●有珠山の噴火災害と保険の補償(2000年4月6日)
◎損害保険の補償
〈住宅火災保険などの一般の火災保険だけに加入している場合〉
 噴火による建物や家財の損害は免責となり、損害保険金は支払われない。降雨により堆積した火山灰の泥流や土石流が発生し、建物や家財に損害を被った場合は、水害と見なされるが、住宅火災保険などの一般の火災保険では水害による損害は補償されない。
 噴火による火災で建物が半焼以上、家財が全焼またはその収用建物が半焼以上となった場合の火災損害についてのみ、火災保険金額の5%(300万円限度)の地震火災費用保険金が支払われる。

〈住宅総合保険などの総合保険だけに加入している場合〉
 噴火による損害は上記同様免責で、損害保険金は支払われない。噴火による火災損害については、上記同様の地震火災費用保険金が支払われる。降雨による泥流や土石流の損害は水害と見なされ、次の算式で水害保険金が支払われる。
(1)建物や家財が時価の30%以上の損害を被った場合
保険金額×(損害額/時価額)×70%=水害保険金
(2)上記(1)に該当しない場合で、床上浸水同様の損害を被った場合
 @時価の15%〜30%未満の損害の場合は、保険金額の10%(200万円限度)。
 A時価の15%未満の損害の場合は、保険金額の5%(100万円限度)。

〈上記の火災保険に地震保険をセットして加入している場合〉
 噴火のショックによる倒壊・破損、延焼含む焼損、噴火による津波で発生した流失・倒壊・破損、噴火に伴う溶岩流・火砕流・噴石・火山灰・爆風等による倒壊・破損・焼損・埋没、噴火の結果発生した山津波による流失・埋没・破損などの損害が補償される。
 地震保険の契約対象は住宅とその家財で、営業用什器・備品、商品、自動車、30万円を超える貴金属・骨董品(1個・1組につき)、通貨、有価証券等は家財に含まれない。
 地震保険の保険金額は、主契約の火災保険金額の30%〜50%相当額の範囲内で、建物と家財それぞれ別々に設定する。ただし、建物5000万円、家財1000万円が限度。例えば、住宅総合保険を建物2000万円、家財1000万円で契約している場合、地震保険の契約金額は建物が600万円〜1000万円、家財は300万円〜500万円の範囲内で任意に設定する。つまり、最高の支払いでも元の家の半分の価値のものしか立て直せないことになる。
 保険金の支払方法は、@建物・家財が全損の場合、それぞれの地震保険金額の全額(時価額限度)、A建物・家財が半損の場合、それぞれの地震保険金額の50%(時価額の50%限度)、B建物・家財が一部損害の場合、それぞれの地震保険金額の5%(時価額の5%限度)が支払われる。
ちなみに、有珠山周辺地区の地震保険の普及状況は、噴火災害等の可能性のある伊達市、豊浦町、虻田町、洞爺村、壮瞥町の近接5市町村の所在契約(証券)件数が2051件(世帯平均普及率7・8%、全国平均15・5%)、火山性地震や降灰損害の可能性のある室蘭市、登別市、留寿都村、大滝村、白老町まで合わせた周辺10市町村で1万3731件(平均普及率9・2%)。建物・家財の合計保険金額は上記の近接5市町村が134億7600万円(1件当たり657万円)、周辺10市町村で802億8800万円(同585万円)。なお、災害対策基本法63条で定められた「警戒地区」に設定されると、地震保険には加入できない。
 噴火により堆積した土石が数日後に降雨で土石流(泥流)となった場合の損害は、@地震保険の契約者には「噴火による」損害として、A総合保険の契約者には「水害による損害」として、いずれも保険金が支払われる。ただし、地震保険を住宅総合保険などの総合保険にセットして契約している場合は、@地震保険部分は約款の規定通りの支払い、A総合保険部分は「総合保険による水害としての算出額」と「損害額から地震保険の支払額を差し引いた額」のいずれか小さい額を支払う仕組みで、損害額を超えて保険金が支払われることはない。

〈車両保険の取り扱い〉
 一般の車両保険では噴火による噴石、火砕流等の損害は免責で補償されない。ただし、降雨による土石流(泥流)の損害については「落下中の他物との衝突」と見なされ、補償される(無事故等級据え置き)。  


◎JA共済の補償
 
JA共済の建物更生共済(積立型長期火災共済・契約金額の上限5億円)では、火山の噴火・爆発またはそれによる津波の損害については原則、火災共済金額(新価ベース)の50%に損害割合を乗じた額が自然災害共済金(損害額の50%限度)として支払われるが、JA北海道(契約金額の上限3億円)の場合は下記の通り縮小填補(補償限度)が大幅に緩和されている。有珠山周辺地域を所管する洞爺湖農協、伊達農協での建物更生共済の所在契約件数は約2700件、契約共済金額合計約270億円(1件平均1000万円)。
(1)噴火等による損害割合が10%以上で、火災共済金額が時価の80%以上の場合、実際の損害額(火災共済金額限度)を支払う。
(2)噴火等による損害割合が10%以上で、火災共済金額が時価の80%未満の場合、実際の損害額×(火災共済金額/時価の80%)の金額(火災共済金額限度)を支払う。
(3)降雨による土石流(泥流)等による損害割合が5%以上の場合、実際の損害額×(火災共済金額/時価)の金額(損害額限度)を支払う。

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