◆生保と損保間での販売提携で総合保険グループに
96年4月に保険事業の根拠法(保険業法)が全面改正され、同年10月から生命保険分野(第一分野)と損害保険分野(第二分野)の子会社方式によるの相互参入がスタートしました(傷害保険、医療保険、介護保険の第三分野は本体相互参入)。生命保険会社の損害保険子会社6社、損害保険会社の生命保険子会社11社が設立され、損害保険代理店登録をした生命保険会社の営業職員、並びに生命保険募集人登録をした損害保険会社の代理店がそれぞれ親子会社の保険商品を併売(クロスマーケティング)するようになりました。
さらに2000年8月に親子会社間のクロスマーケティングに関する規制(業務の代理・事務の代行に関するルール)が他の保険会社間にも拡大適用されたことから、業態の垣根を越えて既存の生命保険会社と損害保険会社との間で、相互に保険募集の代理や登録事務・販売研修業務の代行などができるようになり、現在、生命保険会社と損害保険会社間の提携、グループ化が進んでいます。中には、今後、保険持株会社を設立して生命保険会社と損害保険会社が経営統合するところもあります。
◆進む生損保サービスミックス
このように生命保険会社と損害保険会社が保険グループを形成して、お互いの保険商品・販売網・サービスを共有、融合化(サービスミックス)し、消費者のワンストップショッピングによる利便性と、総合口座型のポイントプログラムサービスによる保険料割引やキャッシュバックなどの有利性を高める取り組みが進行していますが、一方でこれは保険会社の生損保総合サービスによる顧客囲い込み競争が進みつつあることを意味します。2001年度に入って、大手保険グループでは相次ぎ販売提携(業務事務の代理代行)による生損保併売を開始しており、商品面でも生命保険の積立利率変動型終身保険(ユニバーサル型商品)や損害保険の積立保険をベースにした生損保総合サービスの受け皿商品(プラットホーム)として開発する動きが始まっています。すでに一部の生保会社では、プラットホーム商品の積立金で生命保険や損害保険の取引のほか、投資信託や銀行預金とも取引(資金移動)できる総合口座型商品を開発しており、今後、金利水準が上昇すれば各保険グループで生損保総合サービスのプラットホーム商品の開発が進むことが予想されます。
◆生損保総合サービスの注意点
保険会社にとってはグループを形成して商品・販売網・サービス・システムを共有化することで、コストを下げながら効果的に顧客囲い込みができるメリットがありますが、肝心の消費者にとってどのようなメリット・デメリットがあるのか、きちんとチェックする必要があります。ワンストップショッピングができれば確かに便利ですが、生損保商品の併売を行う営業職員や代理店の保険知識とコンサルティング能力が十分具備されているかどうかという問題があります。生命保険だけ、あるいは損害保険だけの販売でも苦情やトラブルが多い現状に照らして、保険会社の研修体制の強化が早急に望まれます。また、一つの保険グループに保険契約を集積するとなると、各商品の信用リスク・市場リスクの説明が適切に行われるかどうか、グループの保険会社の健全性が確保されているかどうかのチェックも大切です。(国民生活センター発行「くらしの豆知識2002年度版」執筆原稿に加筆)
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