と一括審議中の、保険業法および金融機関等の更生特例法の一部改正法案がそれで、早ければ4月末成立、8月末にも施行される見通しだ。それ以降は、生保版ブリッジバンクの創設などにより、「危ない生保」の契約者の不安感はかなり軽減されるだろう。
法改正による新しい生保セーフティネットの目玉は逆ざや負担による生保の破綻リスクへの対策として、再建型倒産法制が整備されることだ。その主な骨子は@保険相互会社への会社更生法の適用、A債務超過に陥る前の早期の更生手続き開始による処理費用・時間の圧縮、B司法手続による権利調整(保険契約者の優先権、一般債権の削減、予定利率の引き下げ調整)から成る。
現在の行政手続きによる破綻処理は実際に債務超過状態に陥った後、破綻処理が行われるため、資産劣化による処理コストの増大が避けられず、契約移転についても包括(全部)移転もしくは合併の選択肢しかない。
こうしたタイトな処理スキームの結果、契約者には大幅な予定利率引き下げによる保険金額の減少が、また保険業界にも資金拠出の負担が重くのしかかる。
新たに導入される会社更生法による司法手続きでは、破綻前に将来収支分析をトリガー(目下、日本アクチュアリー会が具体的な基準を策定中)とし、債務超過に陥るおそれがあると判断されたとき、当該保険会社に申し立て義務(またはモニタリングを行う金融監督庁に申し立て権限)を付し、早期に更生手続きに入ることが可能。また、契約移転についても一部移転や、相互会社に対する株式会社への転換規定が整備されることから、ケースバイケースで多様かつ迅速な処理方法が選択できる。これにより、従来の破綻処理に比べ、契約者・保険業界いずれの負担も軽減できるメリットがある。
とくに保険版ブリッジバンクの創設により、受け皿保険会社への契約継承がスムーズになる。旧日産生命→あおば生命→仏アルテミスへの承継と同じ図式で、内外生損保会社が買収しやすくなる。これらの処理スキームは行政手続きの場合もほぼ同様に措置されるため、いずれにしても迅速な処理により契約者の負担は軽減されることになる。(「マネージャパン・2000年5月号」掲載文に一部加筆)
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