直販自動車保険Q&A・初級編(02年11月29日)


●早わかり通信販売の自動車保険とは

通信販売で
保険に入っても
大丈夫?

――直販保険会社の信頼性と成長性は?
山野井 いま日本で営業している直販保険会社は、世界的な保険・金融グループや日本の大企業グループの保険会社です。ヨーロッパでは約30年前から通信販売が行われていて、イギリスのbP自動車保険会社は直販保険会社です。電話とコンピュータを融合したCTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)システムの構築などにより、いつでもどこでも瞬時に見積もりしてくれる利便性に特徴があり、IT革命による保険革命と言われています。経費部分の保険料も格段に安く、欧米で急成長を遂げてきました。日本ではまだ歴史が浅いので、これから本格的に発展するでしょう。同時に、直販保険会社間の生き残り競争も激しくなるでしょう。すでに直販市場から撤退した保険会社もありますが、仮に撤退しても契約は他の保険会社に紹介継承されたり、買収先の保険会社にそのまま引き継がれることとなり、1年契約でもあり何ら心配はありません。

リスク細分型は
一般の自動車保険と
違うもの?

――通信販売(直販)のリスク細分型自動車保険は、一般の自動車保険と違いがあるのですか?
山野井 何か特殊な保険と誤解している人もいるかもしれませんが、同じ補償内容の自動車保険です。リスク細分型と言われる価格体系に特色があり、事故を起こす確率の低いドライバーほど、保険料が安くなる仕組みです。欧米では通信販売、代理店販売にかかわらず、リスク細分型は優れて合理的で公平な価格体系として定着しています。とくに無事故契約者層を中心に優良ドライバーの支持を得ています。
――それなら、保険会社はみなリスク細分型の保険料にしたほうがよいのでは。
山野井 欧米の保険会社ではリスク細分型の保険料が一般的です。日本は遅れていて、自由化により6年前に初めて導入されました。現在、一般の保険会社でもリスク細分型の要素を導入しつつあり、今後はこれが主流になりますよ。 

リスク細分型の
自動車保険は
安いってホント?

――リスク細分型の保険料は、どのように計算されるのですか?
山野井 年齢・地域・使用目的・走行距離など9項目のリスク区分項目に基づき、個々のドライバーの危険度に応じて保険料を算定します。リスク区分の内容は法律で決められた範囲の中で、保険会社ごとに独自に設定し、重視するポイントにも違いがあります。
――一般の自動車保険の保険料と、どう違うのですか?
山野井 一般の自動車保険でも年齢条件、無事故等級割引、車種による料率クラスなどでドライバーの危険度を大まかに反映した保険料を設定しています。ドライバーの危険度を9項目について、さらに細かく区分し保険料に反映するようにしたのがリスク細分型の価格体系で、危険度の低いドライバーほど低い保険料になります。リスク細分型の直販会社に無事故契約者層の加入が進むと見込みの損害率が低くなり、保険料がさらに安くなります。

価格で選ぶなら
おすすめの
保険会社はどこ?

――ズバリ聞きますが、一番安い保険会社はどこですか?
山野井 まず、保険料(保険の原価=純保険料)はドライバーの危険度によって異なるということを理解してください。例えば、事故を起こす確率の低いドライバーなら、リスク細分型の保険料を採用している直販保険会社が安いでしょう。
また、直販保険会社の間でも年齢、地域、走行距離、運転歴、使用目的などのリスク区分のどこにウェートを置いて価格体系を設定するかで、保険料の格差が出てきます。したがって、面倒くさがらずに、必ず複数の保険会社で見積もりを取って比較することです。各社のホームページで簡単に見積もりが取れますから。
――いろいろな割引制度もありますね。
山野井 各種の安全・防犯装置割引、複数所有新規割引など、たくさんの保険料割引制度がありますが、おおむね内容は各保険会社とも同じです。直販会社にはインターネット割引など経費部分の保険料を割り引くものもありますよ。

ダイレクトでも
事故処理や
サービスは大丈夫?

――直販保険会社の事故対応サービス体制は、どうでしょうか?
山野井 保険会社は金融庁の認可事業であり、当然どこも全国的な損害サービス体制を確保している。サービス拠点数や要員数は大手保険会社に比べて少ないようですが、直販保険会社の場合は優良契約者が多く、担当者1人当たりの事故契約件数で見れば一般の保険会社に勝るとも劣らないでしょう。サービス要員は主に経験者をリクルートしていますね。
――その他のサービス面では、どうですか?代理店とのサービス格差はありますか?
山野井 直販保険会社も事故時のレッカー搬送サービス、現場簡易修理サービスなど各種のロードサービスを行っていますね。利便性と低価格で直販を選ぶか、地域でのトータルサービスで代理店を選ぶかは、消費者の選択に委ねられます。消費者側からあえて問題点を指摘するなら、平均約18%もの手数料を収入しながら更改申込書を郵送し返送させてほとんど顔を見せないという通信販売を代理店がやってはいけませんね。万一の事故処理サービスや平素のトータルリスクマネジメントサービスで代理店を選ぶ必要がありますね。

自動車保険は
難しくて
わからない!?

――自動車保険の種類がいろいろあって分かりにくいのですが。
山野井 とても簡単ですよ。@相手方への賠償保険、A自分や家族(搭乗者)のケガの保険、B自分の車の保険、この3つの補償を備えればいいのですから。3つの補償の中身は、@自賠責保険と対人賠償保険、対物賠償保険、A人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険、自損事故傷害保険、無保険車傷害保険、B車両保険があります。うちBには基本補償に含まれるものや特約としてセットするもの、自動付帯となるものがあります。
――自賠責と任意保険の違いは?
山野井 自賠責保険は法律で加入が義務付けられている強制保険で、対人賠償の最低保障制度です。保険金額はケガで120万円、死亡で3000万円、後遺障害で4000万円が上限。人身事故で1億円を超す賠償例は多くあり、上乗せの任意の対人賠償保険が必要です。また、物の損害や自分のケガには任意保険が必要になります。

補償は十分
保険料は安く
保険選びのコツは?

――自動車保険の掛け方のコツを教えてください。
山野井 何より相手方への賠償の備えを第1に考えましょう。事故は相手を選べないので、対人賠償の「無制限」は常識です。対物賠償も相手は車ばかりではない。建物や施設、積載物などに損害を与え1億円を超す賠償例もあり、できれば「無制限」にしたいですね。
――自分や家族のケガの補償は?
山野井 本人・家族のケガの補償を重視するなら、自車・他車に乗車中、歩行中のケガまで広く補償する人身傷害をしっかり掛けておけばいいでしょう。搭乗者傷害はプラスアルファ、差額ベッド代などの備えとして、保険料の安い「部位・症状別払い」で必要な分だけ掛けておく。人身傷害は休業損害や慰謝料も含め実際の損害額全額が支払われ、保険金額も高く設定できる。また、赤信号で停車中に追突されたような自分に過失がない事故でケガをした場合、賠償保険の契約保険会社は示談代行してくれないので大変ですが、人身傷害を掛けておけば契約保険会社が保険金を払った後、相手方の保険会社と交渉してくれるので、安心です。
――車両保険の掛け方では?
山野井 万全の補償なら一般車両保険を、保険料節約重視なら「車対車+危険限定A」のエコノミー車両保険を選択すると、車両保険料が5割近く安くなりますよ。

モレ・ダブリなく
保険料を
安く掛け方は?

――保険料を節約するコツを教えてください。
山野井 あくまでも補償を買うわけですから、安ければいいということではなく、合理的な掛け方で保険料を節約しましょう。まず、郵送されてきた更改申込書にそのまま判子を押して返送するといった安易な掛け方は、直ちに止めましょう。代理店販売であれ、直販であれ、必ず複数の保険会社から見積もりを取って、比較してください。保険はどこも同じという時代は終わったのです。そして、納得がいくまで説明を求めましょう。
 先ほどお話したとおり、保険料の節約効果が最も大きいのは車両保険です。運転に自信のある優良ドライバーなら、「車対車+車両危険限定A」というエコノミー車両保険を選択すると、車両保険料が大幅に安くなります。電柱にぶつけた場合などの自損(単独)事故を除く、火災、盗難、自然災害、他車との接触・衝突などの損害が補償されます。免責金額(自己負担額)を可能な範囲で高く設定するのも保険料節約効果があります。小さい損害は貯金でまかない、大きい損害のために保険の補償を買うというのが基本です。
――他に、掛け方で注意すべきポイントは?
山野井 自動車保険であれ、他の保険であれ、自分のケガの保険はダブッて保険金が払われます。したがって、例えば人身傷害や搭乗者傷害の保険金額を設定するとき、他の生命保険の傷害・災害割増特約や災害入院特約、損害保険の傷害保険などの保険金額がいくらになっているのか、トータルに計算して必要補償額を試算すべきです。代理店にはそうした総合保険管理を望みたいし、また直販保険会社のコンサルティング面の課題でもありますね。

<読売新聞・東日本版02年11月27日付「直販自動車保険広告」の内容に一部加筆>


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