金融庁・総務省などの保険関連情報



●保険販売検討チーム17・18回会合内容を公表(06年2月22日)
 1月12日・26日開催「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」の第17回・18回会合における討議内容を公表。事務局による、これまでの議論を踏まえて作成した「中間論点整理のたたき台」に挙げられた、@販売・勧誘時における適合性原則のあり方、A保険商品の販売に際しての募集人等と消費者との認識の格差、B格差を埋めるための方策について、C中期的な課題――の論点の説明を受け、自由討議を行った。
<「中間論点整理のたたき台」についての第17回討議内容>
▼顧客が、その購入しようとする保険商品が自らのニーズに合致しているかどうかを、契約締結に至る前に確認する機会を確保することが必要ではないか。このような機会を確保するために、募集人が保険商品が顧客のニーズに合致することを確認する書面を顧客に交付し、かつ募集人においてこれを保存することとしてはどうか。
▼このような書面を顧客に交付することとすれば、募集人においても書面を作成する過程において、その保険商品を本当に推奨してよいものかどうかを再度確認することとなり、募集人に対してより慎重な配慮を促すという効果もあるのではないか。このことから考えると、このような書面を募集人が作成することが重要であるといえ、アンケートや設問に対して顧客から一方的に回答をもらうという方法では十分な効果が得られないといえるのではないか。
▼このような書面を保存することとすれば、購入の経緯を顧客、募集人双方が事後的に確認することができ、事後に生じうる問題の予防や解決に役立つのではないか。
▼最終的な契約内容を顧客が理解していれば、顧客の側で当該保険商品が、自分のニーズに合致したものかどうかを判断できるのではないか。このような書面を作成しなくても最終的な契約内容を顧客に丁寧に確認していけば足りるのではないか。
▼最終的な契約内容を細かく顧客に説明したとしても、顧客としてはその保険商品が全体としてどうしてそのような内容になったのかということを理解することが難しいのではないか。やはり、顧客のどのようなニーズを重視し反映することによって、最終的に推奨する保険商品のような内容になったということを、顧客に対し、説明したり確認したりする必要があるのではないか。
▼保険期間が短期の保険商品については、保険期間が終了したときに保障内容の見直し等、ニーズに合致しているかどうかを確認し保障内容の見直しをする機会が設けられている。従って、このような仕組みを適用することが適当な範囲については、保険期間の長短により区別するという考え方が適当といえるのではないか。
▼これについては、保険期間の長短のみではなく、顧客が保険商品の内容を理解することが困難かどうかという商品内容の複雑性や、保険料や保険金額の多寡についても考慮のうえ、検討すべきではないか。
▼消費者は募集人に対し、保険の専門家としての信頼を置いており、そのような信頼を前提として購入するかどうかの判断をしているのであって、募集人は顧客に商品内容等を説明するに際して顧客が誤解することがないよう努めることが求められるのではないか。
▼保険商品の販売・勧誘は、専属的に一社の商品を取り扱う募集人や、複数社の商品を取り扱う募集人、保険仲立人のようなブローカーというように、様々な立場の者により行われている。このような立場や地位を一定の範囲で開示することとすれば、それは顧客が保険商品を購入するに際して補助的ではあるが有益な情報といえるのではないか。このような募集人の立場や地位の開示についても検討する必要があるのではないか。
<「中間論点整理のたたき台」についての第18回討議内容>
▼募集人が、保険商品が顧客のニーズに合致することを確認する書面を顧客に交付することとした場合、このような確認書面を作成するに際して顧客から提供を受けるべきニーズに関する情報をどのような詳細なレベルについてまで求めるべきかについて、検討すべきではないか。
▼ニーズに関する情報を、主契約や特約ごとの具体的な保険金額や保険料等のような詳細なニーズについてまで記載することとしてしまうと、確認書面に記載すべき量が大幅に増大してしまうのではないか。むしろこのような詳細なニーズの確認は、顧客に最終的な契約内容の確認を求めることにより、顧客の側でそのニーズに合致しているのかどうかを確認することの方が、効率的といえるのではないか。従って、ニーズに関する情報については、一般的には、死亡保障や、医療・傷害保障等のどのような分野の保障を必要としているかに関するニーズを記載する程度まででよいのではないか。
▼交渉の過程の中で、特に顧客が強くこだわったニーズがあった場合や、顧客のニーズが個別性の強いものであった場合のように、交渉の過程において重要なポイントがある場合には、そのニーズのレベルに関わらず確認書面に記載しておくことが有効ではないか。
▼どのようなものが重要なポイントであるかの判断について明確な基準を設けることは難しく、そのような記載を募集人に徹底させることは困難な面があるのではないか。その実効性を確保するためには、例えば、確認すべき項目を限定列挙し、その中から該当する場合を選択するといった方法も考えられるのではないか。
▼確認書面について、確認すべき項目を限定列挙する等により一定の定型化をなすこととしても、例えば備考欄を設ける等により、交渉の過程における重要なポイントを記載できるようにしておくべきではないか。そのような備考欄に記載すべきか一律に規定することは実務的に難しい面があるにしても、重要なポイントがある場合には、それを記載することがより望ましいということを募集人に周知徹底していくことが必要ではないか。
▼ニーズに関する情報の提供については、告知義務のように顧客に法律上の回答義務が生じるものではなく、また募集人には告知受領権が存在しないことから、ニーズに関する情報の提供と告知義務との関係をどのように考えるか検討すべきではないか。
▼このような確認書面の書式を各保険会社が独自に作成した場合、例えば乗合代理店で複数の保険会社の商品を検討した後に最終的に一つの保険会社の商品を顧客に推奨することとなった場合には、最終的に決定された保険商品についての書式を利用することになると思われる。ところが、その書式の内容如何によっては他の保険会社の商品を検討したという経緯を確認書面に反映させることが難しくなってしまうおそれもあるのではないか。各保険会社において書式を作成する際には、そのような利用に耐えられるように書式について一定の統一化を図ることや、乗合代理店用の書式は代理店が独自に作成するというようなことも検討し、実務において利用しやすいものとしていくべきではないか。
▼このような確認書面の交付までも要しないとされる場合であっても、顧客ニーズを慎重に確認しなければならない重大な事項(例えば自動車保険における若年運転者不担保特約についてのニーズ)を申込書等の中で確認する等、顧客が自らのニーズに合致した保険商品を適切に購入できるような仕組みが求められるのではないか。
▼あくまで、募集人等は適合性原則を遵守すべきなのであって、顧客の自己責任原則や、募集人等と顧客の共同作業が過度に強調されることには問題があるのではないか。また、適合性原則に関連して、保険仲立人に関するいわゆるベストアドバイス義務を、他の募集人等にも及ぼすことが適当かどうか検討していくことも今後の課題としては重要ではないか。


●第122回自賠責審議会の議事内容公表(06年2月17日)
 金融庁は、さる1月13日開催の「第122回自動車損害賠償責任保険審議会」の議事要旨を発表。今回は平成17年度料率検証結果について事務局説明が行われ、基準料率を据え置くことになった。また、@保険料等充当交付金の再計算、A特別会計の改革、B自賠責保険診療報酬基準案、C平成18年度自動車損害賠償保障事業特別会計の運用益の使途、D平成18年度保険会社の運用益の使途、EJA共済における自賠責共済事業、F自賠責保険料のクレジットカード払いを可能とすることについて、G改正自賠法等の附帯決議にかかる対応について――の報告事項に基づき、要旨下記の審議が行われた。

<第122回自動車損害賠償責任保険審議会・審議要旨>
1、平成17年度料率検証結果について
 損害保険料率算出機構より報告のあった料率検証結果について、17年度の損害率は103.9%、18年度の予定損害率は104.1%で、17年4月の料率改定時における予定損害率106.9%との乖離幅は△2.8%、△2.6%となっている旨説明。また、保険料等充当交付金は17年度以降段階的に削減されることから、契約者負担額は20年度に向けて段階的に上昇していくことは前回の審議会で説明したとおりであり、後に国土交通省からの説明のとおり、18年度の交付金は17年度の半分程度となっている。
 委員からの意見は、@14年4月の自賠法改正時に、施行令別表第1「介護を要する後遺障害」が設けられたが、当該者は非常に重度の後遺障害者で無視できない存在であり、社会の負担にもなっている。別表第1該当者の数を掲載すべきではないかA自賠責取扱事業者間によって新しい契約者負担額の取扱開始時期が異なると新旧契約者負担額が混在することとなり、契約者に混乱を来たす恐れがあるため、システム等の準備を短期間で行い、新しい契約者負担額は自賠責取扱事業者間で連携を図ったうえ、1月24日を目途に取り扱いを開始する――など。
 審議の結果、交付金の減少により契約者負担額が上昇することとなるが、料率検証結果において予定損害率との乖離幅が△2.8%、△2.6%に留まっていること、また、自賠責保険料は中期的に安定を求められていること、過去の改定経緯よりも予定損害率との乖離幅が少ないことから、基準料率について据え置くこととなった。
2、報告事項
(1)保険料等充当交付金の再計算について
 国土交通省より、交付金の創設経緯や交付金の交付方法の考え方、平成18年度の交付金の水準について説明。@規制緩和策の一環として13年度末に政府再保険制度を廃止。再保険廃止時の累積運用益約1兆9,400億円について、その20分の11、約1兆700億円をユーザー還元して保険料負担の軽減を図るために交付金制度を創設し、19年度末までの6年間の保険契約について予算の範囲内で交付することとされた。A交付金の交付方法の考え方としては、当初3年間は厚めに交付し、従来のユーザー負担額維持に必要な交付金を交付することにより、急激な保険料負担額の増加を防止するとしていた。17年度末までに約7,300億円を交付金としてユーザーへ還元予定で、従前の赤字料率分に約1,300億円、また、14年度以降の再保険金支払総額は予想より増加していることに伴う費用が約1,300億円必要であるため、今後2年間で交付可能な総額は約800億円と見込まれる。B18年度の交付金の水準は、昨年方針として後半の3年間も前半に厚めに交付することで、交付金廃止後のユーザーの負担感を出来る限り小さいものにするとされたところであり、18年度は総額約400億円を交付することとしたい。Cなお、交付金交付最終年度である19年度は今後の再保険金及び交付金の支出状況に基づいて再度計算をして確定することとしたい。
 委員からの意見と回答は、@13年度末再保険制度廃止時点での累積運用益1兆700億円について、毎年更なる運用益は発生していないのか→これまで政府再保険の再保険料は財政融資資金へ預託して長期運用していたが、政府再保険の廃止に伴う交付金の交付時に途中解約しなければならない関係で満期期限前解約に伴う払戻しが発生するため、解約時までに発生した利息から差し引くと、実収入受取額は、16年度はゼロ、17年度でも僅か何十万円しか発生していない(国土交通省)。A今後2年間の交付金交付可能総額は約800億円で、18年度の交付は約400億円ということであれば、19年度の交付可能額は約400億円となるのに、図を見ると19年度は18年度の半減となっている。19年度が交付金最終年度となるので、交付金勘定残高が極力ゼロになるよう、再保険金の支払見込み等を厳密に精査し、本来のユーザー還元という趣旨での使い方を追求して頂きたい――など。
(2)特別会計の改革について
 国土交通省より、昨年12月24日に閣議決定された「行政改革の重要方針」に基づき、特別会計改革の方向性、個別の特別会計の見直しについて、並びに自動車損害賠償保障事業特別会計の17年度予算等について説明。自賠特会と自動車検査登録特別会計は20年度に統合して無駄の排除を行うものとされ、その後業務の性質に応じ、一般会計への統合や独立行政法人化を検討するとされる方針が決まっている。
 委員からは、@特別会計の改革を行う政府方針については、大変好ましい方向。A自賠特会の原資はドライバーのもの。過去に一般会計へ繰り入れた分を運用収入相当額も含めて返済することが国会で議論されたが、実際にどのように返済がされたかについて、きちんと開示すべき。B閣議決定では、自賠特会と車検特会とあまり親和性が無いものを統合することとなっているが、今後の議論の過程の際、自賠責事業の重要性についてきちんとした形で主張して頂きたい――旨の意見。
(3)自賠責保険診療報酬基準案について
 日本損害保険協会より、自賠責保険診療報酬基準案の実施状況について、現在45都道府県で実施されており、残る2県(山梨・岡山)に対し、早期実施に向けて引き続き協議を行っていく旨の説明。
 委員からは、自賠責保険は医療機関が得するためのものではなく、被害者救済のための保険であるのに、一般の診療報酬が1点10円に対し、2倍・3倍も取っている医療機関があり、どうして理解してもらえないのか疑問、との意見。
(4)成18年度自動車損害賠償保障事業特別会計の運用益の使途について
 国土交通省より、平成18年度自賠特会の運用益の使途について説明。@独立行政法人自動車事故対策機構に対する助成については、介護料の支給、短期入院費の助成、療護センターの整備・運営、資金の貸し付け、運行管理者の指導講習等の事業へ補助を行っている。A自動車事故対策費補助金としては、被害者保護増進対策と自動車事故発生防止対策があり、被害者保護増進対策としては、日弁連交通事故相談センター、救急医療設備等に関連する医療機関への補助、短期入院体制の整備に対する補助、交通遺児育成基金に対する補助、自賠責保険・共済紛争処理機構への補助、日本交通福祉協会等への補助を行っている。B自動車事故発生防止対策として、バス等の公共交通機関の利用促進、自動車安全運転センター、交通事故総合分析センター、タクシーセンター、全日本交通安全協会、日本道路交通情報センター等に補助を行っている。Cなお、14年の自賠法改正時の附帯決議において、運用益活用事業については、その内容の適正化と効率化を図るために自動車事故対策計画策定の際に自賠責審議会等の場で十分議論するとともに、その結果についても意見を求めるとされていたことから、これまでも審議会等の場に報告等していたが、これまでの資料の出し方に対する委員からの批判を踏まえ、保険会社の実績報告にあわせる形で詳細に記載した。
 委員からの意見と回答は、@国土交通省においては、諸団体に対する運用益の支出が効率的に使われているかなどのチェックをお願いしたい。A交付金制度や運用益拠出事業の使われ方について、ユーザーは認知していないことから、周知に努めていただきたい。B運用益拠出事業について、自賠責保険とは直接関係ないと思われる地方都市のバス利用促進対策、タクシーの行列解消、交通公園の赤字補填に拠出したとの新聞報道があったが、18年度予算案でどうなったのか→18年度予算案を決定する際には、新聞報道等で指摘があったことを踏まえ、財政当局と議論し、効率化しているところ(国土交通省)。C自賠特会廃止に伴って一般会計へ統合された場合、当該運用益拠出事業について、一般会計で決定されるのか→政府方針として20年度に自賠特会と車検特会が統合することとされており、直ちに一般会計となるわけではないので、今後も引き続き拠出事業を行っていく(国土交通省)――など。
(5)平成18年度保険会社の運用益の使途について
 日本損害保険協会より、平成18年度の保険会社の運用益拠出事業案について、これまでの自賠責審議会答申や審議会における意見、自賠法改正時の附帯決議を踏まえ、自動車事故被害者対策を中心に充実することを基本方針として既存事業の見直しや新規事業の選定を行った旨説明。
 委員の主な意見と事務局回答は、@支出先団体の有効性及び支出予算の使われ方について、自動車交通事故被害者のためきちんと使用されているのかどうか、十分な確認・チェックを行っているのか→支出先団体の活動状況ついては、毎事業年度終了後、事業報告書、決算書類等などにより把握している。A運用益拠出事業ついては、毎年同程度の額を前提に支出しているのか→一応の目安は持っている。これまで基本的にあまり増減はなく、今回はじめて減少した訳であるが、拠出額の維持を目的に何かをするというのではなく、真に事業の有効性を判断のうえ拠出事業を決定しており、ある程度自然体でいくと今後も横ばいで推移する見込み――など。
(6)JA共済における自賠責共済事業について
 まず、事務局より、JA共済における自賠責共済事業について今回報告に至る経緯を説明し、次に、全国共済農業協同組合連合会からJA共済について、自賠責共済制度の経緯、運用益積立金及び累積収支残について説明。@昭和41年8月の自賠法改正により、組合員の保有する軽・原付及び農協法人が保有している保有契約車両について自賠責共済の実施が認められた。この際には、共同プールへの参入が認められなかったため、JA共済は保険会社とは別の形で自賠責共済事業を実施することとなった。また、協同組合の共済制度として実施されたことから、当初から割戻制度が導入された。A昭和44年11月の自賠法改正により、JA共済における車種制限が撤廃され、対象が全車種に拡大。B8年12月の自賠法改正により、全ての自賠責事業主体に、共同プール事務に参加することが義務付けされ、経過措置として10年間の適用猶予を経て、18年12月1日契約より共同プール事務に参入することとされた。C運用益積立金は16年度末449億900万円。その使途は行政庁通知等により、保険会社と同様に、自動車事故防止対策、緊急医療体制の整備等被害者救済等に限定している。また、毎年度の運用益の活用にあたっては、外部の学識経験者、契約者代表、被害者遺族代表による自賠責共済の運用益使途選定委員会の審議を経て決定しているところ。D16年度末までの累積収支残高は708億9,600万円。収支残の使途についても、法令諸規則、行政庁通知等により13項目に使用制限されている。非常に大きな額となっているが、今後も使途選定委員会の検証を含めながら、13項目に基づき活用することとしている。
 委員の主な意見と事務局回答は、@積立金残高はかなり高額になっているが、10年間経過後の18年12月以降の積立金の行方はどうなるのか→法改正では18年12月1日以降の契約分から共同プールに入ることになっているので、それ以前にかかる契約と別々に収支勘定していくことが義務付けられている。したがって、18年12月以前契約にかかる収支残高についてはプールされずに、JA共済において管理を適正に行っていく。Aリハビリテーションセンターなどの施設について、18年12月以降はJA共済以外の自賠責保険による自動車事故被害者も利用対象になるのか→公共施設であり、これまでも農家組合契約者に限定していない。また、幅広く社会復帰してもらう観点から、社会に貢献していきたい。B長い伝統をもつJA共済も自賠法の対象となるので、当審議会委員も関心をもっており、累積収支残及び累積運用益等の活用に際しては、審議会委員の考えを参考にして頂きたい――など。
(7)自賠責保険料のクレジットカード払いを可能とすることについて
 事務局より、自賠責保険料のクレジットカード払いを可能とすることについて、契約者の利便性を高めるために、契約者保護の観点や契約締結時点で保険料を確実に収受する仕組みの構築及び現状の事務処理に大きな影響が無いこと等を検討し、保険料支払に関しては、昨年のインターネット通販契約と同様に、契約時にオーソリゼーションを行い、確実に保険料が収受できる仕組みとした旨説明。
 委員からは、自賠責保険に関する苦情の中で二重加入というものが意外にもあるので、こうしたこと防止することを何とか担保できる手法について配慮して頂きたい、旨の意見。
(8)改正自賠法等の附帯決議にかかる対応について
 国土交通省より、14年4月の自賠法改正時に衆・参両議院の附帯決議において、自動車事故の被害者の救済及び自動車事故の防止に関し、法施行後5年以内に社会経済の状況の推移等を勘案し、賦課金制度の導入の可能性を含めて検討を加えることとされていることから、被害者対策及び自動車事故防止対策について懇談会で集中的に議論を行い、本年6月末までに見直しをしていきたい旨説明。 
 委員の主な意見は、@最近、懇談会ばやりで審議会のほかに懇談会が増えているが、非公開で透明性が確保できていないことが問題になっている。非常に重要な事項であるので、是非公開にして頂きたい。A自賠特会の事故対策勘定について、賦課金制度による運用も含め、議論に際しては幅広い検討をお願いしたい――など。


●保険販売検討チーム16回会合討議内容を公表(06年2月16日)
 昨年12月8日開催の「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」の第16回会合における議事内容を公表。議題は「保険契約における適合性原則の遵守について」で、これまでの議論を踏まえて作成した「自由討議のたたき台A」に沿って、@保険契約における適合性原則とはなにか、A適合性原則の実効性を担保する方法、Bベストアドバイス義務について、C募集人等の質の向上――の論点に基づき自由討議が行われた。
<「自由討議のたたき台A」についての討議内容>
▼保険商品の内容が複雑であることなどから、重要事項の説明など一定の情報提供を受けただけでは、その内容を十分に理解することができない消費者も存在するのではないか。
▼情報提供として、例えば「契約概要」や約款等の書面を顧客に交付することにより、顧客はどの程度まで保険商品の内容を理解できるのかということを、まず検討すべきではないか。
▼諸外国と比較しても、日本の保険会社の約款は非常に分量が多く、情報提供をするだけでは顧客が商品内容を理解することが困難な場合が想定され、募集人が行う情報提供を超えた助言に対する顧客の期待を保護する必要があるのではないか。
▼保険商品の販売勧誘時の助言については、募集人はあくまでサービスとして行っていると認識していたのではないか。これについては、あくまでサービスと考え、募集人の自由な競争の中で適正なものとしていけばよいのではないか。
▼募集人が顧客に保険商品を勧める場合、最初の段階で顧客に不適切なものを勧めてしまうと最終的に顧客がニーズに合わない保険商品を契約してしまう危険性が高くなってしまうので、単なるサービスではなく顧客に適切な保険商品を推奨すべきであるという理念を求めるべきではないか。
▼実際には、ほとんどの問題事例が説明義務を徹底することで解決できるのではないか。
▼ある商品を購入する意思決定を行うことは、逆から言えば他の商品を買わない意思決定を行うことではないか。このことからすると、自分が購入する保険商品が本当に自分に合った保険商品なのかどうかということは、その商品内容のみではなく他にどのような商品や特約があるのか等を全部勉強しないと判断出来ないといえ、これが顧客の不安感なり、不満感を生んでいるのではないか。この不安感や不満感を解消するためには、募集人には、単に自分の売るものを説明するということを超えて、顧客がそのようなこと全てを理解するのが難しいことを前提とし、何をどこまで理解してもらう必要があるのかを、ある程度顧客のことを考えて整理するというような極め細やかな配慮が求められるのではないか。
▼他の商品や特約を選択できる可能性についてまでは、説明義務の対象とはならないのではないか。しかし、そのような情報があれば、顧客が自らのニーズに合致した商品を選択することの手助けとなるものと考える。
▼適合性原則は、要件と効果がはっきりしないという特徴があり、「よほど不適当でなければよい」といったレベルのものでないと、一定の要件のもとで一定の効果が発生するといった運用は難しいのではないか。
▼保険商品の販売・勧誘時において、募集人、顧客がそれぞれどのようなことをすれば、お互いにとって有益なのか、例えば、顧客からすれば如何にして自らのニーズに合致した保険商品を適切に選択・購入することができるのか、また、募集人からすれば将来発生するかも知れない顧客とのトラブルをどのようにして一定程度防止できるのか、という視点から検討すべきではないか。
▼保険商品を販売する際には、募集人が顧客の属性やニーズを踏まえながら設計書を作成することにより、それぞれの顧客に合った保険商品の設計や提案がなされている場合があるが、募集人としても顧客に合った商品、適合した商品ということを意識しながら日常の業務を行っているのではないか。
▼例えば、顧客と保険会社との間にトラブルが生じた際に、募集時の設計書等に記載された募集人や顧客のメモ等がトラブル解決の参考となる場合がある。このようなことから考えると、顧客が保険商品を選択した動機が明らかにされた書類が適切に作成されていると、トラブルの解決に役立ち、顧客、保険会社双方にとって有益なのではないか。
▼顧客が保険商品の内容を理解していないことや、保険商品の内容について誤解していることが募集人に明らかとなった場合には、募集人は個々の顧客の理解に応じたより分かりやすい説明を行うことや、誤解を解消するよう努めることが求められるのではないか。
▼例えば、一般的な説明に加え、募集人が顧客がしっかりと理解した上で加入しているかどうかを確認する手続きが考えられるのではないか。募集人は保険商品が顧客のニーズに合致しているか否かは判断できないので、顧客自身でニーズに合致しているかどうかを判断するプロセスを検討することが実効的ではないか。
▼仮に、募集人が自分が売りたい保険商品を販売しているだけであるとすれば、顧客に対して、一番いい保険商品を売っているなどといったことを表示することは問題ではないか。


●「付加率自由化」法案で意見集約(06年2月13日)
 金融庁は、「保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令」案、「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正案について、昨年11月24日に公表し、12月26日にかけて意見を募集した。その結果、個人16・団体33のコメントを受けた。パブリックコメントを踏まえ、「保険会社向けの総合的な監督指針」を改訂した。なお、2月13日付官報で、原案に沿った形で「保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令」(平成18年内閣府令第3号)が公布された。施行時期は4月1日。

<「保険会社向けの総合的な監督指針案」に対する意見と金融庁の考え方>

〈価格の弾力化について〉
Q(意見):「算出方法書の記載事項より、予定事業費率に関する事項を削除し、予定事業費に係る具体的詳細な記述を求めないものとする。」(改正案の概要本文)について以下の点を確認したい。
施行規則第10 条第8 号(付加保険料)が削除された趣旨は、同第1 号で営業保険料の構成を記載した上、同第7 号において純保険料およびそれに対する割増引率や係数について「具体的詳細な記述」を要するが、付加保険料については、「係数によらず定性的な表現で記載する」(指針W-5-1(6)柱書)ことを可とすることで「商品審査」を簡素化するものと解してよいか。また、商品内容を変更することなく予定事業費のみを変更する場合は、金融庁の認可を得ることなく予定事業費を変更することは可能と解してよいか。
A(金融庁回答):貴見のとおり。なお、保険業法により、保険料における不当な差別的取扱いの禁止(保険業法第5 条)、保険契約の締結・募集時における、保険料の割引、割戻しその他特別の利益の提供の禁止(保険業法第300 条第1 項第5 号)が定められているが、これらについては従来通り適用される。

Q:モニタリングについては事後的であり、仮に保険料が不十分な設定だった場合には、手遅れとなる可能性がある。過去においては、配当競争による保険会社の体力低下(キャピタルゲインの通常配当財源化)、金利の低下による逆ザヤ問題等により、破綻会社が発生するなどがあり、事後的には、解決困難な問題も発生し得るため、今般の価格の弾力化については、事前の防止策として短期保険契約(1年満期・自動更新のない商品)から順次弾力化を行う必要があると考える。今後、契約者保護に配慮し、慎重な対応が必要と考える。
A:保険期間が長期の保険商品であっても、適切に責任準備金の額を確保することにより契約者保護が図られる。また、事業費支出の相当部分が契約締結時に発生することに鑑みれば、付加保険料と事業費支出のバランスを確保することが、長期契約であることにより特に困難になるとは考えられない。したがって、全商品を弾力化の対象とするものである。

Q:改正案施行規則第12 条第1 項第3 号ニ(自動車保険の範囲料率の運用)に関しては、営業保険料に対して割増引を12.5%以内とするという理解でよいか。
A:貴見のとおり。

Q:すでに現在においても、標準責任準備金制度導入以後、原則として保険料率は各社マターとし、支払能力の担保部分を審査する主旨であると理解している。しかしながら、実態は、プライシングもしっかりと審査されているというのが実感であり、原則と実態がすでに乖離しているのが現状と理解している。今回の改正はこの原則と実態の乖離を正すものと理解してよいか。
A:個人保険料率については、保険業法第5 条第1 項第4 号に審査基準である保険数理に基づき合理的かつ妥当であり、特定の者に対して不当に差別的でないとの要件を満たした上で、各社が設定するものとされており、このことは、従来も今後も変わるものではない。

Q:@算出方法書の付加保険料部分について定性的記載を行なう旨の申請は、施行日となる平成18 年4 月1 日以降の申請から改正案が適用されるという理解でよいか。また、全社または全商品について一斉に定性的記載に移行する必要があるのか。
A:@算出方法書の定性的記載への移行については、平成18 年4月1日に全社一斉に行うものではないが、各社の判断により、例えば商品改定等の機会に、速やかに本改正を反映した認可申請・届出がなされるものと考えている。

Q:A定性的記載への一斉移行が強制されないのであれば、次回の新たな商品認可申請・届出の際に定性的記載に切り替えることは許容されると考えてよいか。
B今後の新たな商品認可申請・届出の際には必ず定性的な記載に移行しなければならないと考えてよいか。
A:A貴見のとおり。B原則として貴見のとおり。

Q:純保険料と付加保険料の双方に渡る保険料の割増引き率・係数について、純保険料に係る部分と付加保険料に係る部分とを明確に区分した上、純保険料に係る部分については算方書に実数(率または係数)を記載し、付加保険料に係る部分については「定性的な記載」に移行できることとなる。この判別・区分はどのように行うのか。また、付加保険料の割増引きについては算出方法書には記載不要となるのか。
A:現行の純保険料と付加保険料の双方にかかる保険料の割増引きについては、純保険料や付加保険料に対するものにその性格や位置付け等から区分し、付加保険料にかかる割増引きの係数等は算出方法書から社内規定に移記することとなる。

Q:損保における責任準備金は、現行通り営業保険料を基準として計算することでよいか。
A:貴見のとおり。

A:具体的な算出方法書の改定に関して、以下の点を確認したい。
@定性的な記載とは具体的にどういう記載方法なのか。
A社内規定は商品審査や検査の対象となるのか。
B責任準備金計算基礎の予定事業費率は、審査対象となるか。
C算出方法書の表記に関する変更認可申請には、例えば予定損害率が70%である商品については、現行の営業保険料の70%を危険保険料として表記することで足り、監督指針に記載のとおり、付保険料として表記することで足り、監督指針に記載のとおり、付加保険料に関しては定性的記載とするということでよいか。
D現在営業保険料(純保険料+付加保険料)にて認可されている商品については、純保険料での認可の再取得が必要になるのか。
A:@付加保険料に関する定量的記述を削除し、付加保険料について、具体的な表記は会社によりある程度異なりうるが、「合理的かつ妥当であり、特定の者に対して不当な差別的取扱いとならないよう適切に定めた社内規定による」趣旨を記載するものである。
A社内規定については商品審査の対象とはしていないが、業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため必要があると認めるときは、他の社内規定と同様に検査対象となる。
B算出方法書において、責任準備金を定義する算式中に予定事業費を記載する場合には、記号を利用することが可能であり、その内容は審査の対象とならない。
C貴見のとおり。
D既存の認可商品については、純保険料での認可を再取得する必要はない。

Q:改正後も現行通り、予定事業費率の係数を記載して申請した場合、審査の有無・程度、モニタリング提出資料との関係等当局の対応方針を確認したい。
A:モニタリング資料の提出については、保険業法第128 条に基づき、全社・全種目について、定性的記載の有無に関わらず報告を求めることとなる。なお、新たな申請については、付加保険料率部分は原則として定性的記載によることとする。

Q:今般示された案には、いわゆる「過当競争」に陥らないため、保険会社の適正な業務運営に大きな影響を与え、また、市場の信頼を失うおそれがあるような付加保険料の設定については、しっかりとしたモニタリングを行うことによって、行政として早期かつ適正な措置を講じることが不可欠であると考える。また、消費者ニーズが多様化し大きく変化する中で、そのニーズに対応した商品を時機を逸さずに提供するためにも、今回の商品審査の簡素化が審査の「迅速化」に確実につながることが重要と考える。
一方で、事後チェック型行政を進めるにあたっては、守るべき基準が明確であることが前提になると考える。例えば、「付加保険料が不当に差別的でないこと」の解釈に疑義が生じたり、モニタリング項目や視点が不明瞭であったり、行政処分の発動基準が不明であったりすると、現在個人情報保護対応において生じている問題と同様に、各社の判断がバラつくことによって過度な体制整備を惹起し、結果として、消費者利益につながらない作業によって、組合員の物理的・精神的負担が増加するのではないかとの懸念がある。本件を進めるにあたっては、行政サイドの裁量を極力排除し、効率性に留意しつつ、可能な限り予見可能性を高めていくことが肝要であると考える。
A:貴重なご意見として承る。

Q:付加保険料の定性的な記載への移行に関して、付加保険料の認可申請上の留意点である、監督指針W-1-16(3)Aは削除されると考えて良いか。
A:貴見のとおり、監督指針の該当部分について削除する。

Q:団体契約・集団扱・団体扱における団体割引等を現行制度以上に拡大することは、消費者間の公平性の観点から問題がある。団体契約・集団扱・団体扱における団体割引等は今回の付加保険料の審査簡素化の対象外とすべきであると考える。
A:商品審査の簡素化を図った後であっても、不当に差別的なものとなっていないことを確保することは言うまでもないが、特定の商品について商品審査の簡素化の対象外とすることは適当とは考えていない。

Q:商品開発に係る内部管理体制について、監督指針(案)の中で示されている「事実上の特別利益の提供(保険業法第300 条第1項第5号)になっていないことに留意する。(監督指針Uー2−7−2)」については、判断基準が不明確なことから、具体的な事例を例示するか、簡易なノーアクションレター制度のような確認手段を用意する等の手当てが必要である。
A:今回の改正案は、保険業法第300 条第1項第5号の考え方を変えるものではないことに言及したものであって、その法解釈において変更を加えたものではない。

Q:保険業法第5 条および同第300 条の運用に関しては、当局の考え方については変更が無いか。併せて、かかる観点からは、代理店毎の手数料の高低のみを理由とする付加保険料の割増引やキャンペーンのみを理由とする割増引は従来通り認められないのか。
さらに、保険業法第123 条および施行規則第83 条等に規定されているいわゆる自由料率・標準料率等が導入されている事業者向け商品については、現行制度から引き続き個別契約毎等の割増引が認められるのか。
A:今回の改正案は、保険業法第5条、同第300 条第1項第5号の考え方を変更するものではない。よって、これまで法律上認められなかったことが新たに合法化されるものではなく、また、これまで認められていたことができなくなるというものでもない。

Q:付加保険料の自由化に加えて、危険保険料率部分におけるリスク要素別の料率反映(例えば自動車保険における地区別・既未婚別等に基づく細分化)についても一層かつ早急な自由化が望まれる。
A:貴重な意見として承る。

Q:将来的に、コンバインドレシオが100%以内であって、ソルベンシーマージン比率が十分な水準にあり、契約者間および保険種類間の公平性に重大な問題がなければ、モニタリングを省略して各社の判断で付加保険料を設定できるように簡素化する考え方はあるか。
A:保険料の合理性、妥当性、公平性を確保するためには、モニタリングは必要な手段であると考えている。

Q:今回の改定案に基づいて保険料及び責任準備金の算出方法書を改定し、付加保険料はその具体的水準を社内規定で定める場合、この社内規定は御庁の審査の対象外となるのか。また、その後、実際の事業費率等の状況から当該社内規定を変更することは、会社の経営判断に基づき機動的にできると考えて良いか。
A:貴見のとおり。

〈事後モニタリングについて〉
Q:改正案の概要において、「平成18年4月1日以降開始する事業年度から適用する」とあるが、モニタリングの開始時期(実際にデータを取り始める時期)は4月1日からとなるのか。また、その場合4月1日からデータの抽出ができない会社は、データの抽出が可能となった時期以降のデータのみの提出で良いか。
A:モニタリングの開始時期は4月1日からである。また、データの抽出についても、原則4月1日からである。

Q:付加保険料のモニタリングについて、保険料の合理性・妥当性・公平性を確保するため極力詳細な分類で実施すべきである。
A:モニタリングの目的は、会社全体の健全性にとどまらず、付加保険料の合理性、妥当性、公平性の検証を行うものである。このため、例えば、保険商品毎にモニタリングを行うなど、監督の実効性を確保するために必要な細分化は行うが、各保険会社に過度な負担とならないように考えている。

Q:事後モニタリングについて、以下のように保険会社に過度な負担とならないように要望する。
@事業費を保険種類別・販売経路別等で細分化して把握すること
A細分化した区分を会社一律に課すこと
B付加保険料と純保険料とに区分して収益管理を行なうこと
A:モニタリングの目的は、会社全体の健全性にとどまらず、付加保険料の合理性、妥当性、公平性の検証を行うものである。このため、例えば、保険商品毎にモニタリングを行うなど、監督の実効性を確保するために必要な細分化は行うが、各保険会社に必要以上の負担とならないように考えている。

Q:監督指針の改正により、モニタリングを実施する旨の記載があり、これにより事後監督への移行をするとのことであるが、この際の当局の着眼点を確認したい。例えば、モニタリングの際にどのような着眼点で確認を行うのか。また、その結果としてどのような場合に行政上どのような対応をとるのか。
A:保険業法第5条、第300条第1項第5号で定められている事項が遵守されているかなどの観点からモニタリングを行うものである。また、モニタリング結果に基づく行政上の対応は、そのような結果となった理由や当該保険会社のその後の対応方針を踏まえて決定するものであり、特定の基準に該当したことをもって、機械的に何らかの行政処分を行うものではない。

Q:@「モニタリング資料の基礎となる資料」とは、具体的にはどのようなものか。付加保険料の設定にかかる配付基準の資料も含まれるのか。
Aモニタリング資料として、具体的な項目、手法、定期的報告時期など基準を作成する予定はあるのか。
A:保険料率が保険数理に基づき合理的かつ妥当であり、特定の者に対して不当に差別的でないことについて必要かつ十分なモニタリングとなるよう、今後、詳細の上、保険業法第128 条に基づく命令を発出する予定である。

Q:モニタリングをした結果、当初妥当と考えられていた付加保険料の水準がモニタリング時点では妥当でないと判断された場合、付加保険料の改定は、既契約についても対象とするのか。
A:既契約に遡及して付加保険料を改定することを求めるものではない。

Q:事業費に関するモニタリング資料について、単に事業費率や費差損益のみで判断するのではなく、会社全体の現在及び将来の損益状況や総合収益も斟酌して頂きたい。特に、会社が将来の事業費率の改善あるいは会社収益の増加につながると判断した場合には、当面事業費率を悪化するような予定事業費の設定(例えば、新しい販売チャネルやサービスの提供を行う際の戦略的な料率の設定など)でも各会社の経営の責任の下、これを容認して頂きたい。
A:モニタリングは、保険業法第5条、第300条第1項第5号で定められている事項が遵守されているかなどの観点から行うものである。また、モニタリング結果に基づく行政上の対応は、そのような結果となった理由や当該保険会社のその後の対応方針を踏まえて決定するものであり、特定の基準に該当したことをもって、機械的に何らかの行政処分を行うものではない。

Q:付加保険料の設定における「重要度を勘案」とは、何を指しているのか。具体事例があれば示されたい。
A:モニタリングの目的は、会社全体の健全性だけでなく、保険料の合理性、妥当性、公平性を検証することであり、その監督の実効性を確保するために必要な細分化は必要であるが、例えば保険料の設定方法に影響を与えていない保険種類にまで細分化したモニタリング資料を求めるものではない。
 

●無認可共済のミニ保険会社移行で政省令改正案公表(05年12月28日)
 金融庁では12月28日、無認可共済のミニ保険会社(少額短期保険業)への移行に関して、先の通常国会で成立し5月2日に公布された「保険業法等の一部を改正する法律」の施行に伴い、保険業法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(案)、保険業法施行令の一部を改正する政令(案)及び保険業法施行規則等の一部を改正する内閣府令(案)等の関係政省令等の改正案をとりまとめ、公表。

<保険業法施行令・施行規則等の改正案の概要> 
1.保険業法等の一部を改正する法律の施行日:平成18年4月1日とする。 
2.保険業の定義から除かれるもの:会社又は連結基準対象子会社等が従業員等を相手方として行うもの、専修学校又は一部の各種学校が生徒を相手方として行うもの、1000人以下の者を相手方とするもの等を規定。
3.少額短期保険業者が引き受けられる保険の保険期間及び保険金額の上限等
(1)保険期間及び保険金額の上限
(@)保険期間:損害保険2年、生命保険・医療保険1年
(A)保険金額:@疾病による重度障害・死亡300万円、A疾病・傷害による入院給付金等80万円、B傷害による重度障害・死亡600万円、C損害保険1000万円
※重度障害で給付を行った場合、死亡による給付は制限される等の調整規定あり。
(2)少額短期保険業者が一人の被保険者について複数の保険契約を引き受ける場合は、すべての保険契約に係る保険金額を合算して、総額が1000万円以下かつ上記(1)(A)に掲げる保険の区分に応じたすべての保険金額の合計額がそれぞれの区分に定める金額以下とする。ただし、上記(A)Cの保険のうち、特に保険事故の発生率が低いと見込まれる賠償保険(自動車の運行に係るものを除く。)を含むものがある場合には別枠で1000万円とする。
(3)少額短期保険業者は、一の保険契約者に係る被保険者の総数が100人を超える保険の引受けを行ってはならないものとする。
(4)経過措置により、施行日から7年間、既存事業者が超過部分を再保険に出すことによって引受けを行うことができる保険金額の上限は、(1)(A)に掲げる保険の区分に応じ、それぞれ定める金額の5倍((1)(A)Aの保険については3倍)とする。
4.少額短期保険業者の対象となる事業規模:年間収受保険料(再保険に付した際に再保険会社から収受する手数料を含み、再保険料を控除。)で50億円以下とする。
5.最低資本金、供託金等:最低資本金、業務開始時の供託金の額については、それぞれ1000万円とし、供託金は保険料収入の増加に応じて段階的に積み増す(正味収受保険料の100分の5)こととする。
6.関連業務の範囲:少額短期保険業者が内閣総理大臣の承認を受けて行うことができる関連業務は、他の少額短期保険業者又は保険会社のために行う保険募集、保険事故の調査、書類の作成等とする。
7.業務運営に関する措置:保険募集に際して、少額短期保険募集人が更新型の保険については保険料の見直し等を行う場合があること、セーフティネットの対象外であること、引き受けられる保険の保険金額に制限があること等を書面の交付その他適切な方法により説明を行うこと等の措置を、少額短期保険業者が講じなければならないこととする。
8.ディスクロージャーの内容:業務及び財産の状況に関する説明書類について、保険会社並みのディスクロージャーを求めることとする。また、資本金等の額が3億円以上の少額短期保険業者については、外部監査を義務付ける。
9.責任準備金の積立て:責任準備金については、契約者保護の観点から保険会社並みの積立てを求めることとし、少額短期保険業者が引受け可能な保険に対応して計算区分を規定。
 なお、保険契約を再保険に付した場合は、当該再保険に付した部分に相当する責任準備金を積み立てないことができることとするほか、既存事業者の積立負担に配慮する観点から、経過措置等により異常危険準備金の積立基準を緩和。
10.支払余力基準:保険会社と同様、保険金等の支払余力の充実の状況を示す比率が200%を下回った場合に、監督上必要な措置を命ずることができる仕組み(早期是正措置)を設ける。
11.その他:登録申請の手続、供託の手続、子会社の範囲等の制度の細目等を内閣府令・告示において定める。


●保険販売時情報・広告表示で監督指針改正(05年12月27日)
 金融庁は27日、7月の「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」による「中間論点整理〜保険商品の販売・勧誘時における情報提供のあり方について」を踏まえ、かねて問題の多かった販売時の説明や広告表示の適正化を図るため、「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正案を取りまとめ、公表。06年度から実施(9月末まで猶予期間を置く)。「契約概要」「注意喚起情報」など契約に関わる重要事項の説明の徹底、通販や窓販に関わる商品表示の適正化に踏み切る。
<「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正案の概要>
1.改正案の概要
(1)保険契約の販売・勧誘時に説明すべき重要事項の明確化等:保険分野においては、販売勧誘に関する苦情が依然として多いこと、保険商品の多様化・複雑化により消費者に商品内容が理解しづらいものとなっていること等の指摘がなされていることを受け、05年7月に「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」において公表した「中間論点整理〜保険商品の販売・勧誘時における情報提供のあり方について」を踏まえ、保険契約の販売・勧誘時に説明すべき重要事項を顧客が保険商品の内容を理解するために必要な情報(「契約概要」)、保険会社が顧客に対して注意喚起すべき情報(「注意喚起情報」)に分類し、それぞれ記載すべき事項の枠組み、及びそれらの記載方法、説明方法等について明確化を図る。
【一部例示】
〈生命保険契約の締結・募集〉(法300条第1項第1号関係)
@保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げる場合は、保険契約の種類・性質等の応じて適正に行われているか。
A重要な事項を告げるにあたっては、顧客が保険商品の内容を理解するために必要な情報(契約概要)と、顧客に対して注意喚起すべき情報(注意喚起情報)について、分類のうえ告げられているか。
イ.「契約概要」の項目:当該情報が契約概要であること、商品の仕組み、保障の内容(保険金支払事由、支払事由非該当・免責事由等について主なものを記載すること)、付加できる主な特約とその概要、保険期間、引受条件(保険金額等)、保険料・払込方法・期間に関する事項、配当金に関する事項、解約返戻金等の有無。変額保険・年金の追加記載事項=特別勘定の資産種類・評価方法、資産運用方針、諸費用に関する事項、特別勘定の資産運用実績により将来の保険金等の額が変動し不確実であること。外貨建保険の追加記載事項=保険金等の支払時における外国為替相場により円換算した保険金等の額が契約時における外国為替相場により円換算した保険金等の額を下回る場合があること、外国通貨により契約を締結することにより特別に生じる手数料等の説明。
ロ.「注意喚起情報」の項目:当該情報が注意喚起情報であること、クーリングオフ、告知義務等の内容、責任開始期、支払事由非該当・免責事由等の保険金を支払わない場合のうち主なもの、保険料の払込猶予期間・失効・復活等、解約と返戻金の有無、セーフティネット、特に法令等で注意喚起することとされている事項。変額保険・年金の追加記載事項=特別勘定の資産運用実績により将来の保険金等の額が変動し不確実であること。外貨建保険の追加記載事項=保険金等の支払時における外国為替相場により円換算した保険金等の額が契約時における外国為替相場により円換算した保険金等の額を下回る場合があること、外国通貨により契約を締結することにより特別に生じる手数料等の説明。
B顧客から重要な事項を了知した旨を十分に確認し、事後に確認状況を検証できる態勢にあるか。
〈顧客保護等〉(法100条の2)
@「契約概要」「注意喚起情報」を記載した書面で保険会社における苦情・相談の受付先を明示するとともに、保険会社との間で苦情の解決が図れない場合は、保険会社が属する協会の苦情・相談受付先等に対して申し立てができる旨明示されているか。
A記載すべき事項について、以下の点に留意した記載とされているか。
イ.文字の大きさや記載事項の配列等について、顧客にとって理解しやすい記載とされているか:例えば、文字の大きさを8ポイント以上とすること。文字の色や記載事項について重要度の高い事項から配列する。グラフや図表の活用等の工夫。
ロ.記載する文言の表示にあたっては、その平明性や明確性が確保されているか:例えば、専門用語について顧客が理解しやすい表示や説明とされているか。顧客が商品内容を誤解する恐れがないような明確な表示や説明とされているか。
ハ.顧客に対して具体的な数値等を示す必要がある事項(保険金額・保険期間・保険料等)については、その具体的な数値が記載されているか:具体的な数値等を記載することが困難な場合は、顧客に誤解を与えないよう配慮のうえ、例えば代表例、顧客の選択可能な範囲、他の書面の当該数値等を記載した箇所の参照等の記載を行うこと。
ニ.書面に記載する情報量については、顧客が理解しようとする意欲を失わないよう配慮すると共に、保険商品の特性や複雑性にあわせて定められているか:例えば、「契約概要」「注意喚起情報」をあわせてA3両面程度のものが考えられる。
ホ.他の書面とは分離・独立した書面とする。同一の書面とする場合は他の情報と明確に区別し、重要な情報であることが明確になるよう記載されているか。
B顧客に当該書面の交付に加えて、以下のような情報の提供・説明が口頭により行われているか。
イ.当該書面を読むことが重要であること。
ロ.主な免責事由等顧客にとって特に不利益な情報が記載された部分を読むことが重要であること。
ハ.特に乗り換え(法300条第1項第4号に規定する既契約を消滅させて新たな保険契約の申し込みをさせ、または新たな保険契約の申し込みさせてすでに成立している保険契約を消滅させること)、転換の場合は、これらが顧客に不利益になる可能性があること。
C当該書面の交付に当たって、契約締結に先立ち顧客が当該書面を理解するための十分な時間が確保されているか。
D電話・郵便・インターネット等のような非対面の方式による情報の提供・説明を行う場合は、上記@からCに規定する内容と同程度の情報の提供・説明が行われているか。例えば次のような方法により顧客に対して適切な情報の提供や説明が行われているか。
イ.郵便による場合:当該書面を顧客に送付するとともに、書面を読むことが重要であることを顧客が十分認識できるような書面を併せて送付する方法。
ロ.電話による場合:募集人が顧客に対して口頭にて説明すべき事項を定めて、当該書面の内容を適切に説明するとともに、書面を読むことが重要であることを口頭にて説明のうえ、郵便等の方法により遅滞なく当該書面を交付する方法。
ハ.インターネット等による場合:当該書面の記載内容、記載方法等に準じて電磁的方法による表示を行ったうえで、書面を読むことが重要であることを顧客が十分認識できるよう電磁的方法による説明を行う方法。
(2)適正な広告表示等:保険商品の広告表示等について、各保険会社における広告審査体制の一層の充実を促すため、内部規定の策定及び審査体制の整備に関する留意点の記載等を拡充する。
〈適切な表示の確保〉

イ.保険商品の保障内容に関する優良性を示す際に、それと不離一体の関係にあるものを併せて分かりやすく示さないことにより、契約者に著しく優良との誤解を与える表示となっていないか:例えば、保険商品の保障内容に以下の例示のような一定の制限があるにもかかわらず、当該条件が表示されていない場合、または著しく小さな文字や著しく短い時間で表示されている、参照先を明瞭にすることなく保障内容を強調した表示から離れたところに表示されている等により当該条件表示を契約者が見落とすような表示方法となっている場合には、当該保険商品の内容が実際のものより著しく優良との誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。
▽給付事由の全部または一部について契約後一定期間の不担保期間がある場合
▽保険金(給付金)額等が被保険者の年齢、契約後の年数、入院日数、対象疾病等の条件により減額または消滅する場合
ロ.保険商品の取引条件の有利性を示す際に、制限条件等を併せて分かりやすく示さないことにより、契約者に著しく有利と誤解を与える表示となっていないか:例えば、保険料の表示に関して、主たる契約者層とは考えられない若年層等の保険料を用例とし、その適用年齢等の条件表示を著しく小さく表示しているため、契約者が見落とすような表示となっている場合には、他の年齢層等の契約者についても当該保険料が適用され、実際のものより著しく安いとの誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。
ハ.保険商品・サービス等に関する表示が客観的事実に基づくものとなっているか:例えば、業界における最上級その他の序列を直接に意味する用語、唯一性を直接意味する用語を使用する場合は、その主張する内容が客観的に実証されているか。
ニ.銀行等で販売する保険商品について表示を行う場合(銀行等が行う表示を含む)、例えば定期預金などの銀行等の商品であるかのような誤解を招かないように、当該商品が保険会社の保険商品であることを適切に表示しているか。
(3)その他所要の規定の整備を行う。
2.実施時期

 平成18年4月1日より適用する。ただし、「契約概要」・「注意喚起情報」にかかる部分については、各保険会社等においてこの日までに対応できない事情がある場合には、対応できない部分につき平成18年9月30日までその実施の猶予を認める。


●「保険販売検討チーム」の第14回会合議事要旨(05年12月22日)
 金融庁は11月8日開催「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」第14回会合の議事要旨を発表。議題は「保険契約における適合性原則の遵守について」で、生命保険文化センター、日本損害保険協会より「購入者手引」(バイヤーズガイド)の検討状況について、説明が行われた。事務局より、これまでの議論を踏まえて作成した「自由討議のたたき台」に沿って、@保険契約における適合性原則とはなにか、A適合性原則の実効性を担保する方法、Bベストアドバイス義務について、C募集人等の質の向上、などの論点につき説明が行われた。
<「購入者手引」の検討状況についての討議内容>
▼募集人や代理店が保険会社から与えられている権限には、媒介や代理といったものが存在することを明確に記載しておく必要があるのではないか。どのような権限が与えられているかによって保障開始時期等にも影響があることから、消費者が正確に理解しておく必要があるのではないか。
▼傷害保険や医療保険といったいわゆる第3分野の保険商品は、生命保険会社、損害保険会社の双方において販売を行っていることから、例えば、生命保険会社から購入した場合はこういった特徴があります、損害保険会社から購入した場合はこういった特徴がありますという違いなどがあるのであれば、横断的に記述を行った方が消費者のためになるのではないか。
▼告知義務や契約の転換・乗換といった項目は非常に重要であり、例えば、契約の転換では既契約のキャッシュバリューが保障されないといったような、消費者にとって注意喚起が必要な事項を明確に記載しておく必要があるのではないか。
▼全体の分量、記載内容、構成については、例えば、ホームページによる公表を前提とした工夫の仕方もあるだろうし、今後も見直しを重ねながら、より良いものにしていくという取組みが必要なのではないか。
<「自由討議のたたき台」についての討議内容>
▼ベストアドバイス義務については、顧客に対してベストなものを勧めなければならないというような結果責任を求めるものではなく、例えば、仲立人に課せられた義務に鑑みれば、顧客のニーズや要望にできるだけ応えなければならないといった義務として考えるべきではないか。その場合には、むしろ商品を比較分析のうえ、理由を示して、提案するというようなそれぞれのプロセスの中で、どのような行動をとるべきなのかについて議論をすることが重要ではないか。
▼一定の適合する商品を推奨するという義務であれば、仲立人だけでなく、乗合代理店にもかかるだろうし、保険会社の営業職員や乗合でない代理店であっても、一定の商品プランを推奨するのであれば同様の義務がかかると考えられるのではないか。適合的な商品の推奨が求められるかどうかは、契約上の規定だけではなく、商品の提案を行うプロセスにおいて、その勧誘の状況から同様の行為を行っていると考えられる場合は当然求められるのではないか。
▼顧客との直接のコミュニケーションがないような場合を除き、凡そ全ての販売形態において、募集人の側で明らかに顧客に不適合と判断できる商品の推奨は行わないと考えるべきではないか。
▼顧客のニーズは、顧客の主観的な意向まで把握するのか、それとも客観的な状況のみで判断する必要があるのか。諸外国の例も参考にすると、顧客の客観的な状況に加えて、主観的な意向がある程度示されている場合は考慮の要素と考えてよいのではないか。
▼保険契約における適合性原則を考える場合、どのような問題を解決するためにどのような行為規制が必要なのか、その効果や実効性はどうなのかということも検討する必要があるのではないか。また、まずは顧客に対する説明義務を本当に追求していくことにより解決できる問題もかなりあるのではないかと思われ、その上で更にどのような課題があるのか、説明義務との関係からも併せて検討が必要となるのではないか。
▼顧客の側にある募集人等に対する不安や疑念を解消するためには、仮に保険への加入を断った場合に何か不利益を受けるのではないかといった不安感が誘発されるような勧誘が行われない環境が必要ではないか。
▼募集人が勧誘時にどんなに説明を尽くしても、実際に保険金の支払請求が行われる時にはそんな話は聞いていないといった苦情が多いのが実情であり、それを解決するためにも、募集人が勧誘時に顧客に適合的な商品を推奨したという事実を適合性の判断のための書面として顧客へ交付することが必要ではないか。
▼適合性原則とは、それだけを規定しても実効性があるとは言えず、それを支える具体的なルールがあって初めて意味があるものと言えるのではないか。特に、広義の適合性原則というものは、そもそも保険契約は商取引であるということを考えると、保険会社と消費者の間に情報格差や判断力の差があるということだけで顧客に適合的な商品を販売しなさいとの結論を導き出すのは困難であり、募集人が顧客に対して助言するというような状況が認められなければ成り立たないのではないか。
▼そのような観点からどのような行為規制をかける必要があるのかについて検討すれば、結果として顧客に適合的な商品が販売される環境が整えられるのではないか。例えば、顧客が募集人に依存していたかを客観的に示すためのルールとして、募集人がどのような立場で勧誘を行っているのか、助言のような行為を行うのかどうかを明示させるということも考えられるのではないか。


●「投資サービス法」骨子の保険関連項目(05年12月22日)
 金融審議会金融分科会第一部会報告「投資サービス法(仮称)に向けて」のうち、主な保険・共済関連項目の記述は下記の通り。

<別紙「他の業法と投資サービス法上の業規制との関係に関する整理」より抜粋>
▽保険・制度共済:現時点では、変額保険・年金や外貨建て保険は運用状況や為替変動により解約払戻金、満期保険金や年金原資が大きく変動する可能性があることから、「投資性」が強い商品として規制対象とすることが適当と考えられる。制度共済についても、現時点では、制度共済において、個人向け変額商品や外貨建て商品の取扱いはないが、今後、そのような商品が提供される場合には、保険と同様の規制の対象とすることが望ましい。

<別紙「各金融商品の具体的範囲に関する整理」より抜粋>
1.銀行業・保険業・信託業については、@各業法において免許制などのより高度な業規制が課されていること、A投資性のない商品(例えば決済性預金、掛け捨て保険、公益信託など)も規制対象としていること、B証券取引法65 条の根拠となった利益相反や銀行の優越的地位の濫用の可能性は今なお重要な論点であること――から、「投資サービス業」の業登録の範囲に含めないことが適当と考えられる。
 銀行代理業、損害保険代理店、生命保険募集人、保険仲立人及び信託契約代理業についても、預金の受入れなどに関する代理権を有していることなどから、銀行業などに準じて考えることが適当と考えられる。
 なお、投資サービス業の登録制度の対象範囲に含まれない業者であっても、投資性のある預金・保険などを販売・勧誘する場合には、投資サービス法上の行為規制を適用することが適当と考えられる。無尽については、投資サービス法の規制対象範囲に含まれない。
2.制度共済:共済事業を含めた組合の行う事業については、営利目的でなく共助をつうじて組合員の生活を守ることを目的として実施されており、そのような事業の性格を踏まえた規制(認可制など)が各組合法において講じられており、「投資サービス業」に含めないことが適当と考えられる。
なお、制度共済については、農業協同組合法、中小企業等協同組合法(火災共済)においては一定の販売・勧誘時の規制が置かれているほか、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合等による共済についても同様の規制を設けることについて検討が行われている。それ以外の制度共済、特に幅広く募集を行っているものについては、利用者保護のための適切な措置(販売・勧誘ルールの整備など)を講ずることが望ましい。

<報告書本編「手数料開示のあり方」より>
 当部会では、@顧客から業者に直接・間接に支払われる手数料(投資信託における信託報酬や証券会社への販売手数料、変額年金保険における運用関係費用など)と、A商品の組成業者(例えば、投資信託会社や保険会社)が販売業者(証券会社や保険募集人など)に対して支払う販売手数料、の2つの場面における手数料の開示について、議論が行われた。
@の手数料については、その額の多寡によって顧客へのリターンに直接影響するものであることから、投資サービス法において幅広く開示を義務付けることが適当と考えられる。
Aの手数料については、販売手数料の多寡が販売業者の販売・勧誘に影響を与える可能性について否定できない面はあるものの、このような開示義務をどこまで徹底するか(例えば、販売員の給与の一部としての販売報酬の取扱い)など、引き続き検討すべき課題があると考えられる。なお、この点については、むしろ業者が自己の利益のために顧客の利益を損ねているのではないかという点に問題の本質があり、誠実公正義務の問題として捉えるべきとの意見があった。


●金融審報告「投資サービス法」骨子を公表(05年12月22日)
 金融庁は22日、時期通常国会上程を目指す金融審議会金融分科会第一部会報告「投資サービス法(仮称)に向けて」を公表。

【第一部会報告の要旨】(「集団投資スキーム(ファンド)」「取引所」の項目は割愛)
<「投資サービス法(仮称)」の趣旨・目的>
1.利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上
●幅広い金融商品について包括的・横断的な利用者保護の枠組みを整備することによって、既存の利用者保護法制の対象となっていない「隙間」を埋めるとともに、現在の縦割り業法を見直し、同じ経済的機能を有する金融商品には同じルールを適用する必要。
●一般投資家を念頭に置いた規制を特定投資家(プロ)を顧客とする場面で緩和するなど、規制の柔構造化により、利用者保護の必要性と両立を図ることが適当。
2.「貯蓄から投資」に向けての市場機能の確保
●「貯蓄から投資」に向けて、公正かつ円滑な価格形成を軸とする市場機能を確保するため、金融・資本市場ルール全体についての不断の整備とその実効性の確保を図るための継続的な取組みが不可欠。
3.金融・資本市場の国際化への対応
●金融・資本市場のグローバル化が一層進展する中、国際市場としての我が国市場の魅力を更に高めるためにも、インフラ整備を急ぐ必要。
4.「投資サービス法(仮称)」の必要性
●適正な利用者保護と市場における不公正取引の防止によって、公正かつ円滑な価格形成を軸とする市場機能を十分に発揮し得る、公正・効率・透明かつ活力ある金融システムを構築することを目的として、証券取引法を改組し、投資サービス法(仮称)を制定することが適当。
5.投資サービス法の基本的枠組み
●現在の縦割り業法を見直し、幅広い金融商品を対象とした法制を目指す必要。
●投資サービス法を金融商品の販売や資産の運用に関する一般的な性格を有するものと位置付け、同じ経済的機能を有する金融商品にはその行為規制を業態を問わず適用することが適当。
●外国証券業者に関する法律、有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律や金融先物取引法などを含め、同種の性格を有する法律を可能な限り投資サービス法に統合。
●金融商品販売法についても、その内容の見直しを行いつつ、投資サービス法に統合することが望ましい。

<「投資サービス法(仮称)」の対象範囲>
1.基本的な考え方
●「中間整理」では、投資サービス法の対象となる金融商品(以下「投資商品」)について、可能な限り幅広い金融商品を対象とすべきとしつつ、次のような基準を設定。
@金銭の出資、金銭等の償還の可能性を持ち、A資産や指標などに関連して、Bより高いリターン(経済的効用)を期待してリスクをとるもの。
●上記Bにおける「リスク」は「市場リスク」と「信用リスク」のいずれかのリスクがあること、「リターン」は「金銭的収益」への期待を中心に整理。
2.「金融サービス・市場法」への展望
●最近の問題事例には現行法上対応困難なものもあり、包括的・横断的規制の適用につき概ね合意がある「投資性のある金融商品」について早期の法制化に取り組むことが適当。
●金融商品全般を対象とする、より包括的な規制の枠組みの検討については、投資サービス法の法制化とその実施状況、各種金融商品の特性、中長期的な金融制度のあり方なども踏まえ、当部会において引き続き検討。

<「投資サービス業(仮称)」の業規制>
1.「投資サービス業」の対象範囲
(1)「投資サービス業」の対象範囲
●「投資サービス業(仮称)」の範囲については、投資商品に関する「販売・勧誘」「資産運用・助言」及び「資産管理」を対象とすることが適当。
(2)自己募集と資産運用
●最近の問題事案において集団投資スキーム(ファンド)の自己募集の形式が採られていたことなどを踏まえ、少なくとも組合などによるファンドの持分については、自己募集を規制対象とすることが適当。
●集団投資スキーム(ファンド)の運用(投資商品への投資)についても、「資産運用業」の対象とすることが適当。
●自己募集・資産運用のいずれについても、プロ向け又は投資家数が一定程度以下のファンドについては、より簡素な規制とするなど、健全な活動を行っているファンドをつうじた金融イノベーションを阻害しないよう、十分な配慮が必要。
2.業規制の柔構造化
●「投資サービス業」の対象範囲は横断的なものとしつつ、業務内容の範囲に応じ、次のような三段階の区分を設け、業規制を柔構造化することが適当。
(1)第一種業(仮称)
・ すべての投資商品を対象とするすべての業務
(2)第二種業(仮称)
・ 投資商品のうち、流動性の低い商品の売買等
・ 投資商品に関する資産運用
・ 投資商品に関する投資助言
(3)仲介業(仮称)
・ 他の投資サービス業者の委託を受けた媒介(所属会社制)

<「投資サービス業(仮称)」の行為規制>
1.行為規制の全体像
●証券取引法及び証券投資顧問業法における規制を基本としつつ、対象となる投資商品を規制する既存の業法の規制などを勘案し、受託者責任などが確保されるよう、機能別・横断的に整理。
2.適合性原則のあり方
●投資サービス法における適合性原則は、体制整備にとどまらず、現行の証券取引法などと同様の規範として位置付けることが適当。
3.金融商品販売法における説明義務の業法上の義務化
●民事上の義務である現行金融商品販売法上の説明義務と同内容の説明義務を業法上の行為規制として位置付けることが適当。
4.不招請勧誘の禁止など
●不招請勧誘の禁止については、投資サービス法において、適合性原則の遵守をおよそ期待できないような場合に、利用者保護の観点から機動的に対象にできる一般的な枠組みを設けつつ、当面の適用対象については、現行の範囲(金融先物取引)と同様とすることが適当。
●再勧誘の禁止を新たな規制として導入し、例えば、取引所金融先物取引に適用することを検討。

<特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)の区分>
1.特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)の区分のあり方
●特定投資家と一般投資家の区分のあり方については、以下のような4分類。
@一般投資家に移行できない特定投資家:原則として開示規制における「適格機関投資家」の概念を基礎。
A選択により一般投資家に移行可能な特定投資家:例えば、公開会社、一定規模以上の会社など。
B選択により特定投資家に移行可能な一般投資家:例えば、Aに分類される以外の法人などのほか、個人についても、現状、富裕層の存在などを勘案すると、一定の要件を満たす場合には、選択により特定投資家への移行が可能とすることが適当。
C特定投資家に移行できない一般投資家:Bにおいて一定の要件の下で自らの選択により特定投資家に移行する個人以外の個人。
2.特定投資家(プロ)向けの場合に適用除外する行為規制
●書面交付義務など情報格差の是正を目的とする行為規制は適用除外。他方、虚偽の表示の禁止や損失補填の禁止など市場の公正確保をも目的とする規制については、適用除外としないことが適当。

<開示規制>
1.投資商品の性格に応じたディスクロージャーのあり方
(1)投資商品の性質に着目した開示制度について
●投資商品をその性質に応じて企業金融型商品と資産金融型商品に分類し、その分類ごとに開示規制を整備することが適当。
(2)投資商品の流動性に着目した開示制度
@流動性の高い投資商品
●上場企業については、他の開示企業に先立ち、ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告「今後の開示制度のあり方について」(平成17年6月28日)や企業会計審議会内部統制部会報告「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」(平成17年12月8日)を踏まえ、四半期報告制度の導入や財務報告に係る内部統制に関する制度の一層の整備を図っていくことが適当。有価証券報告書の記載内容の適正性について、経営者に確認を求める制度も併せて導入することが適当。
A流動性に乏しい有価証券
●譲渡性が制限されていることなどにより流通の可能性に乏しい投資商品のうち、例えば、その所有者が一定の範囲に留まり、当該所有者が特定できるようなものについては、開示書類を公衆縦覧ではなく直接提供する方向で開示制度を整備することが適当。
(3)適格機関投資家の範囲の拡大など
●事業会社について適格機関投資家の範囲を拡大するとともに、事業会社以外の法人や個人についても、一定の者が適格機関投資家となる途を開くことを検討することが適当。
●少人数私募において、勧誘の対象とされる適格機関投資家の人数制限(上限250名)についても、その大幅な緩和ないし撤廃を検討することが適当。
2.公開買付制度・大量保有報告制度
●公開買付制度及び大量保有報告制度については、公開買付制度等ワーキング・グループ報告「公開買付制度等のあり方について」を踏まえ、必要な見直しを行うことが適当。

<自主規制機関>
1.自主規制機関に付与すべき機能と加入義務付け
●投資サービス法上の各自主規制機関について、自主規制機関としての性格を最も強く有する証券業協会の機能との同等性を確保するとの観点から諸機能を付与することが適当。
●自主規制機関への加入を法的に義務付けることなく規制の実効性を確保するため、未加入業者に自主規制機関の規則などを考慮した社内規則の作成などを求める仕組みを整備。
2.投資商品に係る苦情解決・あっせん業務の業態横断的な取組み
●投資サービス法上の自主規制機関以外の民間団体の苦情解決・あっせん業務について、行政の認定により業務の信頼性を確保し、その自主的取組みを通じた苦情解決・あっせんの推進を図る枠組みを整備することが適当。

<民事責任規定、エンフォースメント及び金融経済教育など>
1.民事責任規定
●金融商品販売法の内容を見直し、その説明義務の対象に「取引の仕組み」を追加するなどの拡充を図る方向で検討を進めることが適当。
2.エンフォースメント
●証券取引等監視委員会が行った建議(平成17 年11 月29 日)で指摘されている「見せ玉」への対応策など、エンフォースメントの強化のため所要の措置を講ずることが適当。
3.グローバル化への対応
●証券分野の情報交換枠組み(証券MOU)に関する問題の早期解決に向けた取組みが必要。
4.金融経済教育
●金融経済教育の充実が時代の急務であり、官民挙げてその推進に本格的に取り組むことが必要。
●金融庁においても、これまでの取組みを検証しつつ、金融経済教育の充実に今後とも積極的に取り組むことが適当。


●金融庁、会社法施行で保険関係法制を整備(年12月20日)
 金融庁は、7月26日公布の「会社法」及び「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の施行に伴い、会社法及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う金融庁関係政令の整備等に関する政令案、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律に基づく特例旧特定目的会社に関する政令案を取りまとめ、公表した。
 保険関係の主な改正は、@船主相互保険組合法施行令の一部改正:必要な読替規定を新設するほか、所要の規定の整備を行う。A損害保険における基準料率に係る審査の手続の特例に関する政令の一部改正:題名を変更するほか、所要の規定の整備を行う。B保険業法施行令の一部改正:必要な読替規定を新設するほか、所要の規定の整備を行う。実際の公布時には保険のセーフティネットの見直しに係る改正、及び少額短期保険業に係る改正(今後パブリックコメント予定)を踏まえた改正となる――など。


●「保険販売検討チーム」の第13回会合議事要旨(05年12月19日)
 金融庁は10月25日開催の「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」の第13回会合の議事要旨を発表。「保険契約における適合性原則の遵守について」の議題で、神戸大学大学院の山田誠一教授が「保険契約における適合性原則」について、生保労連の伊藤中央副執行委員長が「生命保険の販売現場から見た適合性原則の現状」等について説明。
<山田教授の説明に対する主な意見>
▼適合性原則と説明義務は異なるものと考えられる。また、助言義務やベストアドバイス義務についても、適合性原則や説明義務とは異なる概念ではあるが、説明義務と較べるとより適合性原則の側に近いものといえるのではないか。
▼アドバイスするという契約上の義務を負う以上は、その内容はベストなアドバイスが求められると考えられるのではないか。明示の助言契約がなくても、取引の態様や慣行によって助言義務が募集人に課される場合はあるのではないか。
▼保険会社と顧客との情報格差、能力格差などの理由により、顧客が募集人の行う勧誘に依存している場合が多いとすると、募集人は顧客に対して十分な説明を行う、顧客のニーズに合わない勧誘をしないなどの顧客の利益を十分擁護しなければならないのではないか。また、信義則上、契約の当事者が互いの利益を尊重し、不適切に侵害しないという義務を負うことから、結果としてそのような義務が適切に履行されなかった場合は債務不履行が認められることもあるのではないか。
▼商品の内容が顧客にとって分かりにくいとか、勧誘により顧客が契約するかどうかの判断が強く左右されてしまうという点は、証券取引と保険に共通するものであり、証券取引を中心に形成されてきた、狭義の適合性、広義の適合性のいずれも保険取引に及ぶこととなると考えられるのではないか。ただし、証券取引における適合性原則のように、投資経験や相場変動などによる損失負担が可能かどうかではなく、保険取引における適合性原則は消費者にとって、その保険に加入することが無駄にならないかどうかといったことを念頭に置く必要があるのではないか。
▼保険契約における、狭義の適合性原則は助言義務とは異なるものである。一方、広義の適合性原則については、証券取引における適合性原則の延長と考えるよりも、当事者間の契約交渉における信義則に基づき一方の相手方の利益を擁護する必要があることに鑑みると、顧客の保険ニーズへの適合というものが求められるのではないか。そのように考えると、実質的には極めて助言義務に近いと考えられるのではないか。またそのような側面を確保するためのルールを考える必要があるのではないか。
▼全ての保険商品について懇切丁寧に説明するのではなく、例えば、明らかに顧客のニーズに適合しない商品や購入しないと思われる商品について、事前に募集人の側で区別の上除外するという作業をしたうえで、顧客に適合すると思われる商品のなかから説明を行うことが求められるという考え方があるが、何を根拠に求められるのか。
<伊藤中央副執行委員長への主な意見>
▼顧客のニーズは時間の経過とともに変化することが考えられるが、募集人の入れ替わりが頻繁に起こった場合、新しい募集人から契約の転換などを勧められても、本当に顧客のニーズを把握してくれているのか不安である。そのため、保険会社において顧客の情報が適切に管理されているか、後任者に十分な引継ぎがなされているのかが重要ではないか。
▼数年毎に募集人が入れ替わった場合、複雑な保険商品が多い中で、研修を終えたばかりの新しい募集人が本当に顧客に適した保険商品かどうかを判断するのは難しいのではないか。募集人の判断だけではなく、保険会社の内部において組織的にチェックする体制が整備される必要があるのではないか。
▼どのような商品が適合的なのか不適合なのか判断するのは難しく、適合性原則が色々な行為義務とか規制に入ってきた場合に実体として機能するかどうかは難しいのではないか。
▼募集人の報酬体系によっては、保険商品を販売する時に、例えば、募集人の手数料収入が多い商品を優先的に勧めるといったバイアスのかかるような報酬体系というものは存在しないのか。
▼報酬は商品内容や種類によって違い、大きな契約をしてもらえば大きな報酬となるが、営業の世界であるから当然のことではないか。募集人の手数料収入が多い商品を優先的に勧めるといったバイアスがかかるということは要素としてはあるかもしれないが、販売の現場においては顧客の立場が強く商品を選ぶのは顧客であり、報酬がいい商品を意図的に勧めたとしてもそのまま加入してもらえるものではなく、現実的にはなかなかおこりえないのではないか。


●金融庁、チューリッヒ保険に行政処分(05年11月30日)
 金融庁は30日、チューリッヒ・インシュアランス・カンパニーに対する行政処分を行った。
<行政処分の概要> 
1.チューリッヒ・インシュアランス・カンパニーについては、金融庁検査の結果(平成17年6月17日通知)及び保険業法第200条第1項に基づく当社からの報告によると、平成17年11月25日付で業務改善命令を行った付随的な保険金の支払漏れに係る問題のほかに、以下のような事実が確認された。 
(1)利用者保護及び利用者利便に欠ける業務運営
@電話による契約締結において、免責事項の説明が不十分である等、契約締結前に重要事項の説明を十分に果たしておらず、保険業法第300条第1項第1号に違反する事例が多数認められた。
A保険金支払処理について、対人案件で1年超の滞留が3割、対物案件で3ヶ月超の滞留が4割となっている等、長期滞留事案が多数認められた。
B顧客からの苦情に対して、不誠実な対応を行うなど、苦情処理に対する取組みが適切性を欠いている。
C傷害保険の特約について、募集パンフレット上の支払い要件の誤表記を把握していながら長期間放置していた。また、実際の保険金支払に際して当該パンフレットの誤表記に従った運用をしていたため、本来支払うべきものが支払われていないとの事業方法書に違反する業務運営が行われていた。
(2)不適切な当局への報告態勢:サービスセンターが示談行為を調査会社に依頼していた事実(弁護士法第72条違反)を本部では把握していなかった。また、日本における代表者は当局の保険業法に基づく報告徴求に対し、このような実態を十分に確認・検証しないまま、事実と異なる報告を行っていた。
(3)事務リスク管理態勢:内部規定において、各事業本部等における具体的な事務リスク管理のための規定が欠落し、法務渉外部は正確な事務処理に向けた明確な指導も行えなかった。この結果、事務処理は各事業本部の担当者任せとなっており、当社として統一性を欠く不十分なものとなっている。
(4)経営管理態勢:日本における代表者は業務運営の実態を十分に把握しておらず、全社的なコンプライアンス及びガバナンスの発揮が不十分と認められる。また、内部監査については、以上のような問題点を全く把握しておらず、利用者保護、法令等遵守の観点にたった内部監査が実施されていない。
 
2.このため金融庁は30日、当社に対し、保険業法第204条第1項の規定に基づき、以下の内容の行政処分(業務改善命令)を行った。
(1)契約者保護及び契約者利便の観点から、保険金等支払、苦情処理等をはじめとする全ての業務について適切なものとなっているか、早期の点検を行い、問題があるものについては直ちに是正すること。
(2)内部監査を含む経営管理(ガバナンス)態勢及び内部管理態勢並びに法令等遵守態勢について、継続的に実効性のあるものとなるよう、整備・改善を図ること。
(3)業務改善命令に至るようになった問題等の原因となった役職員の責任の所在を明確化すること。
(4)上記(1)から(3)について、具体策及び実施時期を明記した業務改善計画を、平成17年12月14日までに提出すること。
(5)業務改善計画の実施終了までの間、計画の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、改善計画提出後3ヶ月毎に報告すること。


●銀行窓販の保険法令解釈事例集を公表(05年11月28日)
 金融庁は12月22日の窓販追加解禁に際して、銀行等による保険販売規制の見直し(保険業法施行規則等の一部改正=平成17年7月8日公布)により改正された規則に関する法令解釈の一部については、適切な販売体制の構築等の観点から、早急に各保険会社・銀行等の役職員に周知する必要があるとして、改正規則の法令解釈の一部について、その内容を「銀行窓販に関する保険法令解釈事例集」(Q&A)として、金融庁ホームページに掲載。
<事例の概要>
〈担当者の分離〉
▽個人ローン担当者は、改正後の保険業法施行規則第211条第3項第3号に規定する措置(担当者分離措置)の対象となるのか。また、個人ローンのみの貸付先は同規則第211条第3項第1号に規定する融資先販売規制の対象にならないと解して差し支えないか。

1.圧力販売は、継続的な資金需要を銀行等に依存するがゆえに生じるものであり、単発融資であるのが通常である個人ローン(住宅ローン、教育ローン、アパートローン等)については、圧力販売につながる可能性は高くないと考えられること。
2.新たな保険商品の販売が禁止されるのは、圧力販売につながる可能性の高い者(「フロントラインで常態として(事業資金の)融資に係る応接業務を行う融資担当者や渉外担当者」(17年7月のパブリックコメントより))を想定していること。
 以上を踏まえると、個人ローン担当者は、担当者分離の対象にはならないと考えて差し支えない。なお、上記1を踏まえると、継続的な資金需要を伴わない個人ローンのみの貸付先は融資先販売規制の対象にならないと解して差し支えない。

〈銀行等が販売できる保険商品〉
▽賃貸住宅は、改正後の保険業法施行規則第211条の2第1項第1号に規定する住宅関連長期火災保険の付保対象となるのか。

 その建設、購入若しくは改良(これらに付随する土地又は借地権の取得を含む)のための資金の全部又は一部として銀行等からの借入金が充当されている又は充当されることが確実である賃貸住宅(建物の全部を賃借人の居住の用に供するものをいう。以下同じ)については、住宅関連長期火災保険の付保対象となる住宅に含まれると解されるが、当該保険の付保対象については激変緩和の観点から段階的に拡大してきているところであり、当該賃貸住宅(事業の用に供することが明らかなものを除く。これについては、例えば団体信用生命保険における取扱いが参考になる)については、全面解禁の際に、当該保険の付保対象に含めることとしている(ただし、モニタリングの結果、必要があれば見直しを行うこととしている)。
※参考:住宅関連長期火災保険については、平成13年4月、個人向け住宅を付保対象として解禁。平成14年10月には店舗併用住宅の一部を、本年12月には店舗併用住宅全般を付保対象とすることとしている。店舗併用住宅には、建物所有者その他の賃借人でない者の居住の用に供する部分と賃借人の居住の用に供する部分とを有する建物が含まれる。

〈融資申込み先への保険販売規制〉
▽改正後の保険業法施行規則第234条第1項第9号に規定する融資申込み先への保険販売規制の導入にあたり、「融資申込みの有無の確認」は、どのように行えばよいのか。

1.融資申込みの有無の確認を行う段階では、顧客の保険ニーズは顕在化しておらず、被保険者も明らかになっていないことが多い。したがって、圧力販売の懸念に晒されるのは当該顧客(保険募集人である銀行員が直接応接する者であって、保険契約者となることが想定される者をいう)のみといえる。このような当該顧客に対する圧力販売の懸念を払拭することが当該規制を導入した趣旨であり、当該趣旨に照らせば、当該顧客の融資申込みの有無を確認すれば足りることとなる。
2.当該確認の方法については、融資の申込み情報はデータベース化が実務上困難と認められることを踏まえれば、当該顧客の申告に基づいて当該顧客の融資申込みの有無を確認する方法をとらざるを得ない。
3.なお、当該顧客が自己の融資申込みの有無を認識していないとは考えにくいものの、「他の支店において融資に関する話をしているが、融資申込みなのかどうか不明」との申告を受けたような場合には、当該他の支店への照会により当該顧客の融資申込みの有無を確認することも必要。

〈モニタリング〉
▽改正附則第3項に規定する検証(モニタリング)を実施する目的、方法等

(1)モニタリングを実施する目的
@必要かつ十分な弊害防止措置の構築:先行解禁から全面解禁に至るまでの期間を、全面解禁のための準備期間と位置付け、この間に、弊害防止措置が有効に機能するかどうかをチェック(必要に応じて当該措置の見直し(措置の厳格化及び緩和等)を実施)して、全面解禁時には万全を期すことができるようにすること。
A 全面解禁の実施時期の適切性の検証:全面解禁の要件とされている「保険契約者等の保護のために必要な場合」に該当しないこと(又は該当すること)を確認するため、銀行等による保険販売の実施状況を把握すること。
(2)モニタリングの実施方法
 上記の目的を達するためには、銀行等による保険募集体制の整備状況や法令等遵守の状況をチェックする必要があり、そのための方法として、以下のものが考えられる。
@当局検査による法令等遵守状況の把握
A販売チャネル別販売実績の監視
B金融サービス利用者相談室等に寄せられた苦情・相談の収集、分析等
C主な保険会社、銀行等その他の関係者からの定期的なヒアリング(保険募集体制の整備状況等の把握)
(3)その他留意事項
@不適切な事例や苦情・相談の収集・分析等にあたっては、販売件数の増加の状況や他の販売チャネルにおける発生状況等に留意することが必要。
A全面解禁の期日の見直しは、不適切な保険募集の発生状況やその原因、行政処分の発出状況、訴訟提起の状況などを総合的に勘案して判断するものであること。

●支払漏れで損保26社に行政処分(05年11月25日)
 金融庁は25日、臨時費用保険金等の付随的な保険金の支払漏れを起こした損保26社に対し、行政処分を行った。
<行政処分の概要> 
1.付随的な保険金の支払漏れが判明した損保26社については、保険業法第128条等に基づく報告によると、各社共通して以下の点のような問題が認められた。なお、「付随的な保険金の支払漏れ」とは、保険事故が発生し、主たる保険金の支払いは行われているにもかかわらず、臨時費用保険金等の付随的な保険金(見舞金、香典、代車費用等)について、契約者から請求が無かったため、本来支払われていなければならないものを支払っていなかったことを指す。
(1)支払漏れ件数が計18万件を超える等、契約者への被害が広範に生じていた。また、保険業法第4条第2項第2号に掲げる事業方法書、同項第3号に掲げる普通保険約款に定めた事項に基づいた保険金支払が行われていなかった。
(2)経営陣は付随的な保険金の支払いに係る特性に応じた態勢整備の必要性に対する認識を十分に有しておらず、その整備を率先して行ってこなかった。また、経営陣は、適切な保険金支払いの重要性の認識が不十分であり、支払漏れを一部の項目の保険金で発見した場合においても他の保険金の支払漏れの有無を点検していない等、支払管理態勢の整備に向けた取組みが不十分であった。
(3)事務工程やシステム対応等を含めた支払事務に係る手続き等の適切な整備、正しい商品知識の徹底が不十分であり、適切に業務運営を行う態勢が十分に整備されていなかった。管理部門等は、付随的な保険金の支払いの適切性の認識が不十分であり、主たる保険金とは別に、付随的な保険金の支払いが適切に行われているかに至るまで点検する態勢が整備されていなかった。
(4)商品開発時において、損害賠償責任に係る典型的な損害保険とは異なる性質を持つ付随的な保険金を支払う商品が開発されているにもかかわらず、付随的な保険金の支払漏れを防止する為の関連部門の連携体制が、十分に構築されていなかった。
2.これらの発生原因は個別事案の処理に関するものに留まらず、付随的な保険金にかかる商品開発から支払管理に至る態勢の不備に基づくものであり、経営管理(ガバナンス)態勢や内部管理態勢の欠陥といった構造的な問題に起因するものと認められる。
 このため、本日、各社に対し、保険業法第132条第1項等の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。
(1)経営管理(ガバナンス)態勢の改善・強化
@付随的な保険金の支払漏れが生じないような適正な業務運営態勢の整備に経営陣が関与する体制の整備。
A付随的な保険金の支払状況についても、適切に点検・内部監査等が実施されるとともに、その結果が経営陣に報告され、問題を認識した場合に、速やかに業務運営全般を是正する態勢の構築。
(2)顧客に対する説明態勢の見直し・整備
@パンフレット等の資料について、顧客に対して、どのような保険金が付随しているのかをわかりやすく解説したものとなっているか、検証を行い、問題があるものについては直ちに見直しを行うこと。
A顧客に案内する保険金請求書等の書面について、保険金を請求する事案が発生した際に、顧客に対して、どのような保険金が付随しているのかを案内できるものとなっているか、検証を行い、問題があるものについては直ちに見直しを行うこと。
(3)商品開発態勢の見直し・整備
 商品発売及び改定前に、商品開発担当部門、支払事務担当部門、システム担当部門その他関連部門相互における保険金の支払漏れが生じないための連携体制の構築(例えば、上記(2)及び下記(4)において掲げた点等、商品発売前に検討すべき具体的な項目の整理を含む)
(4)支払管理態勢の検証・見直し
@支払事務工程の検証を行った上、必要な見直しを行うこと。
Aシステム、帳票類、規定・マニュアル類等の支払事務に係る手続き・書式等の検証を行った上、必要な見直しを行うこと。
B支払事務関係者に対する教育・研修の徹底。
C契約者から過去の保険金の支払漏れに係る照会が行われた場合、速やかに対応を行うことができる体制の整備、並びに、保険会社として過去の保険金の支払漏れの遺漏がないように検証できる体制の整備。
(5)上記(1)から(4)について、具体策及び実施時期を明記した業務改善計画を平成18年1月13日までに提出すること。
(6)業務改善計画の実施終了までの間、計画の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、改善計画提出後6ヶ月毎に報告すること。


●損保会社の支払漏れ調査結果を公表(年11月25日)
 金融庁は、損保会社の付随的な保険金の支払漏れに係る調査結果について公表。
<損保会社の支払漏れ調査結果の概要> 
1.報告徴求の概要
全ての損害保険会社(48社)に対し、以下の事項について9月30日付で保険業法第128条等の規定に基づく報告徴求を実施。これを受け10月14日までに報告書が提出された。
(1)過去3年間(平成14年4月から17年6月)において、保険金支払事由が発生した事案における付随的な保険金の支払漏れの件数及びその支払完了状況。
なお、「付随的な保険金の支払漏れ」とは、保険事故が発生し、主たる保険金の支払いは行われているにもかかわらず、臨時費用保険金等の付随的な保険金(見舞金、香典、代車費用等)について、契約者から請求が無かったため、本来支払われていなければならないものを支払っていなかったことを指す。
(2)保険金等支払管理態勢のあり方も含め、付随的な保険金の支払漏れが発生した原因分析。
(3)発生原因分析を踏まえた再発防止策。
2.付随的な保険金の支払漏れに係る調査の結果
全ての損害保険会社48社から提出された付随的な保険金の支払漏れに係る調査結果の概要は以下のとおり。
(1)付随的な保険金の支払漏れ件数・金額及び支払状況
 全ての損害保険会社48社のうち26社から、付随的な保険金について支払漏れとなっており、追加的に支払いを要するものがあったとの報告がなされた。
 支払漏れ件数は18万614件、金額は約84億3百万円。一件当たりの平均金額は、4万6千円。
 報告書提出までに、上記の支払漏れと判明した件数のうち93.3%について被保険者等に対する支払が既に完了している。 
なお、付随的な保険金の支払漏れがないとの報告を受けた22社は、付随的な保険金をそもそも取扱ってない、あるいは取扱っている場合でも取扱件数が少数にとどまっている。
 保険種類別の内訳では、自動車保険86%、火災保険5%、傷害保険5%、新種保険3%、その他1%と、支払漏れ件数の約9割が自動車保険の臨時費用保険金等に関するものとなっている。
 うち自動車保険の支払漏れ臨時費用保険金等の内訳は、車両保険代車費用22%、対人賠償保険臨時費用21%、対物賠償保険臨時費用16%、車両保険修理時諸費用13%、搭乗者傷害保険(死亡・後遺障害・医療費用)11%、その他17%。
(2)付随的な保険金の支払漏れが発生した態勢面の問題
 付随的な保険金の支払漏れが判明した損害保険会社においては、以下のような問題点が認められた。
@商品開発時の社内連携の問題
・商品開発部門と関連部門が商品発売・改定前に協議する際、商品内容の理解の徹底、システム対応等、支払体制の事前準備が不十分。
・関連部門間の商品開発に係る協議事項や新商品の開発、販売に係るスケジュール等についてルール化がされていない。
A顧客に対する周知の徹底の不足
・主たる保険金に加えてどのような保険金が付随しているのかについて、商品の説明・案内を十分に行っていない。
・主たる保険金に加えて、付随的な保険金支払の事由が生じた時に、保険金請求についての説明・案内が明確でない。
B支払部門における問題
・損害額の認定や示談交渉等主たる保険金の支払に関連する事務に担当者の注意が集中し、保険契約の内容や契約者からの保険金請求の確認及び案内が不十分。
・付随的な保険金の支払漏れ防止の観点から支払部門における管理者等が行う二次的なチェック体制が不十分。
・査定マニュアル等の内容が体系的・網羅的でない。
・事故が発生すれば、実際に費用が生じているか否かに拘らず、一定額の臨時費用保険金が支払われる約款内容となっていたが、典型的な損害保険金の支払と同様に、実際に臨時費用が生じていなければ、支払要件を満たさない、という誤解があった。
・同一事故においても人身傷害、搭乗者傷害、自損事故の各保険金項目を異なる職員が担当する場合において、職員間の相互連携がなかった。また一方で、一人の担当者が付保されている全保険金項目を担当する場合であっても、示談等の事務が発生する対人賠償等を含む保険金の事故登録だけ行って、搭乗者傷害の事故登録を失念していた。
Cシステムの問題
・保険内容と事故内容が照合できるシステム、支払漏れ時にはアラームが作動するシステム、など支払漏れをチェック・防止したり、支払を促すようなシステム対応が不十分。
・保険金の項目によっては、システム上のチェックが行われる体制となっておらず、専ら人的なチェックに頼っている。
D点検・内部監査等の問題
・付随的な保険金の支払漏れ防止の観点からの点検・監査項目が欠如。
・点検・監査結果の経営陣への報告が不十分。
・一部の項目の保険金で支払漏れ等が判明しても、他の項目の保険金も同様の支払漏れがないかどうかの点検を十分に行っていない。
(3)各社が講じようとしている再発防止策
 各社においては、上記のような発生原因分析を踏まえ、各社とも以下のような再発防止策を講じようとしている。
@商品開発時の担当横断的な体制の構築
・商品開発時における支払漏れを防止する為の検討項目や関連部門との連携等を図る為の商品開発の進捗管理ルール等を規定。
A支払事務にかかる手続き・書式等の見直し
・支払管理者及び担当者が使う査定マニュアルや支払内容確認のチェックシートに付随的な保険金項目を新たに追加し、注意を喚起する等の見直し。
B研修等の実施
・付随的な保険金の支払漏れ防止に関する研修を、支払部門を中心とした職員に対して実施。
Cシステム対応
・付随的な保険金の支払漏れに対する警告表示機能を追加。
D事後点検の項目追加・定期化
・業務点検・内部監査を実施する際の検証項目に付随的な保険金の支払態勢を追加。
 以上のような再発防止策に加え、次のような防止策を講じようとしている会社もみられる。
・商品開発時の担当横断的な体制の構築については、商品開発にあたり、保険金支払実務や品質管理の観点から検討を行う為に、損害サービス部門、商品開発部門、システム部門等の役員等からなる専門組織を設置。
・顧客に対する周知徹底を図るため、顧客と保険会社間で支払保険金の内容がチェックできるようにするため、保険金請求書の記載内容の見直し。
・知識の定着を検証する確認テストを支払部門を中心とした職員に対して実施。
・システム対応については、付随的な保険金の支払要否等の確認無しには支払業務が終わらない機能を導入。
・支払漏れの可能性がある案件をリストアップし、支払漏れがないか定期的な業務点検・内部監査を実施。


●「第12回保険販売検討チーム」の議事要旨(05年11月25日)
 10月18日開催「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」第12回会合の議事要旨を発表。「保険契約における適合性原則の遵守について」の議題で、ニッセイ基礎研究所の青山主任研究員が「英国における保険販売と適合性原則」、同研究所の土浪主任研究員が「米国の生命保険販売と適合性規制」について説明。また、木下委員が「保険取引における適合性原則の考え方」について説明した。
<自由討議の意見要旨>
▼適合性原則を抽象的に議論するだけでなく、その原則から導かれるべき個別の行為ルールの内容やその是非について検討する必要があるのではないか。その際には、諸外国の状況、例えば保険契約における適合性原則は顧客ニーズへの適合を重視するものであるという前提で、顧客を知る義務や適合性レターの交付義務が課せられていること等を参考とすべきではないか。
▼顧客との関係でいえば、通常一般的なケースを想定して提案を行い、そこで得られた情報をもとに再度提案を行うといった場合が多く、募集人の行う顧客への情報提供や助言といった行為を明確に区別することは困難ではないか。
▼情報提供をすれば後は顧客の自己責任に委ねられるということであれば情報提供の次元の問題にとどまることとなる。しかしながら、それを超えて顧客のニーズを誘導していくなど顧客の実質的な判断に影響を与えるものは助言といえる。情報提供と助言の中間に位置するものについて、いずれに該当するかその解釈が難しい場面もあろうが、各行為の性質等を勘案しつつ情報提供や助言の枠組みを具体化していく等合理的な対応をなしていくべきではないか。
▼募集人が顧客に助言を行う場合、契約上の定めがなくても、募集人が顧客に対して行う勧誘の状況等から、その外形上、黙示の助言契約が認められる場合があるのではないか。
▼例えば、複数の保険商品や他の金融商品と比較して勧誘する場合、ひとつの保険商品でも複数の契約のタイプがある場合など、実際に類型化することが難しい部分もあるが、その状況から顧客が募集人を信頼しても仕方ないような勧誘が行われる場合は黙示の助言契約が認められると考えられるのではないか。
▼最近の顧客は、募集人から一方的に情報提供を受けて購入するだけでなく、例えば、来店型の店舗や通信販売などに見られるように、自ら積極的にアプローチをする場合も多くなっている。また、顧客の側でも、保険会社や募集人を選択することは可能であって、気に入らなければ拒否することも出来る。顧客が受動的であるということを前提とした検討は適当ではないのではないか。
▼顧客が受動的に保険商品を購入する局面において問題がおこっている場合が多く、そのような問題を解決するためのルール作りが必要ではないか。
▼募集人が自己に都合のよい保険商品の提案を行った場合、顧客の商品選択の幅が制限されたり、そのニーズが歪められてしまう可能性がある。そのため、募集人の行う情報提供や助言といった行為には公正性が求められるのではないか。特に契約を転換する場合には、顧客が従前の保障水準を失うなどのリスクがあることから、既契約と新契約の保障内容の比較だけでなく、それに伴う費用と便益についても分析した結果を示す必要があるのではないか。
▼保険契約の転換は、既契約を下取りして新契約を別に結ぶため、そこには顧客の主観や優先度が関係してくる。そのため、保障内容の比較だけでなく、その費用や便益についてまで比較しないと転換できないというのは困難ではないか。
▼契約の転換には従前の保障水準が維持されない等のリスクがあるからこそ、既契約を継続した場合にはどうなるのか、転換した場合はどれだけの費用がかかるのか、保障内容が変更になるのか、といった事項が明らかになって初めて、転換するかどうか顧客の判断が可能となるのではないか。
▼勧誘時の公正性の確保のために、例えば、募集形態や取り扱う保険商品の範囲など募集人がどのような立場で保険商品をすすめているのかを明示したり、募集人の手数料の開示や顧客への推奨理由を記載した文書を交付させるなどの措置が考えられないか。
▼募集人が保険商品の推奨理由を記載した書面を顧客に交付することとしたとしても、判でおしたような文面が並ぶだけといった事態になると、あまり実効性のないルールになってしまうのではないか。
▼そのような書面が交付されることによって、顧客にとっては推奨された保険商品が自分のニーズに合っているのかを確認する機会が確保されるとともに、保険会社や募集人の責任を明確化する上でも一定の効果があるのではないか。


●付加率自由化へ施行規則・監督指針改正でパブコメ(05年11月24日)
 金融庁は保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令」案と「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正案を取りまとめ、公表。パブリックコメントを集約する。
<「保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令」案、「保険会社向けの総合的な監督指針」改正案の概要>
1.趣旨
保険会社の経営効率化への取組み等の経営努力を保険料に適時適切に反映させる観点から、保険料のうち保険数理に直接よらない部分を中心に商品審査を簡素化するとともに、事業費に関する充実したモニタリングを行うことにより、監督の実効性の向上を図り、保険料の合理性・妥当性・公平性を確保した上で、保険商品の価格の弾力化を促進する。このため、保険業法施行規則、保険会社向けの総合的な監督指針の一部の改正を行う。
2.改正内容
(1)保険料のうち保険数理に直接よらない部分の商品審査の簡素化:算出方法書の記載事項より、予定事業費率に関する事項を削除し、予定事業費に係る具体的詳細な記述を求めないものとする。
 なお、保険業法第5条第1項第4号(保険料における不当な差別的取扱いの禁止)、同第300条第1項第5号(その他特別の利益の提供の禁止)の規定は従来通り適用されることを監督指針において確認的に記載する。
(注)モニタリングについては、事業費の実績と保険料の関係を把握するため商品別等に細分化した定期報告を別途保険会社より徴求する。
(2)その他の簡素化:事業方法書の記載事項について監督の実効性を踏まえつつ、真に必要なものに限定する。
3.実施時期
 平成18年4月1日以降開始する事業年度から適用する。


●金融庁、明治安田生命に厳しい行政処分(05年10月28日)
〜募集停止2週間、業務改善時まで商品認可申請停止〜

<明治安田生命に対する行政処分の内容> 
T.明治安田生命保険相互会社については、当庁の検査及び保険業法第128条第1項に基づく同社からの報告、並びに同条同項に基づく平成12年度から16年度の過去5年分の不払事案の再検証に係る同社からの報告によると、以下のとおり、重大な法令違反等が確認され、法令等遵守(コンプライアンス)態勢及び経営管理(ガバナンス)態勢などに根本的な問題が認められた。
1.平成12年度から16年度の過去5年間において、本来保険金等を支払うべきであったにもかかわらず、支払いがなされていない保険金等が1,053件認められた。
 また、上記以外で、被保険者が癌告知を受けるまで、癌に係る割増給付金と一般給付金の差額等について、契約者等からの申し出がないにもかかわらず同社の独自の判断により支払留保するという、約款の規定にはない取扱いを行った上に、留保事由が既に消滅した後においても未払いのままとなっている給付金が1,450件認められた。
 これらは、保険金等の支払事由の適用を事業方法書・普通保険約款で定められたとおりに行っていなかったものであり、保険業法第4条第2項第2号に掲げる事業方法書、同項第3号に掲げる普通保険約款に定めた事項のうち特に重要なものに違反していたものと認められた(保険業法第133条第1号に該当)。
2.生命保険募集人が告知妨害、特別の利益の提供など保険業法第300条第1項第3号及び同項第5号に違反する保険募集を行っていたものなどが認められた。
 また、このような法令違反行為について、保険業法第127条第1項第8号に基づく不祥事件届出を、不祥事件の発生を知った日から30日以内に行っておらず、同条に違反していたものと認められた。
3.平成17年2月の業務改善命令において「保険約款及び法令等に従い、迅速かつ適切な保険金支払いを行うための保険金支払管理態勢を確立すること」とされており、また、3月16日付で当局に提出された業務改善計画においても迅速かつ適切な保険金支払管理態勢の確立が掲げられた。しかしながら、同社の経営陣は、不適切な保険金等の不払いが詐欺無効以外にも行われていた可能性を認識していたにもかかわらず、検査開始(平成17年4月20日)に至るまで詐欺無効以外の不払事案について、過去の検証及び査定基準の見直しの実施がなされておらず、結果として不適切な不払いが散見され、上記の業務改善命令への対応が遅延したものと認められた。
4.保険金等の支払いは保険会社の基本的かつ最も重要な機能であるが、同社においては保険金等支払管理態勢に極めて重大な欠陥が認められることをはじめ、法令等遵守態勢や内部管理態勢に重大な問題が多数認められた。
@経営管理態勢:業務執行にあたる代表取締役、取締役及び取締役会並びに監査役及び監査役会は、下記のように本来果たすべき機能を発揮していなかったものと認められた。
「死差益増の目標額(39億円)」を合併新会社における18年度の対13年度増益効果として設定し、経営統合委員会に報告した上で経営として了承し、決定した。このような方針を受けて、同社の保険金部が具体的な支払抑制目標を設定・管理するなどにより、「不払い優先の風土」が醸成されたと認められた。
 経営陣は、モラルリスク対策プロジェクトチームが支払抑制目標を設定し、進捗管理を実施している等の実態を把握せず、牽制機能を発揮していなかったほか、法務担当部に対する牽制・検証の必要性を認識せず、態勢も整備していなかったものと認められた。
 保険契約者保護に係る重要な事項である支払査定基準の改廃(重過失の適用範囲の拡大等)について、取締役会等の承認を得ずに保険金部長が決定し、担当役員への報告も簡単な要旨で報告されているに過ぎず、加えて担当役員からは特段の指示もなされていなかったものと認められた。
 経営陣は、支払関係の苦情件数が増加していたにもかかわらず、これを問題視することなく、投書等の形で直接に届けられた個別の苦情への対応を保険金部任せとするなど、契約者からの警鐘を正しく受け止めず、所要の実態把握や対策を講じなかったものと認められた。
 経営陣は、不適切な保険金等の不払いが詐欺無効以外にも行われていた可能性を認識していながら、詐欺無効以外も含めた適切な保険金等の支払管理態勢の確立などを内容とする業務改善命令の発出以降当庁の立入検査の開始に至るまで、詐欺無効に直接起因する諸課題に対する対応のみに終始した。このため組織体制や陣容の見直しを行い、経営資源を再配分するなどの抜本的対策を講じるべきところを、具体的な改善策等を作成・実施するなどの対応を何ら行っていなかったものと認められた。
A不祥事件処理態勢については、契約部において営業職員による告知義務違反教唆の事実や無面接募集などの不適切事象を把握していたにもかかわらず、調査が不十分なまま不問としている事例が認められるなど、十分に機能していないと認められた。
B苦情処理態勢については、申し出のあった苦情について、本社及び支社等において原因分析や再発防止策の検討が十分行われていないほか、告知義務違反教唆の疑いのあるもののうち、事実関係を調査しないまま保険金等を不払い等にしている不適切な事例が認められた。
C内部監査については、十分な知識・専門性をもった人材配置・育成が行われておらず、また、指摘事項をフォローするという姿勢が欠如しているほか、内部監査部門の独立性が確保されておらず業務の適切性を検証する態勢が欠如していることが認められた。
D同社の子会社である株式会社明治安田生命保険代理社においては、取扱募集人の保険契約者への特別利益の提供、保険契約申込書等の代筆行為に係る組織的な関与など、不適切な業務行為が認められた。
 子会社である代理社にこのような問題が生じているのは、代理社においてコンプライアンス意識の徹底に対する取組みが不十分であることに加えて、同社の代理社に対する一元的な管理・監督を行う仕組みが構築されていないことによるものと認められた。
5.その他の不適切な取扱い
 その他、契約者保護、利便の観点から以下のような不適切な取扱いが認められた。
@告知義務違反教唆があっても告知義務違反を常に問うと解釈され得るような、不適切な記述が多数認められる顧客対応マニュアル(Q&A)を保険金部及び法務担当部において作成し、支社等の営業拠点や顧客サービスセンターに配布するなど、告知義務違反教唆を軽んじる風潮を助長したものと認められた。なお、同マニュアルは正式な規程ではなく、お客さまサービス部による検証が行われていなかったものと認められた。
A満期返戻金、保険金等の支払いにおける時効期間が経過する前後の契約者対応については、旧明治生命契約と旧安田生命契約のいずれかであるかによって、時効に関する通知文書の内容及び発信頻度などに差異が認められ、契約者間の公平性を著しく欠いているものと認められた。
B解約処理手続については、同社側の対応に非が認められる処理の遅延等に関する苦情が多く、顧客の意思確認から支社長の承認までに長期間を要しているものが多数認められた。
 
U.このため、28日、同社に対し、保険業法第132条第1項及び第133条の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。
1.保険業法第133条の規定に基づく処分(業務停止命令)の内容
(1)保険業法第3条第4項の免許に係る保険契約の締結及び保険募集の業務(自動継続による契約の更新を除き、生命保険募集人に委託しているものを含む)を平成17年11月4日から平成17年11月17日までの間停止すること。
(2)経営管理体制の抜本的な改善が、下記2.(5)により提出される業務改善計画の実施状況によって確認されるまでの間、保険業法第98条第2項及び第123条第1項の規定に基づく認可の申請並びに同条第2項の規定に基づく届出に関する業務を停止すること。
2.保険業法第132条第1項の規定に基づく処分(業務改善命令)の内容
(1)ガバナンスの改善・強化
@意思決定プロセスやガバナンスの抜本的な改革を実現するための経営体制を構築すること。
A総代会の運営方法の抜本的な改革を行うこと。
B内部監査部門の抜本的な改善・強化を図ること(スタッフ、監査方法の充実・強化を含む)。
(2)契約者保護
@真に公正かつ的確な審査体制、手続きの確立を含め、保険金等の支払管理態勢を抜本的に見直すこと。
A苦情対応・処理に関する権限、不祥事件の調査・処理機能を各々一元化するなど、苦情対応・処理態勢及び不祥事件処理態勢の抜本的な見直し・強化を図ること。
B顧客保護、顧客利便を損なうような、体制・規定等の不備がないかどうかの総点検を実施した上で、問題のあるものについては直ちに是正を図ること。また、契約者保護・利便に直接関わるような各部において、毎年運営方針を作成・明らかにするとともに、同運営方針の実施状況の評価・公表の実施を行うこと。
C告知義務違反教唆、無断契約、早期解約・失効契約等の不適切な保険募集行為を防止するための保険募集管理態勢の抜本的な見直し・改善を行うこと。
D保険金部、法務部の組織態勢の抜本的な見直し・刷新を図ること。
(3)代理社に対して、抜本的な管理・監督の強化を図ること。
(4)上記の業務停止命令、業務改善命令に至るようになった問題等の原因となった役職員の責任を明確化すること。
(5)上記(1)から(4)まで並びに、検査結果及び当局の報告徴求命令に応じて提出された報告書に記載された事項に関して、平成17年11月18日までに、具体策及び実施時期を明記した業務改善計画を提出すること。この改善計画には、計画実施のための明確な体制及び責任分担をあわせて記述すること。
(6)業務改善計画の実施完了までの間、計画の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、改善計画提出後6ヶ月が経過するまでについては1ヶ月毎に、それ以降については3ヶ月毎に報告すること。
 
V.代理社については、平成15年の旧明治生命に対する金融庁検査等を受けて、募集管理について、同社及び代理社の共同で「代理社改善計画」を策定・実施するなど対応を図ってきたところであるが、その後も当局に報告すべき不祥事件届出がなされていないなどの事実を踏まえて発出した保険業法第128条第1項に基づく当社からの報告によると、以下のような不適切な行為が認められる。
1.平成9年3月に取り扱った法人との保険契約に関し、代理社の取扱募集人が当該法人に対して特別の利益の提供を行い、代理社は当該法人に特別の利益の提供にあたる金員を送金した(取扱募集人の行為は保険業法第300条第1項第5号違反)。
 また、代理社は、特別の利益の提供の事実を把握したにもかかわらず、適時的確な調査及び不祥事件届出を行う当社への報告等の適切な対応を怠った(当社の不祥事件届出の未提出は保険業法第127条第1項第8号違反)。
2.平成11年8月に代理社が取り扱った法人との保険契約に関し、代理社の取扱募集人が特別の利益の提供を行ったところであるが、この契約を成立させるために、代理社の部長職3名、次長職1名、課長職3名を含む計11名の役職員が組織的に申込書や告知書等の代筆行為に関与していた(保険業法第307条第1項第3号に該当)。
 また、代理社は、当該不適切行為の存在の可能性につき認識したにもかかわらず、適時的確な調査等の適切な対応を怠った。
3.平成15年の旧明治生命に対する金融庁検査等を受けて、「代理社改善計画」を策定したが、上記1.及び2.に見られるように、これらの対応策は実効性を欠いていた。
 
W.このため、28日、代理社に対し、保険業法第307条第1項及び第306条の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。
1.保険業法第307条第1項の規定に基づく処分(業務停止命令)の内容
 平成17年11月4日から平成18年5月3日までの間、全ての業務の停止(ただし、明治安田生命の代理社への経営監視機能が発揮される態勢となり、代理社における経営管理態勢の抜本的な改善が下記2.(6)により提出される業務改善計画の実施状況により確認される場合には、それまでの間。)
2.保険業法第306条の規定に基づく処分(業務改善命令)の内容
 適切な業務運営を確保するため、以下の観点から、法令等遵守態勢及び内部管理態勢を確立・強化すること。
(1)組織のあり方を含めた、法令等遵守態勢及び内部管理態勢の抜本的な見直しを図ること。
(2)コンプライアンスの企業風土を醸成させるための徹底的な研修の実施及びその後の定期的なフォローアップ研修の実施を図ること。
(3)法令違反等行為にかかる実効的な調査態勢と適切な報告のための態勢を構築すること。
(4)代理社において同社による実効的な牽制の効く態勢を整備すること。
(5)上記の業務停止命令、業務改善命令に至るようになった問題等の原因となった役職員の責任を明確化すること。
(6)上記(1)から(5)までに関して、平成17年11月18日までに具体策及び実施時期を明記した業務改善計画を提出すること。この改善計画には、計画実施のための明確な体制及び責任分担をあわせて記載すること。
(7)業務改善計画の実施完了までの間、計画の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、改善計画提出後、1ヶ月毎に報告すること。


●生保全社の不払再検証、明治安田生命が突出(05年10月28日)
 金融庁は生保39社の保険金不払事案等の報告徴求結果を公表。集約の結果、明治安田生命の不払が突出していたことが判明。
<不払事案再検証結果の概要>
1.報告徴求の概要
 全ての生命保険会社(39社)より、(1)平成12年度から平成16年度までの間の保険金・給付金(保険金等)の不払事案について、各年度毎に法令、当時の募集状況、約款及び事業方法書等に照らし、真に適正であったか否かの再検証の結果、(2)保険金等支払に関する重要な事項の決定等についての経営陣の関与の状況等、支払管理態勢の再点検の結果について、9月30日までに報告が提出された。
2.不払事案に係る再検証の結果
(1)各社よりの報告
明治安田生命以外の38社のうち、再検証の結果、31社より不適切な不払と認められる事案の報告があった。それらの事案の件数及び内容を38社と明治安田生命に区分して整理した概要は以下のとおり(@明治安田生命、A生保38社合計、構成比は概数値)。
 不適切な不払の件数は明治安田生命の件数が突出しており、38社合計した件数より多い。▽保険金:@503件、A70件、▽給付金:@550件、A365件
 不払件数に占める不適切な不払の比率についても、明治安田生命が突出している。▽保険金:@2.38%、A0.09%、給付金:@2.85%、A0.03%
 不適切な不払の内容で、保険金について事由別に見ると、明治安田生命の詐欺無効・重大事由解除が突出している。▽保険金:詐欺無効@35%、重大事由@5%、支払事由非該当@29%、A31%、免責事由該当@14%、A27%、▽告知義務違反解除@12%、A33%
 給付金について事由別に見ると、明治安田生命の重大事由解除が突出している。▽給付金:詐欺無効@5%、A3%、重大事由解除@24%、支払事由非該当@44%、A52%、告知義務違反解除@15%、A33%
 不適切な不払の年度別推移を見ると、明治安田生命では平成13年度から件数が急増。一方、38社合計の動向を見ると、概ね50件から100件程度で横ばい。
(2)不適切な不払の発生原因
不適切な不払の発生原因について、不払事由区分を組み合わせて分析したところ、明治安田生命と38社では、内容面でも以下のような相違があることが認められた。
 ▽明治安田生命:詐欺無効の不適切な適用や約款等に基づく不払事由を拡大解釈して適用するなど、意図性に基づくもの。
 ▽38社合計:事実関係の調査確認不十分、事務的な確認不十分によるものが中心。
3.支払管理態勢の再点検の結果 
明治安田生命以外の38社から報告された再点検の結果を見ると、不適切な不払事案の発生に直ちにつながるような共通の問題点は認められなかったが、以下のような要改善点が認められた。 
@支払査定基準等の改定等に関する経営陣の関与:支払査定基準の改定等に関して、相当数の社において、例えば支払担当役員や部長限りで決定がなされるなど、取締役会等や他部門による検証が十分に行われていない。
A支払査定の過程における外部チェック機能:社外の法的専門家や学識経験者等もメンバーに加え、外部による支払査定の適切性をチェックする仕組みを設けている会社はない。
B不払状況の経営陣への報告:経営陣に当然報告されているべき不払状況について、取締役会等に全く報告がなされていない社が全体の四分の一を超えている。
C不払に関する苦情への適切な対応:支払担当部門への牽制機能に関して重要な役割を果たすべき不払や苦情への対応について、支払担当部門内部で処理している社が全体の三分の一を超えている。

●「金融サービス相談室」第2四半期相談等受付状況(05年10月27日)
 金融庁は「金融サービス利用者相談室」を開設した7月19日から9月30日までの間の質問・相談・意見等の受付状況、主な相談事例のポイント等を公表。
 金融庁は金融サービス利用者の利便性の向上と、寄せられた情報を金融行政に有効活用するため、金融サービス等に関する利用者からの電話・ホームページ・ファックス等を通じた質問・相談・意見等に一元的に対応する「金融サービス利用者相談室を7月19日に開設し、相談業務を開始した。利用者からの相談等については、専門の相談員が電話で対応。相談員からは、問題点を整理するためのアドバイスを行ったり、業界団体が設置している紛争処理機関等を紹介している。なお、寄せられた相談等の内容や処理状況等については、金融庁内の関係部局に回付し、検査・監督等における活用を促している。
<受付状況>
 7月19日から9月30日までの間に6,573件の相談等が寄せられており、一日あたり平均126件となっている。
(1)相談等の類型:質問・相談として寄せられたものが5,017件(76%)、意見・要望が892件(14%)、情報提供が512件(8%)、その他が152件(2%)。
(2)相談等の方法:電話による相談等が5,402件(82%)、ホームページが568件(9%)、ファックスが192件(3%)、手紙が345件(5%)、その他が66件(1%)。
(3)相談等の分野:預金・融資等に関するものが1,774件(27%)、保険商品等が2,487件(38%)、投資商品等が1,534件(23%)、貸金等が660件(10%)、その他が118件(2%)で、保険商品等に関するが最も多い。
<分野別の特徴>
 保険商品等に係る相談等の受付件数2,487件のうち、個別契約における顧客説明や個別契約の結果に関する相談等が1,239件(50%)あり、このうち保険金等の支払に関することが975件(39%)(うち告知義務に関することが106件(4%))となっている。その他、保険金等請求時における保険会社の対応に関すること、募集時等における保険会社側の説明態勢に関すること等となっている。
 業態別では、生命保険会社に関するものが1,189件(48%)、損害保険会社に関するものが1,022件(41%)、共済に関するものが129件(5%)、その他が147件(6%)。
金融行政一般に対する意見・要望等の受付件数118件のうち、行政に対する要望が59件(50%)となっているほか、一般的な質問が31件(26%)。
 相談等の中には、保険会社の営業員等の不適正な行為(不告知の教唆、保険料の立替、無断作成契約、名義借り等)に関する情報提供等、検査・監督上参考となる情報も寄せられている。これらの情報については、利用者全体の保護や利便性向上の観点から、必要に応じて当該金融機関に対してヒアリングを実施するなど、金融行政を行う上での貴重な情報として活用している。
<相談事例等とアドバイス等>
 利用者から寄せられた相談等の中で、よくある相談等やこれに対する相談室からのアドバイスは、以下のとおり。
@保険内容の顧客説明に関する相談等
【利用者からの主な相談事例】
▽保障内容等
・保険金を請求したところ、約款の免責事由に該当するため支払われないと言われた。契約時には、そのような説明は受けていない。
・2社の医療保険に加入しており、手術をしたところ、A社からは保険金が支払われたのに、B社からは支払われなかった。手術によっては保険金が出ない場合があるとはB社から聞いていなかった。
▽保険金額等
・20年前に契約した保険が満期となったが、契約時に説明があった満期時の受取金額が満額支払われない。
【アドバイス】
・商品の説明をよく聞き、内容を理解する。不明な点があれば必ず確認する。また、口頭の説明を聞くだけにとどまらず、約款やパンフレット等の商品説明資料で確認する。
・同じような保険商品であっても保険会社によって保障内容は異なることがあることに注意する。
・保険金額等の受取額について、保険契約期間中に変動することがあるもの(満期金、配当金など)は何かを確認する。また、その場合、どのように変動するのかも併せて確認する。
・保障内容について、メリットの説明だけ聞いて済ませるのではなく、どこまでが保障され、どのような場合には保障されないのかについても確認する。
・個別の契約に係るトラブルについては、保険会社から十分に説明を受け、保険会社とよく話しあう。それでも解決が図られない場合は、生命保険協会生命保険相談所又は日本損害保険協会そんがいほけん相談室に相談する。
A告知義務に関する相談等
【利用者からの主な相談事例】
▽事実の不告知
・入院歴があることを募集人に伝えたところ、告知しなくてよいと言われたのでそのまま契約したが、保険金請求時になって告知義務違反として保険金が支払われなかった。
・通院歴があったが告知を行わなかったので、保険会社から告知義務違反であると言われた。
▽保険契約の引受条件
・既往症を告知して保険契約したが、保険金請求時になって支払えないと言われた。
【アドバイス】
・保険加入時における告知書には正確に回答する。事実と相違した告知をすると告知義務違反となり、保険金が支払われないことがある。
・病歴等を告知した上で保険契約しようとする場合、特別な契約条件(免責事由の追加、保険料の割増等)がつく場合がある。病歴等を告知した上で保険会社が保険契約の引受を承諾した場合、どのような契約条件がついているのかを確認する。
・個別の契約に係るトラブルについては、保険会社から十分に説明を受け、保険会社とよく話しあう。それでも解決が図られない場合は、生命保険協会生命保険相談所又は日本損害保険協会そんがいほけん相談室に相談する。
B保険金の支払いに関する相談等
【利用者からの主な相談事例】
▽支払認定
・怪我で障害状態となったが、高度障害保険金が支払われない。
・120日間入院保険金が出るはずの保険契約で120日間入院したのに、60日分しか支払われなかった。
・自動車修理にかかった費用を全額払ってもらえない。
・自動車事故で自分に落ち度はないはずなのに、過失割合分として保険金額が減額された。
【アドバイス】
・個別の保険金等の支払いに関するトラブルについては、保険会社から十分に説明を受け、保険会社とよく話しあう。それでも解決が図られない場合は、生命保険協会生命保険相談所又は日本損害保険協会そんがいほけん相談室に相談する(金融庁では、個別の保険事故について、約款に定められた保障内容に該当するか否かや、支払われるべき保険金がいくらになるかの判断はしない)。


●少額短期保険業改正案でパブコメ募集(05年8月12日)
 金融庁は、少額短期保険業に関する保険業法施行令・保険業法施行規則等の改正案の骨子(案)を公表、意見を求める。9月22日17:00(必着)までに、氏名又は名称、住所、所属、理由を付記の上、郵便、ファックス、インターネットにより下記宛に応募する。金融庁では、寄せられた意見を踏まえて保険業法施行令・保険業法施行規則等の改正案を策定の上、当該改正案につきパブリックコメントに付す予定。
<意見の送付先>
金融庁総務企画局企画課保険企画室
▽郵便:〒100-8967 東京都千代田区霞が関3−1−1 中央合同庁舎第4号館
▽ファックス:03−3506−6244
▽ホームページ・アドレス:http://www.fsa.go.jp/
<保険業法施行令・施行規則等の改正案の骨子(案)の概要> 
1.保険業法等の一部を改正する法律の施行日:平成18年4月1日とする。
2.保険業の定義から除かれるもの:会社及び連結基準対象子会社等が従業員等を相手方として行うもの、専修学校又は一部の各種学校が生徒を相手方として行うもの等を規定。
3.少額短期保険業者が引き受けられる保険の保険期間及び保険金額の上限
(1)保険期間及び保険金額の上限
@保険期間:損害保険2年、生命保険・医療保険1年
A保険金額:疾病による高度障害・死亡300万円、疾病・傷害による入院給付金等60万円、傷害による高度障害・死亡600万円、損害保険1000万円、等
(2)少額短期保険業者が一人の被保険者について複数の保険契約を引き受ける場合、当該一人の被保険者に係る上記(1)Aに掲げる保険の区分ごとのすべての保険金額の合計は、それぞれの区分に定める金額を超えてはならない。また、少額短期保険業者が一人の被保険者について引き受けるすべての保険契約に係る保険金額の合計額は1000万円を超えてはならない。ただし、特に保険事故の発生率の低いものとして特別に規定する保険の保険金額の特例的取扱い等について、その必要性の有無も含め引き続き検討。
(3)経過措置により、施行日から7年間、既存事業者が、超過部分を再保険に出すことによって引受けを行うことができる保険金額の上限は、(1)Aに掲げる保険の区分に応じ、原則として、それぞれの区分に定める金額の5倍程度を予定。
4.少額短期保険業者の対象となる事業規模:年間収入保険料(再保険に付した際に再保険会社から収受する手数料を含み、再保険料を控除。)で50億円未満とする。
5.最低資本金、供託金等:最低資本金、業務開始時の供託金の額については、それぞれ1000万円とし、供託金は保険料収入の増加に応じて段階的に積み増し(正味収入保険料の100分の5)とする。
6.一の保険契約者に係る保険金額の制限:少額短期保険業者が一の保険契約者について引き受けるすべての保険契約に係る保険金額の合計額の上限は1000万円とする。ただし、一の保険契約者について複数の被保険者がいる保険契約のうちの一部のものの特例的取扱い等について、その必要性の有無も含め引き続き検討。
7.業務運営に関する措置:保険募集に際して、少額短期保険募集人が保険金の削減払いを行う場合があること、セーフティネットの対象外であることを記載した書面の交付により説明を行うこと、重要な事項を記載した書面の交付その他適切な方法により説明を行うこと等の措置を少額短期保険業者が講じなければならないこととする。
8.ディスクロージャーの内容:少額短期保険業者についても、保険会社並みのディスクロージャーを求めることとする。(資本金等の額が3億円以上の少額短期保険業者については外部監査を義務付け)
9.責任準備金の積立て:責任準備金については、契約者保護の観点から保険会社並みの積立てを求めることとするが、少額短期保険業者が引受け可能な保険に対応して計算区分を規定。なお、既存事業者のための激変緩和措置として、一定の経過措置による対応を認めるかについては、引き続き検討。
10.支払余力基準:保険会社と同様、保険金等の支払余力の充実の状況を示す比率が200%を下回った場合に、監督上必要な措置を命ずることができる仕組み(早期是正措置)を設ける。
11.その他:登録申請の手続、供託の手続、子会社の範囲等の制度の細目を内閣府令において定める。


●三井生命に業務改善命令発出(05年6月10日)
 金融庁は10日、三井生命に対する次の行政処分を発表。
<不正行為の内容>
 金融庁の検査等により、以下のような事実が認められた。
▽同社においては団体定期保険、団体年金保険及び団体扱いの保険に関して、団体からの脱退会員に対する処理体制が不十分で事務手続が行われていなかったこと等により、団体保険等の被保険者あるいは契約者の対象とならない者との員外契約が行われていた。員外契約は、団体保険等において事業方法書に定める契約条件(被保険者又は保険契約者の対象範囲)と異なる者を被保険者あるいは契約者として契約を締結することであり、これら員外の契約者等に対し団体向けの保険料を適用することとなるため、保険業法第300条第1項第5号で禁止する保険料の割引に該当する。
▽同社においては過去の行政処分(平成12年6月:子会社の代理代行業務に関して、員外契約となる者に募集を行ったことに対してコンプライアンスの徹底等、業務改善命令を発出。平成14年4月:団体からの脱退に伴い員外の取り扱いとなる者と契約を継続していたこと等が認められたことに対して、改善措置を講ずるよう報告徴求)を受けて員外契約の適正化を担当する部門を設けたものの、団体保険等における員外契約の排除のためのチェック体制が十分に機能していないこと、員外契約が確認されている団体以外にも員外契約が発生する可能性が高いことを予見していたにも関わらず、更なる管理強化策を講じていなかったこと等により、団体保険等において繰り返し員外契約を発生させている。
▽上記の員外契約の問題に関して、取締役会等経営陣は過去に行政処分を受けていながら、各担当部門に対し具体的な対策を指示していないなど経営管理上の適切な措置を講じていない。また、繰り返し員外契約を発生させたことに鑑み、適正な募集管理を行いうるような商品開発を行う商品開発体制の見直し、整備も行っていない。
<行政処分の内容>
 このため10日、三井生命保険株式会社に対し、保険業法第132条第1項の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。 
▽団体保険等について、契約の締結・更新の適否を含め契約内容の点検・確認体制を改善すること。また、団体保険等について、員外契約を繰り返し生じさせたことに関して役職員の責任を明確化すること。
▽各部門間の連携の確保等の員外契約を排除するための管理に係る施策の決定及び施策の実施状況のフォローアップについて、取締役会等の経営陣が関与する態勢を確立すること。
▽団体保険等に係る最近の社会状況の変化に対応し、団体保険等における被保険者等の適正な募集管理を確保できるような商品開発を行う体制を整備すること。
▽実効性のある法令等遵守体制を構築し、全役職員に対して法令等の遵守について教育・指導の充実・強化を図ること。


●窓販全面解禁に向け弊害防止措置見直し府令案公表(05年6月10日)
 金融庁は6月10日、07年度銀行窓販全面解禁に向けての弊害防止措置の見直しを骨子とする、「保険業法施行規則及び銀行法施行規則等の一部を改正する内閣府令等」(案)を取りまとめ、公表。第1・2・3分野の一部商品は今年末に追加解禁される。金融庁は平成17年7月3日(日)17:00まで同内閣府令案に関する意見を募集。
<内閣府令案の概要> 
T、趣旨
 金融審議会第二部会報告(平成16年3月)、規制改革・民間開放推進3か年計画(平成16年3月閣議決定)等を踏まえ、銀行等による保険募集について、弊害防止措置の強化等を行うとともに、その取り扱うことができる保険商品の範囲を拡大することとする。
U、内閣府令案の概要
1.弊害防止措置の見直し
(1)保険会社が銀行等に保険募集を行わせるときは、銀行等への委託に関する方針を定めるとともに、銀行等の保険募集の状況を的確に把握するための措置等を講じなければならないこととする。(保険業法施行規則(以下「規則」という。)第53条の3の3、事務ガイドライン1−15−1関連)
(2)保険募集を行う銀行等が銀行業務等で知り得た顧客の非公開情報を顧客の同意なく保険募集に利用することを制限する措置について、その対象となる非公開情報の定義や顧客の同意を得る時期及び方法を明確化する。(規則第211条第2項第1号、第211条の2第2項第1号、第211条の3第2項第1号、事務ガイドライン1−15−2関連)
(3)保険募集を行う銀行等は、引受保険会社の商号等の明示、保険契約に関する情報の提供等に関する指針を定め、公表し、その実施のために必要な措置を講じなければならないこととする。(規則第211条第2項第2号、第211条の2第2項第2号、第211条の3第2項第2号、事務ガイドライン1−15−3関連)
(4)保険募集を行う銀行等は、保険募集に係る法令等の遵守を確保するため、営業所又は事業所ごとに責任者を、本店又は主たる事務所に総括責任者を配置しなければならないこととする。(規則第211条第2項第3号、第211条の2第2項第3号、第211条の3第2項第3号関連)

2.新たな弊害防止措置の導入
(1)銀行等が新たに取り扱うことができる保険契約(以下「新規解禁保険契約」という。)の募集を行う場合、以下の者(以下「保険募集制限先」という。)を保険契約者又は被保険者として当該保険契約の募集を手数料を得て行ってはならないこととする。(規則第211条第3項第1号、第211条の2第3項第1号、第211条の3第3項第1号関連)
イ.事業資金の融資先である法人、その代表者及び個人事業主
ロ.事業資金の融資先である小規模事業者(常時使用する従業員の数が50人以下の事業者)の役員及び従業員
(2)新規解禁保険契約の募集を行う銀行等は、保険募集制限先を確認する業務を的確に遂行するための措置、保険募集に係る業務が銀行等のその他の業務に支障を及ぼさないようにするための措置等を講じなければならないこととする。(規則第211条第3項第2号、第211条の2第3項第2号、第211条の3第3項第2号、事務ガイドライン1−15−4関連)
(3)新規解禁保険契約の募集を行う銀行等は、あらかじめ顧客に対し、保険募集制限先を確認する業務に関する説明を書面の交付により行わなければならないこととする。(規則第234条第1項第9号関連)
(4)新規解禁保険契約の募集を行う銀行等は、事業資金の融資業務を行う使用人が保険募集を行わないことを確保するための措置を講じなければならないこととする。(規則第211条第3項第3号、第211条の2第3項第3号、第211条の3第3項第3号関連)
(5)新規解禁保険契約の募集を行う銀行等は、顧客が当該銀行等に融資の申込みをしていることを知りながら、当該顧客またはその密接関係者に対し保険募集を行ってはならないこととする。(規則第234条第1項第10号、事務ガイドライン1−15−5関連)
(6)銀行等の特定関係者(子会社、兄弟会社等をいう。)を通じた上記(1)及び(5)の規制に係る潜脱行為を禁止する。(規則第234条第1項第14号、第15号関連)

3.中小金融機関の特例
(1)営業地域が限定されているものとして金融庁長官が定める金融機関が、生命保険、第三分野保険の募集を小口(各分野で保険契約者一人当たりの保険金額が1000万円以下である場合をいう。以下同じ。)に限る場合には、(規則第211条第4項、第211条の2第4項、第211条の3第4項、金融庁告示第2条関連)
イ.上記2(1)ロに定める小規模事業者を、常時使用する従業員の数が20人以下の事業者とする。(規則第211条第3項第1号、第211条の2第3項第1号、第211条の3第3項第1号関連)
ロ.上記2(4)に定める措置を、金融庁長官が定めるより簡易な措置で代えることができることとする。(規則第211条第3項第3号、第211条の2第3項第3号、第211条の3第3項第3号、金融庁告示第1条関連)
(2)協同組織金融機関は、生命保険、第三分野保険の募集を小口に限る場合には、事業資金の融資先である会員又は組合員に対しても保険募集を行うことができることとする。(規則第211条第5項、第211条の2第5項、第211条の3第5項関連)

4.銀行等が募集できる保険契約の範囲の拡大
(1)6か月程度の準備期間の後、銀行等は以下の保険に係る契約の募集を行うことができることとする。(改正府令第1項関連)
イ.一時払終身保険、保険期間10年以下の平準払養老保険(法人契約を除く。)及び一時払養老保険(規則第211条第1項第4号関連)
ロ.自動車保険以外の個人向け損害保険(事業関連の保険を除く。)のうち、団体契約等でないもの又は積立保険(規則第211条の2第1項第6号関連)
ハ.積立傷害保険(規則第211条第1項第5号、第211条の2第1項第7号関連)
(2)上記(1)から2年後に、銀行等は全ての保険契約の募集を行うことができることとする。ただし、銀行等による保険募集の実施状況や弊害防止措置の実効性を検証し、保険契約者等の保護のために必要な場合には、銀行等が全ての保険契約の募集を行うことができる期日を見直すこととする。(改正府令第1項、第3項関連)
(3)銀行等が既に募集を行うことができるとされている保険契約について、以下のような要件の緩和を行うこととする。
イ.住宅ローン関連の信用生命保険、長期火災保険及び債務返済支援保険の付保対象である店舗併用住宅について、専ら事業の用に供される部分の床面積が1/2以下とする制限を緩和する。(規則第211条第1項第1号、第211条の2第1項第1号、第2号関連)
ロ.被保険者の生存に関する保険で、払い込まれる保険料の総額等により保険金等の額が定められるものについて、年金以外の保険金の支払いを約するものも認めることとする。(規則第211条第1第2号関連)

5.その他
 その他所要の規定の整備を行うこととする。(銀行法施行規則第17条の3第2項第3号の4、長期信用銀行法施行規則第4条の5第2項第3号の4、信用金庫法施行規則第10条の5第2項第3号の4、協同組合による金融事業に関する法律施行規則第3条の2第2項第3号の4等関連)


●無認可共済規制など保険業法の一部改正案を国会提出(05年3月11日)
 金融庁は3月11日、第162回国会に保険業法等の一部を改正する法律案を提出。いわゆる無認可共済への業法規制と保険セーフティネットの見直しを骨子とするもの。現在、任意団体等で特定の者に対して保険業類似の事業を行うものについては法規制や監督官庁がないが、改正案は、@契約者保護の観点から、保険業法の適用範囲を見直し、特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業に原則として保険業法の規定を適用、A一定の事業規模の範囲内で少額短期の保険のみの引受けを行う事業者について、登録制等の新たな規制の枠組み(=少額短期保険業者)を創設、B既存の事業者には2年間の移行経過期間を設ける、C法施行後5年を目処に少額短期保険業制度等について検討を行い、必要な措置を講ずる――内容。
 保険のセーフティネットの見直しは、現行は生命保険・損害保険とも原則一律の補償で、生命保険の財源措置は17 年度までとなっているが、改正案は、@破綻時の補償率を、契約種類・内容等に応じて見直す、A生命保険セーフティネットの財源負担を見直した上で、政府補助規定を3年間延長――するもの。なお、船主相互保険組合法の一部改正も行う。
<少額短期保険業者への規制の骨子>(カッコ内は保険会社への業法規制)
▽参入要件等:登録制(免許制)
▽最低資本金:1000万円(プラス一定の供託)程度(10億円)
▽取扱商品:少額、短期、掛捨てに限定(無限定)
▽資産運用:安全資産=預金、国債(原則自由=株式、不動産、融資等)
▽その他情報開示:募集規制、責任準備金、検査・監督等(同)
<セーフティネット見直しの骨子>
(1)保険契約の特性に応じた補償の見直し
現行の@生命保険と損害保険で同じ補償の方式(契約継続を重視)、A原則として一律に責任準備金の90%補償の規定を、改正案では、@自動車保険等の損害保険に関し、他の保険会社への乗換えを促す補償の方式を導入(破綻後3ヶ月は保険金100%補償)、A資金援助等による補償率は契約種類、予定利率その他の契約内容を勘案して決定(生保の高予定利率契約は85%程度〜90%)、B保険金等が運用実績に連動する保険契約は、他契約と別の管理・取扱いとする(100%保全を可能に)――もの。
(2)生命保険契約者保護機構に関する財源措置の見直し
 これまでの5000億円規模の時限的な措置は廃止し、原則として、生命保険契約者保護機構の借入可能枠の範囲内で保険会社の負担金により賄う制度とする。政府補助の仕組みも当面は存置する(発動要件は、@平成18年度から20年度までの生命保険会社の破綻。A予算で定める金額の範囲内。B資金援助等の費用を賄うための借入れにより、同機構の借入残高
が一定額(4600億円)を超える場合、かつ、その費用を同機構の会員保険会社の負担金のみで賄うとしたならば、会員保険会社の財務状況を著しく悪化させ、保険業の信頼性維持が困難となり、ひいては国民生活又は金融市場に極めて重大な支障が生ずるおそれがある場合)。
 法施行後3年以内に、資金援助等の費用の負担のあり方、政府補助規定の継続の必要性等について検討する。


●金融庁、明治安田生命を行政処分(05年2月25日)
 金融庁は25日、明治安田生命に対し、保険業法第132条第1項及び第133条の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。

<行政処分の内容> 
T、明治安田生命については、保険業法第128条第1項に基づく報告により、以下のとおり、法令等違反及び内部管理態勢上の問題が認められた。 
1.同社からの報告内容によれば、生命保険募集人の募集時の説明状況、告知義務違反の内容などを十分考慮せず、例えば以下のような事例について詐欺・錯誤を広く適用し、本来支払うべき死亡保険金を支払っていなかった。
 ○確定診断・病名告知がないことにより被保険者に病気の認識がないなど、被保険者に欺罔の意思を認めることが困難なもの。
 ○告知義務違反のあった事実(被保険者の職業について他社の生命保険募集人であることを秘匿したこと)が、重要事項の告知義務違反とはいえず、詐欺を問うことが困難なもの。
 ○生命保険募集人が被保険者に不告知を勧めているなど、不適切な募集行為が認められるもの。
 ○商品特性(一時払養老保険などの貯蓄性商品)を踏まえれば、被保険者に欺罔の意思を認めることが困難なもの。
 これらは保険金の支払事由の適用を事業方法書・普通保険約款で定められたとおりに行っていなかったものであり、保険業法第4条第2項第2号に掲げる事業方法書、同項第3号に掲げる普通保険約款に定めた事項のうち特に重要なものに違反していたものと認められた(保険業法第133条第1号に該当)。
2.生命保険募集人が重要事項の説明を行っていない、不告知を教唆するなど、保険業法第300条第1項第1号及び同項第3号に違反する保険募集を行っていたものと認められた。
 さらに、同社は、生命保険募集人が法令違反の募集行為を行っていたことを把握しながら、保険業法第127条第1項第8号に基づく不祥事件届出を、不祥事件の発生を知った日から30日以内に行っておらず、同条に違反していたものと認められた。
3.また、次のような内部管理態勢上の問題も認められた。 
@保険金支払部門(一部事案については法務部門も)においては、保険金の支払いの可否を検討するに当たって、違法な保険募集が多数存在することを把握していたにもかかわらず、関係部門と連携をとらず、改善に向けた取組みを怠っていたものと認められた。
A保険金受取人に詐欺適用を知らせる通知文において、約款上の条文番号だけを記載し、詐欺無効を適用したことをあいまいにする、告知義務違反とは関係ない病歴等を多数列挙するなど、不十分、不適切な説明を行っていたことが認められた。
B保険金の支払いは保険会社の基本的かつ最も重要な機能であるが、これに係る重要事項である詐欺・錯誤の適用について、取締役会等の経営陣によるチェックが何ら行われていないなど、経営管理態勢が不十分であったものと認められた。
 また、告知義務違反に詐欺・錯誤を広く適用するとの方針について、保険金支払部門と保険募集部門の連携が全くとられておらず、保険募集部門において何らの対応も行われなかったことが認められた。

U、このため、本日、明治安田生命保険相互会社に対し、保険業法第132条第1項及び第133条の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。 
1.保険業法第133条の規定に基づく処分(業務停止命令)の内容
 保険業法第3条第4項の免許に係る保険のうち、団体保険及び団体年金保険を除く保険契約の締結及び保険募集(自動継続による契約の更新を除き、生命保険募集人に委託しているものを含む。)を平成17年3月4日から平成17年3月17日までの間停止すること。
2.保険業法第132条第1項の規定に基づく処分(業務改善命令)の内容 
@保険約款及び法令等に従い、迅速かつ適切な保険金支払いを行うための保険金支払管理態勢を確立すること。また、今回生じた不適切な保険金不払いに関して役職員の責任を明確化すること。
A保険募集時に適切な説明を行う及び保険契約者・被保険者から正しい告知を受けるための施策を含めた保険募集管理態勢を確立すること。また、不適切な保険募集を行った者及び管理責任者を厳正に処分するよう適正な人事考課を確立すること。
B告知義務違反に詐欺を適用する場合には、適用理由及びその適用の基礎とした証拠(入手方法も含む。)などについて、保険契約者等に対して十分に説明を行い得る態勢を整備すること。また、告知義務違反があることが判明した場合の会社の対応方針を明確化し、顧客に対して周知すること。
C保険契約者等の保護に係る重要な事項の決定においては、取締役会等の経営陣が関与する態勢を確立すること。
D実効性のある法令等遵守体制を構築し、全役職員に対して法令等の遵守について教育・指導の充実・強化を図ること。

●金融庁、第三分野の責準積立ルール検討チームを設置(05年2月24日)
 金融庁は、いわゆる第三分野の保険商品について財務関連のルール整備を図るため、「第三分野の責任準備金積立ルール・事後検証等に関する検討チーム」を監督局内に設置し、24日、第1回検討会を開催。6月を目途に報告書をまとめる予定。
<検討チーム設置の趣旨と検討の進め方>
<設置の趣旨>
▽ルール整備等については、先般発表の「金融改革プログラム」においても触れられている。
▽少子高齢化社会が進行するなかで、これまで死亡保障中心であった保険契約者のニーズが医療や介護といった生存保障へ変化していることに伴い、保険会社の収益構造にも変化がみられる。
 このため、医療や介護といったいわゆる第三分野の保険商品について、適切なリスク管理の下で適切に保険金等が支払われるよう責任準備金の積立ルールや事後検証ルール等を整備し、保険会社における財務の健全性の確保を図っていくことが必要と考えられる。
<検討の進め方>
 生損保業界の実務者、アクチュアリー、公認会計士、有識者等のメンバーからなる検討チームにおいて、第三分野の現状と問題点等について意見交換を行い、平成17年6月を目途に第三分野に係る財務関連ルールのあり方に関する報告書を取りまとめる予定。
<検討チームメンバー>
▽座長:小野尚(金融庁監督局保険課長)
▽座長代理:天谷知子(金融庁監督局保険課審査室長)
▽メンバー:安達良喜(明治安田生命企画部調査グループ課長)、伊藤和平(三井住友海上経営企画部次長)、植村信保(格付投資情報センター、シニアアナリスト)、黒滝学治(損保ジャパン個人商品業務部傷害医療グループグループリーダー)、清水博(日本生命商品開発部担当部長)、田久資(第一生命主計部数理課長)、長舟貴洋(東京海上日動経理部参事)、鍋井勝(AIU、A&Hライン数理担当アシスタントバイスプレジデント)、橋上徹(新日本監査法人、公認会計士)、深尾光洋(慶應義塾大学商学部教授)、山田剛(アメリカンファミリー生命商品数理部数理グループ課長)、=以下、金融庁監督局保険課スタッフ=坂本忠弘、五十里篤、渡邊学、椋正寛、中林慎治、中村博光

●金融審、生保セーフティネット見直し(05年2月16日)
 金融審議会金融分科会第二部会の第24回会合が2月16日開かれ、04年12月14日提出のWG報告書(既報)に基づき、生命保険の保険契約者保護制度の見直し案について審議。
 金融庁による制度見直し案の骨子として、安定的な財源制度の確立について、@生保会社の経営状況・運用環境は改善している、A原則として保険会社からの拠出金により賄われる安定的な財源制度を確立する、B当面3年間については万一の場合に備えて特例的な政府補助も含めた財源の確保が必要とし、また、制度の合理化・効率化の面では、@保険会社の破綻防止等のための取り組みの強化が必要(今後の対応として、新しい保険商品に係る責任準備金積立ルール等の整備、販売チャネルや保険商品の多様化に応じたモニタリング、ソルベンシー・マージン比率の算定基準の見直し、リスク管理、情報開示の充実等)、A補償の重点化を図る:一律の補償から契約の特性に応じた補償(特別勘定契約への対応、高い予定利率の契約への対応)などの視点が示された。
 中で、保険契約の特性に応じた補償のあり方として、特別勘定で経理される団体年金保険等(最低給付保証のないもの)について、厳格な分別管理を義務付けた上で責任準備金を削減しない取扱いを可能とする制度整備を行うとともに、保険契約者保護制度の補償対象外とする。高予定利率の契約について、保険契約者保護制度による責任準備金の補償率を他の契約よりも引き下げることとする案を指摘。
 高予定利率の契約に対する責準補償率の引き下げについては、@他の保険会社(の契約者)の負担軽減、破綻保険会社の契約者間の公平性、A破綻処理における予定利率の引下げ等により既に相当な負担を求めていること等に対する配慮(一定の率=3%を上回る利率部分を過去5年間にわたり半分とした場合の減少率に相当する率の引下げ、資金援助がない場合の弁済率を下限)の観点から見直す。
 ちなみに、米国では生保会社破綻時には、各州において「支払保証基金法人」が支払保証を行う。各州の法律のモデルとなるNAIC(全米保険長官協会)モデル法においては、「破綻前4年間の予定利率のうち、『ムーディーズ公社債平均利回り−2%』を超過する部分については、保証対象外」とされている。37州がモデル法と同様の条項を持つ。
 セーフティネットの財源に関しては、当初の業界負担枠4600億円は既破綻会社への資金援助(5380億円)で枯渇したため、新たに平成17年度までは業界負担枠1000億円+政府補助枠4000億円の5000億円の枠が設定されているが、これを18年度〜20年度は業界負担枠について制度創設時のルールに戻す(借入残高1970億円+18年度借入可能額2630億円=4600億円)とともに、資金援助が業界負担枠を越えた場合には政府補助を可能とする案を示した。


●金融審議会委員決まる(05年1月25日)
 1月25日付で内閣総理大臣より下記の金融審議会委員が任免発令された。
<金融審議会委員> 
▽慶應義塾大学経済学部教授 池尾和人(再) ▽東京大学大学院法学政治学研究科教授 岩原紳作(再) ▽(株)日本総合研究所調査部主席研究員 翁百合(再) ▽中央大学研究開発機構教授 貝塚啓明(再) ▽慶應義塾大学経済学部教授 嘉治佐保子(再) ▽フューチャーシステムコンサルティング(株)代表取締役社長 金丸恭文(新) ▽東京大学大学院法学政治学研究科教授 神田秀樹(再) ▽日本労働組合総連合会総合政策局長 木村裕士(再) ▽日本経済研究センター会長 小島明(新) ▽ダイヤル・サービス(株)代表取締役社長 今野由梨(新) ▽明治学院大学経済学部教授 斎藤静樹(再) ▽(株)イー・ウーマン代表取締役社長 佐々木かをり(新) ▽住友商事(株)代表取締役専務執行役員 島崎憲明(再) ▽新日本製鐵(株)常任監査役 関哲夫(再) ▽生活経済ジャーナリスト 高橋伸子(再) ▽21世紀政策研究所理事長 田中直毅(再) ▽東京大学大学院経済学研究科教授 西村C彦(再) ▽スタンダード&プアーズディレクター 根本直子(新) ▽中央大学法科大学院教授 野村修也(新) ▽埼玉大学経済学部非常勤講師 原早苗(再) ▽(株)ソフィアバンク副代表 藤沢久美(新) ▽(株)野村資本市場研究所執行役 淵田康之(再) ▽中央大学総合政策学部教授 堀内昭義(再) ▽早稲田大学ファイナンス研究センター教授 水上慎士(新) ▽東京大学大学院法学政治学研究科教授 山下友信(再) 

●金融庁、2年間の金融改革ロードマップを公表(05年12月24日)
 金融庁は投資サービス法や保険取引ルールの整備、金融コングロマリット法などを視野に入れた金融改革プログラム「金融サービス立国への挑戦」を公表。今後2 年間の「重点強化期間」に実行すべき改革の道筋(ロードマップ)となるもの。

<「金融サービス立国への挑戦」の内容>

1.はじめに
 わが国の金融システムを巡る局面は、「金融再生プログラム」の実施等により不良債権問題への緊急対応から脱却し、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面(フェーズ)に転換しつつある。「金融システムの安定」を重視した金融行政から、「金融システムの活力」を重視した金融行政へ転換すべきフェーズと言っても良い。また、金融のIT 化が進むとともに、経済社会全体においてもインターネット取引の比重が高まっている。今後の少子高齢化、経済のグローバル化の更なる進展に的確に対応し、わが国経済の持続的成長に資するためにも、構造改革の一環としての金融改革の具体的プログラムを以上のようなフェーズの転換に即して考える必要がある。
 将来の望ましい金融システムのあり方としては、金融商品・サービスの利用者が、いつでも、どこでも、誰でも、適正な価格で、良質で多様な金融商品・サービスの選択肢にアクセスできる、ということが考えられる。また金融商品・サービスを提供する金融機関等にとっても、便利でかつ余分なコストをかけずに、その能力を十分に発揮し収益性を上げつつ、利用者を満足させることができる金融システムが理想である。換言すれば、利便性、価格優位性、多様性、国際性、信頼性に優れ、利用者が手軽に分かりやすく自分の望む金融商品・サービスを安心して受けられるような、利用者の満足度が高い金融システムと言うことができる。
 このような金融システムを作っていく上で、極めて大きな役割を果たすのがIT である。インターネット等の新たなチャネルを通じた便利なアクセス、早くて効率的なサービスの提供及び資金決済、正確で信頼できる情報の迅速な提供など、IT によって利用者の満足度を向上させる余地は非常に大きい。今後、IT の戦略的活用により、販売チャネルの多様化等に伴う利便性の向上、事務コストの低減等を通じた金融機関の収益性の向上等が進展し、望ましい金融システムが実現していくことが期待される。
 これからの金融行政は、「安定」から「活力」へというフェーズの転換を踏まえつつ、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムを「官」の主導ではなく、「民」の力によって実現するよう目指す必要がある。我々はこのような取組みを敢えて「金融サービス立国への挑戦」と名付け、そのためのプログラムをここに策定した。「金融サービス立国」の実現に向けて、金融行政が今後2 年間の「重点強化期間」に実行すべき改革の道筋(ロードマップ)を示すのが、このプログラムの目的である。
こうした改革を通じて、わが国金融市場が国際的に見て魅力の高いものとなり、間接金融に偏重していたわが国金融の流れ(マネーフロー)が、直接金融や市場型間接金融を活用した国民に多様で良質な金融商品・サービスの選択肢を提供できるものに変化していけば、資産運用手段が多様化・効率化し、「貯蓄から投資へ」の流れが加速される。これにより、銀行にリスクが過度に集中する構造が是正され、リスクに柔軟に対応できる経済構造の構築にも資するものと考えられる。
このプログラムにおいては、以下の5 つの視点から、今後進めるべき改革の内容を整理した。
@民間活力を引き出し利用者利便を向上させるための制度設計と利用者保護ルールの整備・徹底(利用者ニーズの重視と利用者保護ルールの徹底)
AIT の戦略的活用等による金融機関の競争力の強化及び金融市場インフラの整備
B国際的に開かれた金融システムの構築と金融行政の国際化
C活力ある地域社会の実現に寄与する金融システムの構築(地域経済への貢献)
D市場規律を補完する信頼される金融行政の確立
「金融サービス立国」を「民」の力によって実現するためには、フェーズの転換を契機として、今後における金融行政当局の基本的な姿勢を明確にしておく必要がある。
今後の金融行政当局の基本的姿勢としては、
@金融行政は、市場規律を補完する審判の役割に徹すること、
Aそのため、現行規制を総点検し、不要な規制を撤廃するとともに、金融行政の行動規範(code
of conduct)を確立すること、
Bその一方で、利用者が不測の損害を被ることのないよう、必要な利用者保護ルールの整備と徹底を図ること、が求められる。
 また、金融行政には、行政の一層の透明化とともに、IT の活用による電子政府の推進を通じた行政の利便性向上と効率化においても先進的な役割を果たすことが求められる。
 本プログラムの施策の実施については、今年度内にできる限り速やかに具体的なスケジュールとして「工程表」を策定し、公表する。
 また、このプログラムに盛り込まれた改革が着実に実施されることにより、金融商品・サービスの利用者にとって望ましい金融システムが実現していくよう、フォローアップを行う。その際、例えば国民の資産運用の選択肢が増大した結果、個人の金融資産が多様化しているか、国民の金融商品・サービスに対する満足度が向上しているか等をモニターする。

2.具体的施策
T.活力ある金融システムの創造


(1)利用者ニーズの重視と利用者保護ルールの徹底
◇多様で良質な金融商品・サービスの提供に向けた制度設計
 利用者ニーズに応じて多様で良質な金融商品・サービスが適時適切に提供されるようにするため、金融業への新規参入を促進し、公正なルールの下で金融業における健全な競争を促す。また、金融機関の製販分離や販売チャネルの拡大を容易化し、多様で良質な金融商品・サービスをどこでも便利かつタイムリーにワンストップで購入できるようにするなど、利用者利便の向上を図る。
○金融商品・サービスの提供・販売体制の充実
・金融商品・サービスの販売チャネルの拡大、保険商品の多様化と価格の弾力化の推進
・公正な競争を促す適正な比較広告の容認
○銀行等の参入形態の多様化等
○金融機関の店舗等施設の有効活用
○不動産担保・保証に過度に依存しない資金調達手法の拡充
○市場参加者のニーズに応え、健全な競争と新しいビジネスの開拓を促すための現行規制の総点検及び規制緩和の推進(金融商品・サービスや金融機関・ノンバンクに対する規制のあり方の見直し等)
◇金融実態に対応した利用者保護ルール等の整備・徹底
金融実態に対応した利用者保護ルール等を整備するため、金融商品・サービスに関する全体的・統一的な取引ルールの策定や、個人情報の保護、金融犯罪の防止等に取り組む。
○「投資サービス法(仮称)」の制定
○保険取引ルールの整備等
・根拠法の無い共済の契約者保護ルールの導入、保険契約における適合性原則の遵守、保険広告表示のモニタリングの強化等
・ 保険契約者保護制度の見直し
○製販分離における業者の説明責任、販売責任の明確化
○金融商品・サービスにおける情報の有用性に配慮しつつ、情報の適正な保護を図る具体的な個人情報保護ルールの明確化
○ 偽造カード犯罪等の金融犯罪防止のための対策の強化・徹底
◇利用者保護のための情報提供・相談等の枠組みの充実
利用者への情報提供の充実により利用者と金融商品・サービス提供者との間の情報格差を埋めるとともに、利用者が理解し納得して取引ができる枠組みを整備する。
○利用者の目線に立った金融機関及び行政における相談・苦情処理体制、紛争処理制度の整備
・ 「金融サービス利用者相談室」の設置
・ 裁判外紛争処理制度の充実
○利用者のライフサイクルに応じ、身近な実例に即した金融経済教育の拡充
○行政における利用者の目線に立った広報の充実
○ 利用者の満足度を重視した金融機関経営の確立
◇ペイオフ解禁拡大の円滑な実施
17 年4 月のペイオフ解禁拡大を円滑に実施していくため、預金者の信頼確保に向け、以下の対応を採る。
○政策広報等を通じた制度の周知及び情報提供の浸透
○金融機関による情報開示の一層の充実
○検査・監督等を通じた金融機関の名寄せ等の対応確保

(2)IT の戦略的活用等による金融機関の競争力の強化及び金融市場インフラの整備
◇IT の戦略的活用
わが国金融機関のIT 投資が国際的に見て遅れ、IT コストが高止まりしている一方、インターネット取引の比重が増している現状を踏まえ、IT の戦略的活用を促す。これにより、利用者ニーズに即応した金融商品・サービスが誰にでも安く、速く提供されるようになることを目指す。
○技術革新の成果を積極的に享受し、金融インフラの利便性とコスト競争力の向上を実現するためのe-バンキングに関する法制の整備の検討
・電子的な資金決済・支払い、電子的金融取引に関する法制の整備に向けた検討
○金融機関のIT 投資プロセスの透明性確保、コストパフォーマンス及びリスクマネジメント能力の向上を促す方策の検討
・IT 活用状況の実態把握と、システム構築に関する金融機関間の情報交換の実施(IT キャラバンの実施等)
・IT 投資についての外部専門家の評価の導入等による競争原理の活用を通じたローコスト・オペレーションの促進
・IT の活用を前提としたチャネル戦略・店舗戦略等、顧客の利便性向上に資するシステムの構築
◇市場機能の充実と市場の信頼性の向上
競争原理の下で市場の持つ可能性を最大限活用する金融システムを構築し、自己責任による資産形成の要請など幅広い利用者のニーズに応えていく観点から、情報開示の充実等を通じて直接金融・市場型間接金融に対する利用者の信頼を高め、市場機能を活用した資金仲介・資源配分の発展を促す。
○「投資サービス法(仮称)」の制定(再掲)
○集団投資スキームの整備
○適格機関投資家の範囲の見直し等、私募市場の活性化
○長期投資の促進に向けた証券税制の見直し等、金融資産の有効活用に資する金融税制改革の一層の推進
○企業開示制度の一層の充実
・財務報告に係る内部統制の強化、ガバナンス情報の充実、四半期開示等
○監査法人における内部統制の強化や、非監査業務との利益相反防止等に向けた取組みの促進及び行政・公認会計士協会によるチェック(公認会計士・監査審査会による監査法人の検査を含む)
○市場行政当局の体制整備
・課徴金制度及び執行体制の強化、市場監視体制の一元化、自主規制機関との適切な連携等
◇金融機関のガバナンスの向上とリスク管理の高度化を通じた健全な競争の促進
金融機関の健全な競争と参入・退出を確保するためには、自浄作用の確保、情報開示の拡充、外部監査の実効性の確保等を通じ、金融機関の自主的・持続的な取組みによる経営力強化を促すことが不可欠である。また、このような市場規律を補完する行政の枠組みの整備とそれによるインセンティブ・ストラクチャーの構築が必要である。
○財務諸表の正確性、内部監査の有効性についての経営者責任の明確化
○金融機関の取締役の資質に関する規定(Fit and Proper 原則)の具体的な着眼点の明確化
○社外取締役、監査役、保険計理人等によるガバナンスの実効性確保
○市場規律の発揮に向けた金融機関の情報開示の一層の充実
○金融機関の社会的責任(CSR)に対応した取組みの促進
○金融業界自身による行動規範(code of conduct)の確立に向けた検討
○検査・監督による金融機関の経営改善に向けた動機付け
・財務状況のみならず、様々な観点からの検査における評定制度の導入等によるメリハリの効いた効果的・選択的な行政対応
○金融機関の内部監査を充実させるためのオフサイトモニタリングの実施
○金融機関のガバナンスに対する監督上の着眼点の明確化
○公的資金(優先株等)の処分についての考え方の整理
○戦略的視点(公的資金注入行のガバナンスのあり方を含む)に立った金融専門人材の確保・養成(当局と民間との連携による「人材プール」の構築等)
金融機関のリスク管理の高度化を促すとともに、不良債権問題の再発防止のためのルールを整備し、主要行の不良債権比率が17 年3 月末時点の水準以下に維持されるよう、最善の努力を求める。また、各金融機関において収益性や健全性を示す財務指標や外部格付けが一段と向上することを目指す。
○バーゼルU(新しい自己資本比率規制)の導入に向けた金融機関のリスク管理に関するルール・態勢の整備及び検査・監督当局の体制整備
○早期警戒の枠組みの一層の活用
・銀行勘定における金利リスク等、自己資本比率の算定に含まれないリスクの適切なモニタリング等
○不良債権についての早めの認知・対応
・検査・監督当局による効率的なモニタリングの実施(検査・監督当局の更なる連携強化等)
・貸出債権市場の活性化(不良債権のプライシング機能の拡充)
・早期事業再生の取組み強化(事業再生の可能性の早期見きわめ)
・ オフバランス化ルールやデット・エクイティ・スワップ(DES)等の新たな金融手法への対応についての検討等
○主要行のリスク管理の高度化
・バーゼルU導入を踏まえ、主要行に対しリスク管理高度化のための計画の策定を要請
・大口与信管理態勢や債務者企業の再建計画の検証
・主要行の自己査定と検査結果の格差に係る業務改善命令の発動等
・繰延税金資産の自己資本への算入適正化ルールの検討
○証券会社・保険会社のリスク管理の高度化
・証券会社の自己資本規制の算定方法の見直し
・保険会社のソルベンシーマージン比率の見直し、新しい保険商品に係る責任準備金積立ルールや事後検証の枠組み等、財務関連ルールの整備
○信託業務の健全性ルールの整備

(3)国際的に開かれた金融システムの構築と金融行政の国際化
◇金融の国際化・構造変化に対応した制度等の構築
国際的な金融の規制緩和に伴う金融機関の諸機能の分化・専門化やコングロマリット化・国際化、新たな取引形態・商品の登場による金融サービスの多様化等の構造変化に対応した制度整備、金融行政の体制整備を行う。
○金融のコングロマリット化に対応した金融法制の整備の検討、ヘッジファンドへの対応についての検討
○金融コングロマリットの検査・監督や業態横断的な問題の処理、新たな取引形態・商品の登場に対応可能な検査・監督体制の構築
○貸出債権の流動化、証券化を促進するためのインフラ整備
○市場参加者のニーズを踏まえたデリバティブ市場等の活性化に向けた取組み
○中小企業向け証券市場の機能強化
・グリーンシート市場の制度整備や周知徹底等
○新たな金融経済取引の登場に対応し得る会計ルールの整備促進
◇金融市場の国際的地位の向上に向けた取組み
国際的な市場間競争の高まりに対応してわが国金融市場の競争力を強化し、その国際的地位の向上を図る。
○証券取引における約定から決済までの時間の短縮等
○わが国市場をアジアの金融拠点にするための方策についての関係者との共同研究等
◇金融行政の国際化と国際的なルール作りへの積極的参加
国際化や金融コングロマリット化の進展に伴い、海外監督当局との連携強化の必要性が増すとともに、規制・基準の収斂の動きが加速している。こうした状況を踏まえ、内外無差別の原則を貫徹し、わが国の金融システム及び金融市場を明確な理念及びルールに基づいた普遍性のあるものにすると同時に、金融に関する国際的なルール作りに受身ではなく、戦略的見地から積極的に参加し、主導的な役割を果たすべく努力する。
○会計基準の国際的な収斂に向けた積極的対応
○国際的な金融商品・サービスの取引ルール等の策定への積極的参加
○国際的な金融コングロマリットに対する適正な規制、検査・監督の確保
○海外監督当局との連携強化等
○経済連携協定(EPA)締結交渉への積極的取組み等、アジアにおける対話の促進
○WTO における金融サービス自由化交渉への積極的参加

V.信頼される金融行政の確立

◇金融行政の透明性・予測可能性の向上
金融行政の透明性・予測可能性を更に向上させ、説明責任を全うするための枠組みを整備する。
○金融庁の行動規範(code of conduct)の確立(行政指導の一層の透明化・ルール化、行政処分等の透明性の確保を含む)、内外無差別原則の確認
○検査結果の金融機関へのフィードバック体制の充実
○ノーアクションレター制度の活用促進、外部からの照会に対する一般的な法令解釈についての考え方の公表
○金融機関破綻事例等の検証と今後の金融行政へのフィードバック
○金融庁コンプライアンス対応室の積極的活用による外部から見た透明性・客観性の確保
○財務局も活用した政策広報の充実
◇行政の電子化等による利便性の高い効率的な金融行政の推進
行政の電子化等により行政コストの軽減を図り、金融市場の参加者や利用者にとって利便性の高い効率的な金融行政を推進する。
○ 電子政府の推進による安全・適切・便利で効率的な行政の実施、金融市場の参加者及び利用者の利便性向上
○金融機関の経営実態に的確に対応し、監督当局と被検査金融機関の双方にとって効率的な検査のあり方の検討
○「金融庁総点検プロジェクト」に基づく金融庁の組織・体制の総点検及び見直し(調査・研究機能の活用等を含む)
○金融当局の人材強化に向けた対応


●無認可共済への規制で金融審報告(04年12月14日)
 金融審議会金融分科会第二部会は12月14日、無認可共済への規制に関して下記の報告をまとめた。
<根拠法にない共済への対応について>
1.はじめに
 根拠法のない共済への対応については、本年1月に開催された金融審議会金融分科会第二部会において、「保険に関する主な検討課題」の一つとして検討することとされ、当部会において検討項目を示すとともに、具体的な検討については当部会の下に設置されている保険の基本問題に関するワーキンググル−プにおいて行うこととされた。
 同ワーキンググル−プでは本年4月以降約半年間にわたって検討が行われ、本年10月、当部会に対し、「「無認可共済」への対応に係る論点整理」が報告された。当部会は、その報告を踏まえてさらなる討議を重ね、根拠法のない共済への対応についての考え方を以下の通りとりまとめた。

2.現状
 わが国において特別な法律上の根拠なく任意団体等で共済事業(特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業をいう)を行う、根拠法のない共済が多数存在している。総務省の調査結果報告(注:「根拠法のない共済に関する調査結果報告書」平成16 年10 月総務省行政評価局)によれば、その数は任意団体として行うものを中心として最近5年〜10年で急増している。
 共済事業については、自発的な相互扶助を基礎として、共同して社会生活を営む者が将来の危険に対して共同して生活の安定を図ろうとするものであり、基本的には保険業法による規制は不要とされてきた(注:保険業法は不特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業を規制の対象としており、特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業には適用されないこととなっている。なお、金融商品の販売等に関する法律等は、共済事業にも適用がある。根拠法を有する共済(農業協同組合(JA:農業協同組合法)、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済:消費生活協同組合法)等の行う共済)については、保険業法に代わる特別の法律の規制を受け、主務官庁の監督を受けて事業を行っている)。しかしながら、近年、根拠法のない共済の規模や形態の多様化が進み、伝統的な共済と異なる形態のものが増加している状況にあり、特定の者を相手方として保険の引受けを行う共済事業と、不特定の者を相手方として保険の引受けを行う保険業とを区別することが容易でなくなりつつある。
 根拠法のない共済については、@「比較的限られた顧客を相手に保険会社の提供しない特定のリスクに対応した保険や低廉なリスク移転の手段を提供するといった特定のニーズに対応した商品提供の担い手となっている」、A「事業の多様性がある、すなわち、見舞金程度の給付から保険会社と同程度の高額給付までの多様な商品を、自ら保険の引受けに係るリスク保有を行うもの、再保険等によりリスクの大半を保険会社等に移転するものなど多様な事業形態で提供している」、B「連鎖販売取引等十分な適格性を有しない者による販売方法がとられているものや財務基盤が脆弱と見られるものなどがあり契約者などの保護の観点から問題がある」等の指摘がある。
 また、総務省の調査結果報告においては、行政上の課題として、根拠法のない共済の実態を個別に継続して把握するため、また、問題のあるものについて適切な対応を図るための仕組みが整備されること、募集方法等の適正性や財務情報の開示等が確保されるべきこと等の指摘がなされた。
こうした点を踏まえて、契約者などの保護や公正な競争条件の観点からあるべき規制の姿を議論していくことが重要であり、また、その際、現実に事業を行う根拠法のない共済が広範囲に存在している現状も勘案した上で検討を行う必要がある。

3.基本的考え方
(1)公的な規制の対象とすべき範囲
根拠法のない共済に対する規制を導入する場合は、どこまでを公的な規制(注:ここで言う「公的な規制」とは、あくまで保険や共済についての公的な監督等に係る規制のことであり、当然のことながら、その対象外とされる場合においてもその他の法令(例えば刑法や出資法等)の適用を妨げるものではない) の対象とすべきかが問題となる。構成員が真に限定されるものについては、特定の者を相手方とする共済として、従来どおり、その運営を専ら構成員の自治に委ねることで足り、規制の対象外とすべきと考えられる。これに該当するものとして、小規模なもののほか、労働組合がその組合員等を相手方として実施するもの、企業がその従業員等を相手方として実施するもの等があるとの意見があった。規制の適用範囲を定めるに際しては、基準の明確性や規制逃れの防止の観点も踏まえ、規制の実効性の確保に十分配意することが重要である。
 上記の範囲を超える根拠法のない共済については、構成員の自治による監督のみを理由に契約者などの自己責任を問うことが適当でない領域であって、契約者の保護などの観点から一定の規制が必要である。
 なお、総務省調査においては、法人の運営に行政機関の一定の関与のある公益法人等が行う共済についても調査結果が示された。その活動内容は多岐にわたっており、こうした共済についても、仮に構成員が真に限定されない場合があるのであれば、契約者などの保護の観点から一定の規制の適用があることが望ましい。
 ただし、監督行政庁としてどのような主体が相応しいかについては、公益法人の多くが都道府県の所管となっている実態や現在政府において公益法人制度の抜本的改革について検討が進められていること等を踏まえると、国と地方の行政責任の分担のあり方や公益法人に対する行政庁の関与のあり方等の観点から、適用すべき規制の内容とあわせ、引き続き検討が必要である。
(2)新たな規制の基本的枠組み
@検討の視点
 根拠法のない共済で新たに規制の対象となるものについては、契約者などの保護や公正な競争条件の観点からは、保険会社の提供する商品と同様の商品が提供される場合には基本的には保険業法の規制が適用されるべきである。ただし、契約相手方が限られることに伴う販売ロットの小ささや特殊なリスクの把握の問題等のために保険会社が必ずしも提供しない商品を提供する等の特定のニーズに対応した商品提供の担い手としての役割、事業規模・態様の多様性を踏まえると、その全てについて幅広い保険商品を大規模に提供し得ることを想定した保険会社と同様の規制を課すことは、好ましくない。
 したがって、契約者などの保護、保険会社との公正な競争条件、特定のニーズへの対応といった観点を総合的に勘案しつつ、一定のメルクマールを定め、その事業の特性を踏まえた規制を導入することについて検討する必要がある。
A契約相手方の「特定性」の程度
これまで保険業法の規制の要否のメルクマールとされてきた契約相手方の「特定性」については、構成員が真に限定されるものを列挙し公的な規制の適用外とすることに加えて、公的な規制の対象とする範疇に属するグループの中でも、例えば、(ア)団体への加入の要件や他の活動との関連、(イ)保険募集の態様、(ウ)事業規模などに関して、一定の具体的な基準を設け、保険会社規制と異なる規制を導入する場合の基準とすることも考えられる。
 このうち、(ア)団体への加入の要件や他の活動との関連については、形式要件として一定の具体的な基準(例えば入会金等の額や他の事業の実施要件等)を策定することも考えられるが、その場合、活動の実態の実質的変更を伴うことなく予め定めた形式要件に該当するように加入要件等を設定するような場合も考えられ、要件自体が形骸化する可能性がある。また、(イ)保険募集の態様についても、仮に団体の構成員以外の者に対する保険募集を行なわないことを要件としても、団体への加入の勧誘自体が自由に行われれば形骸化の可能性がある。こうした点を踏まえると、これらの要件については、相当程度個別・具体的なものでなければ異なる規制の基準とすることが困難であり、むしろ構成員が真に限定されるものとして公的な規制の対象外とすべきものを個別に検討する際に勘案することが適当である。
 他方、(ウ)事業規模については基準の明確性があり、潜脱行為防止のための制度4的工夫を行えば形骸化の可能性は低い(注:形式的な団体の分割による潜脱行為を防止するため、法人格の取得を要件とした上で、例えば、法人の分割等について、現行の保険会社と同様、認可制とする仕組みの下で適切な対応が図られる必要がある)。したがって、保険会社と異なる規制を導入する場合のメルクマールとして事業規模を中心とすることが考えられる。その際、契約者数により事業規模を勘案する考え方もあるが、保険商品の保障額も様々であることや引受けリスクの全体の大きさも保険事業を実施していく際には重要であることを勘案すると、むしろ保険料収入等を用いる方が適当である。
 なお、特定のニーズに対応した保険商品の円滑な提供という観点からは、幅広い保険商品を大規模に提供し得る保険会社と異なり、事業規模が小さいものでも参入可能な制度設計が望ましいが、他方で、事業規模が小さい場合は保険収支が安定しないことや適正に取扱える保険商品には自ずと制約があることを踏まえると、契約者などの保護の観点から、取扱い商品に一定の制約を設けることが必要である。
B取扱い商品
 取扱い商品が、保険期間が短期のものであって、保険金が見舞金、葬儀費用、個人の通常の活動で生じる物損等の填補程度に留まる等、少額短期保障に限定される場合には、以下の理由から契約者への十分な説明を前提に保険会社と異なる規制とすることが考えられる。
(ア)現行の保険会社と異なり、事業者は通常の生命保険契約で見られるような長期契約に伴うリスクや損害保険契約で生じ得る巨大なリスクの引受けを行うものでないこと
(イ)契約者側も長期の契約継続を前提としておらず、事業者の破綻等の場合に生じる損失が限定されるのであれば、契約内容や事業者の財務状況についての適切な情報開示が行われることを前提に契約者などの自己責任を問うことも可能であると考えられること
 なお、短期の契約であっても、契約者が保険料又は保険金の水準の見直しなく契約を更新できる場合には、実質的に長期契約の性質も有することから、こうしたものについては、保険期間終了毎に保険料又は保険金の水準が見直される可能性がある旨約款に記載されていることを要件とすることが考えられる。
 また、一人の契約者が複数の契約を行うような場合を想定し、保障の合計額に上限を設けること、更に、保険会社と比べて事業規模が小さく保険収支が安定しない場合も考えられることから、保険事故が多発する等の一定の要件に該当する場合には予め約した保険金の水準が削減される旨約款に記載されていることを要件とすることが必要な場合もあると考えられる。
C一定の事業規模の範囲内で少額短期保障のみ提供する事業者
 契約者などの保護、保険会社との公正な競争条件の確保、特定のニーズに対応した
保険商品の円滑な提供の観点等を総合的に勘案すると、一定の事業規模の範囲内で、保険期間が短期のものであって、保険金が見舞金、葬儀費用、個人の通常の活動で生じる物損等の填補程度に留まる等少額短期保障のみの取扱いを行う事業者については、保険業法において、事業の特性を踏まえた一定の特例を設けて対応することが考えられる。

4.少額短期保障事業者(仮称)に係る規制の具体的内容
 一定の事業規模の範囲内で、少額短期の保障のみを提供する事業者(以下「少額短期保障事業者」という)については、その業務の特質を踏まえて、以下のような規制の枠組みを保険業法に特例を設けて手当てすることが考えられる。
(1)参入規制等
 取扱い商品が少額短期保障に限定されること等を踏まえ、参入規制を免許制から登録制等に緩和する。権利義務関係を明確にし、契約者などの保護を図る等の観点から、法人格及び一定の財産的基礎があること並びに的確な人的構成を有することを要件とする。
法人の形態については、契約者などの保護の観点を踏まえ、@会社法の規定等及び保険業法固有のガバナンス規定(保険契約者の計算書類への関与、株主の帳簿閲覧権の排除等)を適用させた株式会社、A社員相互の保険を行うことを目的とする社団であって、契約者などの保護のためのガバナンス規定等が保険業法に整備されている相互会社のいずれかとすることが適当である。
 なお、一般に保険会社により提供される保険への加入が困難な者を相手方とする場合など、相互扶助的な色彩が強く事業の実施が特に求められるものについては、公的な規制の対象とする場合においても、事業の実施主体の適格性等は他のものと同様に厳格に確認すべきであるが、事業実施の必要性の高さに鑑み、財産的基礎等の参入規制の面で事業の開始・継続自体を著しく困難にしない等の配慮を行う場合も必要と考えられる。
(2)商品審査等
 保険会社と同様、事業方法書、普通保険約款、保険料等の算出方法書の作成及び提出を義務付ける。ただし、少額短期保障のみ取扱い、契約更新時等事後的な保険料の是正が容易であることを踏まえ、行政庁による事前商品審査は、@普通保険約款の内容が契約者などの保護に欠けるおそれがないか、公序良俗に反しないか等、必要最小限のチェックに留めることとし、A保険料等の算出方法書の妥当性については、事業者段階での一定の専門的知識を有する者の関与を前提として、決算報告時等における実際の保険事故の発生状況等を踏まえた事後チェックを行うこととする。
(3)責任準備金の積立等
 責任準備金等は、保険契約上の義務を履行するために会計上適正に計上されるべき負債であり、保険会社と同様、支払備金、未経過保険料等の責任準備金の積立てを義務付ける。その適切な計算・計上を確保するため、保険計理人の関与を義務付ける。
また、契約者などの保護の観点から、参入時において一定額の保証金の供託を義務付け、事業規模に応じて供託額を上乗せする仕組みとする。
(4)兼業規制
 既存の事業者の多くも共済事業を目的として行う団体を別に設立していることや破綻時の契約者などの保護の観点を踏まえ、他業は、実施の必要性が特に高くその事業規模が相当程度小規模な場合等特段の事情のない限り認めないこととし、専業を原則とする。
(5)資産運用規制
 事業規模や取扱い商品が限定されることにより保険会社のように大規模な資産を保有することは想定されないこと、事業規模が小さい場合、特にその財務の健全性の確保に配意する必要があることを踏まえ、保険会社のような幅広い資産運用を認めず、流動性の高い預金や国債等による運用を義務付ける。
(6)情報開示
 保険会社と同様、事業年度ごとに業務・財産の状況に関する説明書類を作成し、約款等とともに営業所に備え置くこととする。また、開示される書類の適正性を確保するため、一定以上の規模の事業者については外部監査を義務付ける。
(7)募集規制
 保険会社と同様、募集の際の重要事項の説明や虚偽表示の禁止等を定めた募集に係る行為規制を課し、また、保険募集人登録を要件とすることなどにより、保険募集を行う者の適正性を確保する。
な お、契約が更新されるものについては保険期間終了後に保険料又は保険金の水準が見直される可能性があること、保険事故が多発する等の一定の要件に該当する場合は保険金が削減される可能性があることについて約款への記載を義務付けることとする場合は、その記載内容が契約者に十分説明される必要がある。
(8)検査・監督
 法令の実効性を確保するため、行政当局の検査・監督の対象とする。その際、事業規模も勘案しつつ、支払い能力の充実の状況が適当かどうかの監督も行う。
(9)セーフティネット(契約者保護機構の設立・加入の要否等)
 少額短期保障事業者については、@取扱い商品及び資産運用を少額短期保障及び預金等に限定することにより、予定利率リスクや資産運用リスクは制度上排除されること、A保険事故が多発した場合等に保険金が削減される旨の約款を義務付ければ、保険の引受けに伴い保険収支に生じるリスクは相当程度抑制されること、B事業規模に応じた保証金の供託を義務付け、事業者の万一の破綻の場合に契約者などに生じうる損失が限定されることを前提とすれば、セーフティネットを設けないことも考えられる。 なお、この場合、募集に際してセーフティネットがない旨の説明を義務付け、保険会社との違いを明確にすることが必要である。

5.既存の事業者についての対応
 既存の根拠法のない共済について、上述のような新たな規制の枠組みを適用する場合には、現に広範囲の契約者が存在していることを踏まえ、契約者などの保護及び移行の円滑化の観点等から、速やかな適用が必要な規制と一定の移行期間経過後適用することが適切な規制とに区分することが適当である(注:以下の記述は、現行法の下で特定の者を相手方として保険の引受けを行っている事業者を念頭に置いたものであり、不特定の者を相手方として保険の引受けを行っている者を対象とするものではない。横断的な規制の整備が急がれるべきとの指摘があった)。
(1)移行期間中の規制の枠組み
 既存の共済事業は任意団体の形式で行われていることが多いと考えられるが、新たな規制の枠組みにおいて、少額短期保障事業者又は保険会社のいずれを目指すにせよ、新たに相互会社又は株式会社を設立し、事業を移転する必要があり、円滑な移行のための一定の猶予期間(移行期間)が必要である。
この場合、連鎖販売取引等十分な適格性を有しない者による販売方法がとられているものや財務基盤が脆弱と見られるものなどがあり契約者などの保護の観点から問題があるとの指摘があることを踏まえ、重要事項の説明や虚偽表示の禁止等を定めた保険募集に係る行為規制は移行期間中であっても速やかに適用することが望ましい。
 その際、これらの行為規制違反は、刑事罰の対象ともなっているが、行政庁により、法令違反の有無の確認及び問題がある場合は是正を命ずることができるよう、検査・監督の対象とするための法整備が必要である。
 また、事業者が販売者の不適切な販売方法につき責任を負うことが明確にされる必要があり、現行の保険会社と同様に、募集人の不適切な説明等により契約者に損害を生じさせた場合に使用者としての賠償責任(使用者責任)を負うことを明確にすべきである。
 なお、募集の適正化に関連して、金融商品においては連鎖販売取引自体が禁止されるべきとの意見があった。また、消費者保護の観点から、金融商品の種類を問わず、横断的な規制の整備が急がれるべきとの指摘があった。
(2)移行期間終了後の規制の枠組み
@基本的枠組み
 既存の共済事業者で事業を継続する者は、上述の移行期間が終了するまでの間に、少額短期保障事業者又は保険会社として事業を行うための登録、免許等を受ける必要がある。その後は取扱い商品の内容に応じて、商品内容の確認、一定の基準に基づいた責任準備金の積立等及び財務状況の開示、資産運用規制、財務規制、保証金の供託を含めた契約者などの保護のための仕組みが適用される。また、募集規制についても、募集人登録を要件とすることなどにより、保険募集を行う者の適格性の一層の確保が図られる。
A激変緩和措置
 移行期間終了後の規制の基本的枠組みは上述のとおりであるが、規制の枠組みが大きく変更されることを踏まえ、移行期間終了後も更に、以下のような激変緩和措置を設け、円滑な移行に一層配意することが考えられる。
(ア)法人格について
 現にNPO法人等の法人格を取得して事業を実施している既存の団体については、株式会社又は相互会社への移行や兼業規制の適用等について一層の配意を行う。
(イ)保険会社の免許申請について
 移行期間が終了するまでの間に保険会社の免許申請を行う者については、最低資本等の規制(現行10億円)について、一定の猶予期間を設ける。
(ウ)再保険等によるリスク移転について
(a)再保険等によるリスク移転に係る時限措置
 少額短期保障事業者と保険会社という二者択一の枠組みは、再保険その他の契約によりリスクの多くを他の保険会社等に移転する事業形態の一部には必ずしもマッチしない場合もあると考えられるが、こうした事業形態については、特定のニーズに対応した商品提供の担い手としての機能、再保険等に依存する場合の問題点等について、実態を十分に把握した上で慎重に検討する必要(注:再保険等に依存する事業形態については、特にリスクの性質に様々な形態のある損害保険の分野において販売ロットや特殊なリスクの把握の問題等のために保険会社が必ずしも対応できない分野について、共済が一定のリスク分散を図りながら、独自商品を提供する場合等に一定のニーズがあるものと考えられる。また、現行の保険会社の財務規制においても行政庁の監督下にある他の保険会社に再保険をした場合に責任準備金の積立を控除できるとされるなど再保険により一定の支払い能力を担保することを認める考え方をとっている。したがって、適切にリスク管理を行えば、保険会社並みの自己資本がなくても少額保障を超える比較的多額な保険商品の提供も可能と考えられる。しかしながら、他方で、自ら引受けたリスクの大半を他に移転するという事業形態については、リスク移転先の保険会社が破綻した場合に契約者への確実な給付が確保されない等の問題があり、再保険先が適切に業務運営を行っているか、自らの流動性リスクは適切に管理されているか、引受けた保険契約と再保険の契約期間はマッチしているのか、契約者はこうしたリスクについて十分な認識があるのか等の点について十分な検証が必要である)があり、現時点において保険業法の中で恒久的な制度として位置付けることは問題がある。現実的な対応としては、既存の事業者についての特例として、一定の期間(例えば5 年程度)に限り、保険金が高額でないものに限った上で、再保険等により保険会社にリスク移転が行われる場合は、少額給付の範囲を超える保障についても少額短期保障事業者と同様の規制の枠組みの中で業務を行えることとする時限措置を設けることが適当である。
 なお、この場合においても、契約者などの保護の観点から、再保険先は原則として行政当局の監督が及んでいる保険会社等である必要があり、また、再保険先の保険会社名など再保険契約の内容について、契約者に十分に説明される必要がある。
(b)再保険等によるリスク移転に係る時限措置終了後の事業のあり方
 法施行後一定の期間、再保険等により少額短期保障事業者の規制の枠組みの中で業務を行う者については、現時点においては、時限措置終了後は、@特にニーズの強い分野に特化して少額短期保障事業を継続する、A保険会社等の代理店等も兼ねて他の保険会社等の商品に自ら組成する少額短期保障商品を上乗せ等する形で組み合わせて提供する、B保険会社の免許を取得し幅広い商品を提供する等の選択肢が考えられる。
 上記以外の選択肢の必要性については、時限措置が終了するまでの間に、下記の規制の見直しの中で検討されるべきである。

6.規制の見直し等
 当部会としては、これまでの審議において、根拠法のない共済について現時点で利用可能な情報をできる限り活用し、本報告の取りまとめを行ったが、総務省の調査結果報告等にもみられるとおり、現状においては未だ実態の全貌を把握しきれていない部分もあると考えられる。したがって、将来的なあるべき規制の姿としては、今回取りまとめられた新たな規制の枠組みのもとで更なる実態把握を行い、制度施行後一定期間(例えば5年を目途)経過後にその妥当性の検証を行うことが不可欠である。
 具体的には、新たに行政当局の監督対象となる事業者の事業の状況や保険会社への再保険等に依存する場合に生じ得る問題点の整理、保険会社の提供する商品の状況等を踏まえて、少額短期保障事業者の業務範囲や事業実施主体の見直し、保険会社規制の見直し、その他別途の法整備の要否等、保険業法の適用のあり方について幅広く検討を行い、必要な措置を講ずることとすべきである。
 なお、新しい規制の枠組みの実効性が確保されるよう、行政庁における体制整備が必要であるとの指摘があった。

●金融審保険WGがセーフティネット見直しで報告(04年12月14日)
 金融審議会金融分科会第二部会保険WGは12月14日、下記の「保険契約者保護制度の見直しについて」の報告をまとめた。

はじめに
現行の保険契約者保護制度が平成10 年に創設されてから、約6 年が経過している。その間に、生命保険会社・損害保険会社をあわせて8 件の破綻があり、この制度の下で処理された。こうした中で、制度の見直しに向けた様々な指摘や要望がなされている。
このような状況を踏まえ、本年1 月16 日の金融審議会金融分科会第二部会において、保険契約者保護制度の見直しを「保険に関する主な検討課題」の一つとして検討することとし、具体的な検討は、当部会の下に設置されている保険の基本問題に関するワーキング・グル−プ(保険WG)において行うこととした。
保険WG においては、本年5 月から合計9 回にわたって議論が行われた。この報告書は、保険WG における検討に基づき、保険契約者保護制度の見直しについての考え方を整理したものである。当部会としては、政府において、この報告書を踏まえた具体的な措置を速やかに検討し、早期に所要の対応を行うことを求めるものである。

T.保険契約者保護制度の見直しの視点
1.保険契約者保護制度の必要性
 保険契約者保護制度は、我が国の保険会社(外国保険会社等を含む)が破綻した際にその保険契約の移転等に対して資金援助等を行うことにより、保険契約者等の保護を図る仕組みである。現行制度においては、生命保険、損害保険の各保険契約の継続を図るため、原則として、保険会社の破綻時に責任準備金等の90%補償を基準として、保険契約の移転等を受ける救済保険会社に対する資金援助が行われる。保険契約は保険契約者と保険会社の間の自己責任に基づく私的な契約である。しかし、保険については、基本的に、
イ.人の社会生活上の様々な危険に備えた保障(又は補償)を提供し、国民経済や国民生活の基礎とな っている、
ロ.他の金融商品のように市場で売買されるものでなく、また再加入困難性があり解約費用も高いこと から乗換えが困難なものもある、
ハ.一般の契約者にとって保険会社の経営状況の理解は容易でないことに加え、特に長期の契約につい て契約者に対し将来の変化を見通した選択を期待することは困難である、といった特性があり、保険会社の破綻時に保険契約者の自己責任を問いにくい面があるとされる。保険契約者保護制度は、こうした保険の特性を踏まえて保険契約者を保護する制度であり、保険会社の破綻の可能性が完全には払拭できない以上、今後も制度の必要性はあるものと考えられる。

2.保険会社の破綻防止等に向けた取組み
(1)保険会社の取組み
 保険契約者保護制度は、いわば保険契約者等の保護のための最後の手段であり、その前に、保険会社の破綻の未然防止に努めることが必要であることは論を待たない。こうした観点からは、まずは保険会社自らが、保険業をとりまく経営環境に大きな変化が見られる中で、様々なリスクを的確に把握・管理し、自己責任原則に基づき業務の健全かつ適切な運営を確保していくことが重要である。そのためには、より厳格な保険引受・資産運用リスク管理態勢の強化が求められるとともに、責任準備金等の適正な積立て、保険計理人による厳正な検証、情報開示の充実等の徹底・強化が求められる。
(2)行政の取組み
 また、こうした保険会社の経営努力に加え、保険会社の破綻の未然防止や破綻が避けられない保険会社の早期発見・早期処理を図るための制度上・監督上の取組みが重要である。このため、保険契約者保護制度の創設以降も次のような制度上・監督上の枠組みの整備が進められてきた。さらに、その実効性を確保するための検査に係る体制の拡充や検査と監督の連携強化が図られてきている。
・ソルベンシーマージン比率の算定方法の見直し(11 年度、12 年度)
・ソルベンシーマージン基準等に基づく早期是正措置の導入(11 年度)
・将来収支分析(保険事業継続性の確認)の導入と実務基準の整備(12 年度)
・保険会社に係る更生手続の整備(12 年度)
・財務情報等に係るディスクロージャーの拡充(13 年度)
・オフサイトモニタリングに基づく早期警戒制度の導入(15 年度)
・破綻前の契約条件の変更の手続きの導入(15 年度)
 このような取組みにおける更なる対応として、保険会社の健全性確保に配意した責任準備金積立ルール等の整備が指摘される。既に、自然災害リスクに対応した火災保険の責任準備金や変額年金保険の最低保証リスクに対応した責任準備金に関して、積立ルールの整備が図られてきているが、これに加え、例えば、現在市場が急速に拡大している医療保険等についても、早急に責任準備金積立ルール等の整備
を進めることが必要である。
 また、販売チャネルや保険商品が多様化してきている現状を踏まえ、木目細やかなモニタリングが行われることが望まれる。
 このほか、今後の課題として、ソルベンシーマージン比率の算定方法の見直しや、リスク管理、情報開示の充実等について更なる検討が必要との指摘もあった。

3.保険契約者保護制度の見直しの視点
 現行の保険契約者保護制度が平成10年に創設されてからこれまでに、生命保険会社6社、損害保険会社2社が破綻し、実際に保険契約者保護制度が発動された(ただし、生命保険会社3社については資金援助は行われていない)。こうした実際の運用を通じて、現行の制度については、保険会社の破綻時における補償の方法や水準、保険契約者保護機構の業務、補償に係る費用負担のあり方といった様々な面での見直しの必要性が指摘されている。
 今般の見直しは、上記のような保険会社の破綻防止等に向けた取組みの進展も考慮しつつ、これまでの実際の制度の運用を通じて浮かび上がった問題点を踏まえ、保険契約者保護制度の改善を目指すものである。

U.補償のあり方
1.保険種類に応じた補償
(1)損害保険(第二分野)
(a)損害保険の特性を踏まえた新たな仕組み
 上述のように、現行の保険契約者保護制度は、破綻保険会社の保険契約の継続を重視し、責任準備金等の90%補償を基準とした資金援助により、救済保険会社への保険契約の移転を図ることが基本となっている(注:現行制度においては、損害保険(第二分野)については、地震保険・自動車損害賠償責任保険については破綻処理期間中の保険金、責任準備金の100%を補償。賠償責任保険、海上保険、中規模以上企業者の火災保険等については補償対象外。特約部分についても主契約の保険種類に従っている)。
 しかし、損害保険契約については、以下のような問題が指摘されている。
イ.保険金債権も90%補償となることから、破綻処理期間中に保険事故が発生した場合、保険により填 補されるべき実損額の10%が契約者の自己負担となってしまい、実損填補という損害保険の機能に対 する信頼が損なわれる結果となる。
ロ.損害保険契約は、その多くが短期で、再加入困難性がなく乗換えも容易であることなどから、損害 保険会社が破綻した場合に、その顧客基盤は急速に縮小してしまう。さらに、乗合代理店が少なくな く、募集組織も比較的短期間に失われるおそれがある。このため、生命保険契約と比べて保険契約の 継続を重視した処理が難しく、またその必要性も低い。
 こうした性質に鑑みれば、損害保険契約については、破綻後一定期間、保険事故の発生に対する保険金の支払は全額保証することとし、その間に他の健全な保険会社への円滑迅速な乗換えを促す仕組みを導入することが適当と考えられる。
 保険金支払の全額保証を行う期間については、保険契約者が破綻保険会社との契約を解約して、他の保険会社に乗り換える手続きを行うための猶予期間となるとの趣旨を踏まえ、3ヶ月程度とすることが適当と考えられる。
 一定期間経過後に生じた保険事故に対する保険金や解約返戻金については、現行制度では破綻時の責任準備金の90%が補償されている。これらについて、一定期間内の保険金の全額保証により保険契約者保護制度に要する費用が増加することに配意して、補償を外す(破綻保険会社の欠損率に応じた分配を行う)との考えもありうる。しかし、
イ.何らかの事情で一定期間内の乗換えが困難な保険契約者もいると考えられること、
ロ.解約返戻金は新たな契約の保険料支払の原資となること、
ハ.そもそも一般の保険契約者に対し、契約時に保険会社の破綻を予想した選択を期待して完全な自己 責任を求めることは困難であること、
 を考慮すれば、新たな仕組みにおいても一定程度の補償を行うことが適当であると考えられる。
 その際、円滑迅速な乗換えを促すとの趣旨に鑑みれば、新たな仕組みの下では現在保険契約集団の維持の観点から行われている早期解約控除の適用は合理的でないこととなる。これまでの実務では、初年度10−15%程度の早期解約控除が採用されていることから、早期解約控除を行わないこととすれば、現行90%の補償率を例えば80%程度に引き下げたとしても、保険会社の破綻後早期に他の保険会社への乗換えを行うことが想定される多くの保険契約者については、実質的に現行なみの補償水準を維持することができるものと考えられる。
 なお、保険契約者保護制度の見直しにより破綻時の保険契約の補償内容が変更となる場合には、保険契約者の多くが保険の専門知識を有していないことに鑑み、特に既契約者に対して、保険契約の種類や性質に応じた効果的な説明方法により変更内容の周知を図るための十分な配慮が必要である。また、制度変更後、募集の際にも、保険契約者にとってわかりやすく制度説明が行われるよう工夫が必要である。
(b)保険契約者の属性に応じた補償の見直し
 現行の保険契約者保護制度では、生命保険や第三分野保険は保険種類によらず補償対象となっている(再保険は除く)が、損害保険については、自動車保険と火災保険(個人・小規模企業者が保険契約者である場合に限る)のみが補償対象となっており、賠償責任保険等のその他の保険は補償の対象外とされている。
 しかし、近年、保障対象を変更できる保険が出現してきているなど、保険種類によって破綻時の補償の有無を区分することの合理性が失われてきていると考えられる。他方、特に損害保険分野では、海上保険や航空保険のように資金力のある企業しか保険契約者とならず、保険契約者保護制度の対象とすることが適当でない種目があることも事実である。このため、損害保険について、保険種類による区分は
廃止する一方、一般的に情報収集力等が低く保護の必要性が高いと認められる個人・小規模企業者(例えば、従業員数20名以下の企業)が保険契約者となっている保険契約を補償対象とすることが適当であると考えられる。なお、第三分野の保険契約については、損害保険会社が引き受ける場合であっても、従来どおり、保険契約者の属性を問わずに補償対象とすることが適当である。
 なお、上記のように損害保険に関しては破綻時の補償対象の見直しを行う場合、現行と比べ、中規模以上の企業者が保険契約者である自動車保険が補償されないこととなる。現在において自動車保険が迅速な被害者救済等の観点から重要な役割を果たしていることを重視すれば、自動車保険については、中規模以上の企業者が保険契約者である場合であっても引き続き補償対象とする取扱いも考えられる。
(2)第三分野
 損害保険会社の破綻に際し、現状その保有契約の過半を占める損害保険(第二分野)契約については上記(1)にある新たな仕組みによる処理を行うこととする場合、疾病、傷害、介護に対する保障を提供する第三分野の保険契約の取扱いが問題となる。
 代理店網を主体とした募集組織が短期間で失われ得るといった損害保険会社の破綻の特性を重視して、損害保険会社の破綻処理においては第三分野の保険契約についても、損害保険契約と同様に、円滑迅速な乗換えを促す新たな仕組みを適用するべきであるとの意見がある。しかし、第三分野保険については、
イ.生命保険会社も同様の保険を引き受けており、引受保険会社が生命保険会社か損害保険会社かで破 綻時の補償が異なることは、保険契約者にとって分かりづらいと考えられること、
ロ.現在取り扱われているものには、損害保険に比べ実損填補の意味合いが薄い、定額給付の契約が少 なくないこと、
ハ.人のリスクに対応しており、再加入困難性や社会保障の補完機能が認められるものがあること、
 を踏まえれば、保険契約の継続を重視した現行の仕組み(破綻処理期間中の保険金、責任準備金につ いて90%補償)を維持することが適当であると考えられる。
 ただし、現在損害保険会社が引き受けている第三分野保険の大宗を占める短期の傷害保険については、
イ.実際に生命保険会社で取り扱っているところがほとんどないこと(注:生命保険会社が傷害保険を 取り扱う場合には、通常、生命保険契約等の特約とする形が採られており、損害保険会社のように短 期の傷害保険を単独で又は主契約として取り扱っている例はほとんど見られない。なお、特約部分に 関しては、現状では責任準備金が主契約と一体となっていること等から、保険会社の破綻時の補償に おいては主契約に従うこととなるため、生命保険契約に付された傷害保険特約は現行通り、責任準備 金等の90%を補償する取扱いとなる)、
ロ.再加入困難性が低いこと、
ハ.比較的少額の契約が数多くあり、損害保険と異なる取扱いをすれば、実務上大きな負担となること 、
を考慮して、損害保険と同様に、円滑迅速な乗換えを促す新たな仕組みを適用することも考えられる。
(3)積立型の保険
 積立火災保険や積立傷害保険など、保険による保障に積立てによる貯蓄を組み合わせた商品(以下「積立型の保険」という)は、現時点においては損害保険会社のみが取り扱っている。現行の保険契約者保護制度では、こうした積立型の保険についても一体として保険金や責任準備金の90%を補償しつつ保険契約の維持を図る処理を行うこととされている。
 しかし、積立型の保険については、補償部分と積立部分を容易に分離することが可能(責任準備金が分けて積まれている)(注:積立部分に対応した責任準備金は、「払戻積立金」として、補償部分とは分離して積立てられている)であり、取扱いを分けることもできる。
 この場合、その積立部分については、純粋な貯蓄であって、再加入困難性の問題はなく、他の保険会社や他の貯蓄商品への乗換えも容易であると考えられることから、契約の維持を図る処理の必要性に乏しく、損害保険と同様に、責任準備金(払戻積立金)の補償率を引き下げる一方で早期解約控除を適用しない仕組みの対象とすることが適当であると考えられる(注:積立型の保険についても、補償部分については、それぞれの保険種類に応じた補償を行うこととなる)。
 ただし、積立型の保険のうち、政策目的から開発された年金型の保険(財形貯蓄傷害保険及び確定拠出年金傷害保険)については、そもそも対応する生命保険と商品性を合わせる形で設計されたものであることから、保険会社の破綻時の補償についても生命保険と同様とすることが望ましく、現行の仕組みを維持することが適当であると考えられる。
 一方、同じく年金型保険である年金払積立傷害保険については、積立型の保険の一形態であり、例えば税制上も個人年金保険料控除の対象となっていないなど、個人年金保険との相違点に着目して、他の積立型の保険と同様の新たな仕組みを適用すべきとの意見があった。
 しかし、個人年金保険(生命保険)にあわせた商品設計となっており、将来の生活を保障するとの社会保障補完機能を有していることに着目すれば、個人年金保険と同様に現行の仕組みを維持することが適当であると考えられる。
 なお、保険会社の破綻時の処理において、年金払積立傷害保険を個人年金保険と同様の取扱いとするのであれば、他の制度においても同様の取扱いとすることが整合的であり望ましいとの指摘があった。
(4)生命保険(第一分野)
 生命保険については、再保険を除く全ての元受保険契約が、保険種類や保険契約者の属性によらず、責任準備金等の90%を補償しつつ保険契約の維持を図る保険契約者保護の仕組みの対象となっている。しかし、生命保険についても、個々の保険の性質に応じて、異なる取扱いを考えるべきとの指摘がある。
 例えば、特別勘定で経理されている変額年金保険については、再加入困難性のような生命保険に特有の問題が少なく、投資信託等の金融商品に近い、投資性を有する商品であることから、保険契約者保護制度による保護は必ずしも必要ではないとも考えられる。とりわけ、最低給付保証が付されていない団体年金保険に関しては、類似の金融商品である年金信託との平仄から、保険会社の破綻時にも実質的に対応資産が保全されるように、厳格な分別管理を前提として責任準備金を削減しない取扱いを可能とする制度整備が望ましく、これが実現すれば、保険契約者保護制度の対象外とすることが適当であると考えられる。
 他方、現在取り扱われている個人年金保険には死亡時又は年金給付開始時の最低給付保証が付されており、一般勘定から完全には独立していない。このため、個人年金保険については、上記の責任準備金を削減しない取扱いの対象とすることは想定されておらず、保険契約者は保険会社の破綻により大きな影響を受けるおそれがあることに留意が必要である。
さらに、保険会社の破綻時における保険契約者保護に関して特に重視するべきは再加入困難性のある死亡保障や医療保障などの保障機能であり、積立型の保険の場合のように、生命保険についても保障部分と貯蓄部分に分解し、前者には十分な補償を提供する一方、後者については他の貯蓄商品との平仄も展望し、定額補償とすることも含め異なる取扱いを考えていくべきとの意見があった。
この点については、終身保険や年金保険の平均余命後の生存リスクを保障する部分など、保障部分と貯蓄部分に分解することは実際には難しいとの指摘があった。
 また、これまでの破綻処理事例を見ると、予定利率が引き下げられることで、既に、貯蓄性の高い保険契約については、保障性の高い保険契約に比べ大幅な保険金額の削減が行われる結果となっていることにも留意が必要である。

2.補償の対象
 現行制度では、基本的に責任準備金の90%が補償されるが、実際の破綻処理に際しては、予定利率の引下げなどが行われることから、保険契約者によっては保険金額で見た削減率が大きく異なる結果となる。こうした状況に対し、保険契約者にとってのわかりやすさを重視して、予定利率の引下げの効果も含め、責任準備金ではなく保険金額を基準として補償率を設定すべきとの意見があった。また、同様の
趣旨から、保険金額で見た削減率に限度を設けることも考えられる。
 しかし、破綻保険会社の保険契約について保険金額を基準として補償することとなると、高い予定利率により高い保険金額となっている契約と低い予定利率により低い保険金額となっている契約を同程度に補償することとなり、保険契約者間の公平性の観点から問題があるとの指摘がある。ただし、この点については、過去の高い予定利率はその当時の市場環境に対応したものであり、公平性の問題は少ないとも考えられる。
 一方、保険金額を基準として補償することとなると、高い予定利率の契約について、予定利率の引下げが十分に行われず、救済保険会社等の保険収支を歪め、健全性を損なうおそれもあると考えられる。
 また、保険契約者保護を確保するとともに保険契約者にとってのわかりやすさを向上させる観点から、責任準備金の補償だけではなく、予定利率の引下げや早期解約控除に一定の制限を設けるべきとの意見があった。
 この点については、厳格な規制を設けると、制度の運用上の柔軟性を損ない、救済保険会社が現れにくくなるなど、破綻処理を難しくするおそれがあるとの意見が出された。また、保険契約者保護機構には説明責任があり、保険契約者に対して合理的な説明ができないような不利益な契約条件の変更等は認め得ないことから、制度的な制限はなくとも、契約条件の変更等には自ずから限界があるものであり、実際にこれまでの破綻処理事例を見ても、予定利率の引下げ幅や早期解約控除についても不当に大きなものとはなっていないとの指摘があった。
 いずれにしても、保険契約者の権利に大きな影響を与える予定利率の引下げや早期解約控除については、何らかの形で基準がある方が望ましい。こうした基準は事例の積み重ねの中で形成されるとも考えられるが、より積極的に、保険契約者保護機構において明示し運用していくことが適当であると考えられる。
 なお、今後の制度改正では、改正内容の周知を図る際や、実際の破綻処理において契約条件の変更を行う際には、例えば、それぞれの保険契約に係る保険金額等への具体的な影響などについて、保険契約者にわかりやすく説明がなされるようにすべきである。

3.補償の水準
 現行制度では、責任準備金等の90%を補償することが基本とされている。損害保険については、上記のとおり、破綻後一定期間の保険金の支払は全額補償し、責任準備金は早期解約控除を適用しないことを前提として、例えば80%に補償率を引き下げることが考えられるが、保険会社の情報開示の進展等により、従来以上に保険契約者の自己責任を問い得る環境が整ってきているとして、生命保険や第三分野保険について、補償率を引き下げるべきとの意見がある。
 しかしながら、生命保険等については、
イ.生命保険会社の経営状況は厳しい運用環境の継続により依然として十分に安定しておらず、補償率の引下げが生命保険会社の経営に対する信頼に悪影響を及ぼす懸念が払拭できる状況にはないこと、
ロ.現行制度下でも、責任準備金の削減に加え、予定利率の引下げ等により、保険金額で見れば相当程度の引下げが行われている事例があること、に鑑みれば、現時点で補償率の全般的な引下げを行うことは適当ではないと考えられる。
 なお、補償率の問題に関連し、特に予定利率の高い契約については、将来に向けた予定利率の引下げに加え、保険会社の健全性を損なう要因となったことを考慮して、保険契約者間の公平性をより確保する観点から、責任準備金の補償水準を他の契約よりも引き下げるべきとの意見があった。
 特に、昨年の保険業法の改正により、破綻前に予定利率等の引下げを可能とする手続きの導入が実現しており、こうした措置を適切に講じることなく破綻する事態となれば、予定利率の引下げを一定期間遡った場合に相当する責任準備金の削減を求めることは合理性があるとも考えられる。
 他方、このように、過去の逆ざや負担を責任準備金の削減の形で予定利率の高い契約の契約者に負わせることについては、
イ.予定利率の高い契約については、予定利率の引下げ幅も大きなものとなり、保険金額で見れば既に相当大幅な削減となっていること、
ロ.大幅な予定利率の引下げは、いわゆる「のれん代」の上積みに反映されることから、現行制度においても、予定利率の高い契約に係る資金援助は実質的には小さなものとなっていること、
ハ.過去の高い予定利率はその当時の市場環境に対応したものであり、保険契約者が殊更に高いリターンを狙って契約したものとは言えないこと、にも留意が必要との指摘もあり、こうした指摘も踏まえた慎重な検討が求められる。

V.保険契約者保護機構の業務
1.基本的な役割
 保険契約者保護機構(以下「機構」という。)には、基本的な機能として、@保険会社の破綻処理における資金援助や保険契約の引受けを行う業務と、A更生手続において保険契約者の権利を代理する業務があるが、両者の間で利益相反が生ずる可能性がある。
 しかしながら、現実問題として、機構以外に保険契約者の権利を代理して手続きに参加できる者は想定できず、また、保険会社の破綻処理のように専門家による迅速な対応が求められる場面において、資金援助を行う主体のほかに保険契約者の権利の代理をする主体を用意することは多大な費用を要することから、これを制度的に解決することは困難であると考えられる。
 ただし、個々の破綻処理においては、保険契約者の保護が適切に図られるように、慎重な運営が求められる。こうした観点から、既に中立の専門家からなる運営委員会を設けるなどの対応が図られているが、これに加え、予定利率の引下げや早期解約控除に関する運用基準の明確化により機構の裁量を制限することによって、利益相反の状況を緩和することが望ましいとの指摘があった。
 また、保険契約者にとってより有利な条件を確保する観点からは、資金援助を必ずしも必要としない案件においても、救済保険会社を探す以前の早い段階から、機構が管財人と十分な意思疎通を図り、資産査定作業にも関与していくといった運営が望まれる。
 さらに、機構における手続きを透明化し、情報開示を一層充実させることも、利益相反によるデメリットの発生を防ぎ、機構の運営に対して規律付けを行う観点から重要であるとの意見もあった。

2.保険契約の引受け
 現行制度において、機構による保険契約の引受けは、救済保険会社が現れる見込みがない場合に限り行うことができるとされている。しかし、特に損害保険会社の破綻の場合には、短期の契約が多いこと等から迅速な処理が求められるにもかかわらず、救済保険会社が容易には見つからず、早期の手続開始ができないおそれがあるとの問題が指摘されている。こうした問題に鑑みれば、迅速な手続きの開始が適切であると合理的に判断される場合には、破綻後の早い段階でも機構による引受けを決定できるようにすることが適当であると考えられる。
 昨年の保険業法改正において、破綻前の予定利率等の引下げを可能とする手続きが導入されたが、こうした措置は、機構が直接引き受けた保険契約の収支が悪化した場合については認められていない。機構は一般の保険会社と異なり、新規の保険募集は行わず、引き受けた保険契約を維持・管理するのみであり、時間の経過とともに保険集団が劣化すること等により保険収支が悪化する懸念もあることから、機構についても予定利率等の引下げを可能とする手続きを認めるべきとの意見がある。しかし、機構について、一般の保険会社のように経営破綻の要件の認定等の仕組みを適用することは難しいことや、保険収支の悪化の懸念が強い場合には保険子会社を設立して保険契約の引受けを行う(この場合は一般の保険会社と同様に予定利率等の引下げが可能)こともできることに鑑みれば、慎重な検討が必要であると考えられる。

3.業務に要する費用の拠出方法
 機構に対する保険会社の拠出については、破綻の発生に先立って資金を積み立てておく事前拠出制度となっている。しかし、生命保険分野では、過去の破綻処理に多額の費用を要した結果として実質的に事後拠出となっているものの、運営上特段の問題は生じていない。また、事前拠出制度については、破綻の生じるおそれの少ない平常時においても相当規模の資金を機構に積み立てておくこととなり、資金の効率的な利用の観点から望ましくないとして、制度的にも事後拠出とするべきとの意見がある。
 他方、事前拠出制度については、
イ.保険会社の破綻が生じるような厳しい市場環境下で、他の保険会社に拠出を求めることとならないこと、
ロ.破綻保険会社に対しても拠出を求めることができ、保険会社間の負担の平準化が図られること、
等の利点があるとされている。また、事前拠出制度の問題とされる積立金の効率性に関しても、状況に応じて水準を調整する、拠出保険会社に運用を委託し一定の利益を還元するといった方法で改善できるとの指摘もある。
いずれにしても、現状は非効率な資金の積立てがあると言える状態ではなく、事前拠出制度の問題が顕在化しているとは考えられないことから、現時点での事後拠出制度への移行については慎重な検討が必要であると考えられる。

W.保険契約者保護の費用負担のあり方
1.破綻処理費用の負担のあり方
保険契約者保護制度は、保険会社の破綻時に機構が資金援助等を行うことにより破綻保険会社の保険契約者等を保護する仕組みであり、その費用は他の保険会社が負担することが原則である。
ただし、この保険会社の負担は最終的には保険契約者の負担につながっていると考えられる。これについては、制度の目的が保険契約者の保護にあることから合理的なことであるが、保険契約者の理解を高めるため、負担の明示等、よりわかりやすい説明に努めるべきとの意見があった。
保険会社の破綻処理において、機構が資金援助等を行うのは、いわば保険契約者等の保護のための最後の手段であり、その前提として、経営破綻に寄与した経営者、株主、銀行等の募集代理店等の関係者に対して各々の責任に応じた負担を求める必要がある。関係者に対する責任追及は、これまでの事例の積み重ねの中で次第に確立されてきているとも見られるが、これを一層明確にするため、機構に対する資金援助の申込みに際して確認を行うなどの、運用の徹底を図ることが考えられる。

2.生命保険契約者保護機構に係る政府補助のあり方
(1)制度の現状・経緯
損害保険の制度では保険会社からの拠出により費用を賄う原則が貫徹されているが、生命保険の制度については、平成12年度より、保険会社の負担が一定限度(3年間で1000億円)を超えた場合には、政府による補助を行うことができるとする時限的措置が講じられてきている。なお、生命保険の機構については、恒久措置として、その借入金に政府保証を付すことができるとこととされている。
政府補助の原資は究極的には税金であるが、一般的には、生命保険の破綻処理に関して、銀行破綻の場合における信用秩序の維持のような、保険契約者以外の者にも負担を求める根拠となる特別の公益性があるとは考えられていない。これにもかかわらず、生命保険について政府補助の規定が設けられたのは、その創設又は延長の当時において、
イ.歴史的な低金利の継続等による厳しい運用環境にあって、逆ざやの負担から経営状況が不安定な生 命保険会社がいくつもあり、実際に破綻をきたすところもあったこと、
ロ.生命保険会社の相次ぐ破綻によって、保険契約者保護のための機構の財源が枯渇する状況にあった こと、
ハ.銀行でも経営危機が表面化するなど金融市場が動揺している状況で、資金規模が大きな生命保険会 社の破綻による混乱が生ずれば、金融市場や国民経済全体にも不測の悪影響をもたらす懸念があった こと、等によるものであるとされている。
(2)政府補助に関する考え方
現在の生命保険会社をめぐる状況については、
イ.株式市場は下げ止まり、金融市場も安定を取り戻すなど運用環境が落ち着きつつある中で、保険会 社の経営努力もあって、生命保険会社の逆ざや額は減少してきており、平成13年3月以降、生命保険 会社の破綻は発生していないこと、
ロ.生命保険の機構の借入金は着実に減少してきている一方、保険会社に係る更生手続の整備や、破綻 前の契約条件変更の手続きの導入等の制度整備や監督手法の充実により、保険会社の破綻の未然防止 や早期処理が可能となるなど、保険契約者保護のための資金援助等に要する費用は従来よりも小さく なってきていると見込まれること、
ハ.金融機関の状況を見ると、主要行の不良債権比率半減目標に向けた取り組みが進展するなど、金融 システムの状況には大きな変化が生じており、また、17年4月には預金保険の対象が原則として預金 1000万円以下に限定され、金融システムをめぐる制度の枠組み自体にも大きな変化が生ずる節目を迎 えていること、などから、当面、生命保険の機構の財源に対して政府補助を行うべき可能性や必要性は大きく減少しており、現在のような政府補助規定を継続する必要性はないとの指摘があった。
また、そもそも、政府補助は、生命保険の非加入者も含め広く納税者に負担を求め、例外的な場合にのみ認められる生命保険独自の臨時異例の措置であり、さらに、政府補助の可能性が保険会社やその監督当局の規律に与える影響をも考えれば、可能な限り速やかに他の保険会社(の保険契約者)が費用を賄う本来の形に戻すべきとの意見もあった。
他方、現在の状況について、
イ.依然として巨額の逆ざや負担が残っており、保有契約も減少傾向に歯止めがかからないなど、生命 保険会社をとりまく経営環境は引き続き厳しい状況にあると見られること、
ロ.生命保険の機構には依然として多額の借入金があり、その完済までにはなお相当の年数を要するこ と、
ハ.我が国の生命保険会社は、数が少なく、大規模なところが多いことから、その破綻が発生すれば、 金融市場や国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあること、などに鑑みれば、生命保険業に対する 国民や保険契約者の信頼の維持に万全を期する観点から、当面、政府補助の規定を存置することが望 ましいとの指摘があった。
また、そもそも、生命保険は老後や遺族等の生活保障を提供し、社会保障を補完する機能があること など、生命保険業は国民生活において重要な役割を果たしていることに鑑みれば、保険会社の破綻に 際して保険契約者を保護する費用について、まずは他の保険会社(の保険契約者)に負担を求めると しても、他の保険会社の経営の健全性の観点からそれ以上の負担は求め得ないと判断される場合には、政府補助を行うことも国民の理解を得られるのではないかとの意見もあった。
生命保険契約者保護機構に対する政府補助規定を設けることの是非については、上記の議論も参考にして、政府においてさらに幅広く十分な検討が行われることを期待したい。


●金融審、無認可共済規制で論点整理(04年10月5日)
 金融審議会金融分科会第二部会の第18回会合で、無認可共済への対応について、保険の基本問題に関するワーキング・グループからの報告が行われた。金融庁は下記の無認可共済への論点整理に関して意見を求めている。意見は10月25日(月)までに、氏名又は名称、住所、所属及び理由を付記の上、郵便、FAX又はインターネットにより、〒100−8967東京都千代田区霞が関3−1−1 中央合同庁舎第4号館 金融庁総務企画局企画課保険企画室内 金融審議会事務局 FAX03−3506−6244宛、またはインターネットで受け付ける。

<無認可共済への対応に係る論点整理>
1、現状
 わが国において特別な法律上の根拠なく任意団体等で共済事業(特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業をいう)を行う、いわゆる無認可共済が多数存在している。総務省の調査によれば、その数は最近5 年〜10 年で急増している。無認可共済の実施主体は、株式会社等の営利法人、法人格のない任意団体、NPO 法人等と多様であり、事業内容も少額の見舞金程度を給付するものから保険会社と同程度の高額の給付を約するものまである。
 共済事業については、自発的な相互扶助を基礎として、共同して社会生活を営む者が将来の危険に対して共同して生活の安定を図ろうとするものであり、基本的には保険業法による規制は不要とされてきた。しかしながら、近年、無認可共済の規模や形態の多様化が進み、伝統的な共済と異なる形態のものが増加している状況にあり、特定の者を相手方として保険の引受けを行う共済事業と、不特定の者を相手方として保険の引受けを行う保険業とを区別することが容易でなくなりつつある。
(注1 )保険業法は、不特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業を規制の対象としており、特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業には適用されないこととなっている。
(注2 )根拠法を有する共済(農業協同組合(JA :農業協同組合法)、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済:消費生活協同組合法)等の行う共済)については、保険業法に代わる特別の法律の規制を受け、主務官庁の監督を受けて事業を行っている。
 無認可共済については、近年の急成長の背景に既存の保険では満たされない顧客ニーズの存在があり、比較的限られた顧客を相手に保険会社の提供しない保険契約や低廉なリスク移転を提供するといった事業の多様性を通じて制度補完の役割等を果たしているとの指摘、連鎖販売取引等十分な適格性を有しない者による販売方法がとられているものや財務基盤が脆弱と見られるものなどがあり、契約者などの保護の観点から問題があるとの指摘がある。いずれにしても、契約者などの保護や公正な競争条件の観点からあるべき規制の姿を議論していくことが重要であり、また、その際、現実に事業を行う無認可共済が広範囲に存在している現状も勘案した上で検討を行う必要がある。
2、基本的考え方
 無認可共済に対する規制を導入する場合は、どこまでを公的な規制の対象とすべきかが問題となる。構成員が真に限定されるものについては、その運営を専ら構成員の自治に委ねることで足り、規制の対象外とすべきと考えられる。これに該当するものとして、小規模なもののほか、労働組合が実施するもの、企業内の共済会などが考えられるとの意見があった。
上記の範囲を超える無認可共済については、構成員の自治による監督のみを理由に契約者などの自己責任を問うことが適当でない領域であって、契約者の保護などの観点から一定の規制が必要と考えられるが、その規制のあり方については、現行の保険会社に対する規制との関係で以下の二つの考え方が示された。
(1 )一定の規制があれば、行政当局に対してはその監督下にある事業者の破綻の防止に努めるべきとの期待をもつ契約者などがいるとの見解、無認可共済が引き受ける保険契約(取扱い商品)には保険会社の取扱い商品に類似したものもあるとの見解等に基づき、現行の保険会社に対する規制と同様の規制を課し、既存の事業者については経過措置を設けて対応すべきとの意見があった。また、仮に無認可共済の多様性や制度補完の役割等の可能性を考慮して制度設計の必要性を検討するのであれば、現行の保険会社規制の見直しも視野に入れて行うべきであり、保険会社規制と異なる規制体系を別個に導入することは弊害が大きいとの意見があった。
(2 )他方で、無認可共済の多様性や制度補完の役割等の可能性を考慮しつつ、無認可共済が広範囲に行われている現状を踏まえて幅広く行政当局の監督下に置くことが重要であり、まずは契約者の保護などの観点から必要最小限のルールを設けることが適当との見解に基づき、保険会社に対する規制と異なる規制の導入を考えるべきとの意見が出された。
その内容としては、無認可共済について現行の保険会社に対する規制と異なる規制を導入する場合、その差異は、契約者などの保護や保険会社との公正な競争条件の観点から合理的なものである必要があり、例えば、以下の2 つのアプローチが考えられる。
(A )保険業法による規制が不要とされてきた無認可共済について、これまでと同様、契約の相手方が「特定」か「不特定」かをメルクマールとして保険会社の行う保険事業と異なる事業と位置付けつつ、契約者などの保護の観点から必要な規制を導入する。その際、特定性に着目した無認可共済と保険業との区分が容易でなくなりつつある現状を踏まえ、両者を分ける「特定性」について、例えば、団体への加入の要件や他の活動との関連、保険契約募集の態様、事業規模(保険契約者数等)などに関して、一定の具体的な基準を設けることも検討する。
(注)特に事業規模に関して基準を設ける際には、事業分割等による規制の潜脱の防止について何らかの工夫が必要となる。
(B )取扱い商品が保険期間が短期のもの、保険金が一定額のもの等に限定される場合には、事業者の破綻等の場合に契約者などに生じる損失が限定され、適切な情報開示を前提に契約者などの自己責任を問うことが可能であると考えられることから、それ以外の保険の引受けを行う場合とは異なる事業として、別の契約者などの保護のための規制を導入する。
 具体的な制度設計に当たっては、これら2 つのアプローチを組み合わせることが現実的と考えられる。なお、現行の保険会社と異なる規制が適用されるのは上記の「特定性」や「取扱い商品」に関する基準に該当する事業者であって、それらの基準に該当せず、実質的に保険業を営んでいる事業者については、現行の保険会社と同様の免許を取得することが必要となる。また、無認可共済について現行の保険会社と異なる規制を課すことは、免許制度等を前提とした現行の業態とは別に、新たな業態を導入することになる点に留意する必要がある。
3、規制の具体的内容
 無認可共済に対して現行の保険会社と同様の規制を課すこととすべきとの意見があったことは前述のとおりであるが、仮に保険会社と異なる規制を導入する場合、その事業の多様性や制度補完の役割等の可能性を考慮しつつ、無認可共済を幅広く行政当局の監督下に置くことが重要であり、まずは契約者などの保護上必要最小限のルールを設けることが適当であるとの意見があった。その際、事業規模等に応じて規制の内容を厳格化することも考えられる。このような前提で、以下のような新たな規制の枠組みが考えられる。
(1 )参入規制等
保険会社と異なる規制とする場合、保険会社と比べて契約相手方又は取扱い商品が制約されることを踏まえ、登録制等に参入規制を緩和することが考えられる。また、無認可共済の多数は任意団体の形式で行われている現状にあるが、行政当局の監督を必要とする規模のものであれば、権利義務関係を明確にし、契約者などの保護を図る等の観点から、法人格及び一定の財産的基礎があることを要件とすべきとの意見があった。
(2 )商品審査等
保 険会社と比べて業務に一定の制約を設けること、特に取扱い商品が保険期間が短期のもの、保険金が一定額のもの等に限定されるとすれば、行政当局による個別審査までは求めないことが適当であるとの意見があった。
(3 )責任準備金の積立等
責任準備金等は、保険契約上の義務を履行するために会計上適正に計上されるべき負債である。その適切な計算・計上を確保するため、保険会社と同様に、一定の契約については保険計理人の関与を義務付けることを検討すべきとの意見と、取扱い商品が限定されるのであればそこまで求める必要はないとの意見があった。
(4 )兼業規制、資産運用規制
無認可共済については、共済事業以外の本業があるのが通常であると考えられるが、これを認める場合においても他業との間での区分経理は必要である。更に、近年法人の設立に関し様々な選択肢があることなどや破綻時の契約者などの保護の観点を踏まえ、新たに共済事業を目的とした法人を設立することを求めることも考えられる。
また、事業者の財務の健全性を確保する観点から、保険会社のような幅広い資産運用を認めず、基本的には流動性の高い預金や国債等による運用を義務付けることが考えられる。更に、一定額(例えば保険料収入の一定割合)の供託を義務付けることにより、保険料収入の不正利用の防止に配意すべきとの意見があった。
(5 )情報開示
保険会社と同様、事業年度ごとに業務・財産の状況に関する説明書類を作成し、約款等とともに営業所に備え置く必要がある。また、開示される書類の適正性を確保するため、一定の規模のものについて外部監査を義務付けるべきとの意見と、外部監査までは求めないが、それに代替するものとして、例えば、前述の供託の義務付けを行うことが考えられるとの意見があった。
(6 )募集規制
保険会社と同様、募集の際の虚偽表示の禁止等の募集規制は無認可共済に対しても課されるべきであり、また、保険募集人登録を要件とすることなどにより、保険募集を行う者の適格性を確保すべきである。
(7 )検査・監督
法令の実効性を確保するため、行政当局の検査・監督の対象とすべきである。な お、現行のソルベンシーマージン基準に基づく早期是正措置まで求めるかについては、業務規模の小さい事業主体に関する指標としての有効性などの実効性について引き続き検討する必要がある。
(8 )セーフティネット
既存の保険では満たされない顧客ニーズや制度補完の役割等の共済事業の意義を踏まえると、取扱い商品の限定等により万一の破綻の場合に契約者などに生じうる損失が限定されるのであれば、セーフティネットを設けることは必ずしも必要ないと考えられる。なお、この場合、募集に際してセーフティネットがない旨の説明を義務付け、保険会社との違いを明確にすべきである。
(9 )移行の円滑化のための措置
新たな規制を導入するに当たっては、現に広範囲の共済契約者が存在していることを踏まえ、移行の円滑化のための配慮が必要であり、その具体的な方策を検討する必要がある。


●郵政民営化の基本方針素案公表(04年8月31日)
 内閣府経済財政諮問会議は「郵政民営化基本方針・素案」を次の通りまとめた。
<素案の概要>
 明治以来の大改革である郵政民営化は、国民に大きな利益をもたらす。
@ 郵政公社の4機能(窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険)が有する潜在力が十分に発揮され、市場における経営の自由度の拡大を通じて良質で多様なサービスが安い料金で提供が可能になり、国民の利便性を最大限に向上させる。
A 郵政公社に対する「見えない国民負担」が最小化され、それによって利用可能となる資源を国民経済的な観点から活用することが可能になる。
B 公的部門に流れていた資金を民間部門に流し、国民の貯蓄を経済の活性化につなげることが可能になる。
こうした国民の利益を実現するため、以下の基本方針に従って、2007 年に日本郵政公社を民営化し、移行期間を経て、最終的な民営化を実現する。

1 . 基本的視点
4機能が、民営化を通じてそれぞれの市場に吸収統合され、市場原理の下で自立することが重要。そのための必要条件は以下の通り。
(1 )経営の自由度の拡大
・民営化した後、イコールフッティングの度合いや国の関与のあり方等を勘案しつつ、郵政公社法による業務内容、経営権に対する制限を徐々に緩和する。
・最終的な民営化においては、民間企業として自由な経営を可能とする。
(2 )民間とのイコールフッティングの確保
・民間企業の経営を不当に圧迫しないよう、競争条件を対等にする。
・民間企業と同様の納税義務を負う。
・郵貯と簡保の民営化前の契約(旧契約)と民営化後の契約(新契約)を分離した上で、新契約につ
いては政府保証を廃止し、預金保険、生命保険契約者保護機構に加入する。(通常貯金については、すべて新契約とする。)
(3 )事業毎の損益の明確化と事業間のリスク遮断の徹底
・各機能が市場で自立できるようにし、その点が確認できるよう事業毎の損益を明確化する。
・金融システムの安定性の観点から、他事業における経営上の困難が金融部門に波及することを遮断する。

2 . 最終的な組織形態の枠組み
(1 )機能ごとに株式会社を設立
・4 機能をそれぞれ株式会社として独立させ、窓口ネットワーク会社、郵便事業会社、郵便貯金銀行、郵便保険会社とする。
(2 )地域会社への分割
(3 )持株会社の設立
(4 )公社清算法人
・ 郵貯と簡保の旧契約とそれに見合う資産勘定(公社勘定)を保有する。
・公社勘定の資産・負債の管理・運用は、郵便貯金銀行及び郵便保険会社に委託する。

3 . 各事業会社等のあり方
最終的な民営化時点における各事業会社等のあり方は、以下の通り。なお、分社化に必要となる法律事項については郵政民営化法案(後述)に盛り込む。
(1 )窓口ネットワーク会社
(ア)業務の内容
・適切な受託料の設定及び新規サービスの提供により、地域の発展に貢献しつつ、収益力の確保を図る。
・そのため、郵便、郵便貯金、郵便保険の各事業会社から窓口業務を受託する。地方公共団体の特定事務、年金・恩給・公共料金の受払などの公共的業務、福祉的サービスなど地方自治体との協力等の業
務を受託する。
・民間金融機関からの業務受託の他、小売サービス、旅行代理店サービス、チケットオフィスサービスの提供、介護サービスやケアプランナーの仲介サービス等地域と密着した幅広い事業分野への進出
を可能にする。
(イ)窓口の配置等
・窓口を住民のアクセスが確保されるように配置するため、設置基準等を明確化する。
・代替的なサービスの利用可能性を考慮し、過疎地の拠点維持に配慮する一方、人口稠密地域における配置を見直す。
・効率化の観点から、フランチャイズ制、簡易郵便局制を積極的に活用する。
・窓口事業の範囲は、原則として郵便局における郵便集配業務を除く郵便、郵便貯金、郵便保険に係る全ての対顧客業務とする。
(2 )郵便事業会社
(ア)業務の内容
・従来の郵便事業(窓口業務は窓口ネットワーク会社に委託)に加え、広く国内外の物流事業を行う。高齢者への在宅福祉サービス支援、道路の損傷などの情報提供サービス等地域社会への貢献サービス
は引き続き受託する。
(イ)サービスの提供範囲
・引き続き全国への郵便サービスの提供義務を課す(ユニバーサルサービス義務)。特別送達等の公共性の高いサービスについても提供義務を課す。
・信書事業への参入規制のあり方については、移行期において検討することとし、当面は現行水準を維持し、その料金決定には公的な関与を続ける。
・ユニバーサルサービスの維持のために必要な場合には、優遇措置を設ける。
(3 )郵便貯金銀行
(ア)業務の内容
(イ)新旧契約の分離
・民間企業と同様に納税義務を負うとともに、新規契約分から郵便貯金の政府保証を廃止し、預金保険機構に加入する。
・公社勘定は公社清算法人が保有し、その管理・運用を郵便貯金銀行が受託する。運用に当たっては、公社清算法人の指示を受け、安全資産で行なう。また、顧客情報の管理を厳格に行なう。
(4 )郵便保険会社
(ア)業務の内容
(イ)新旧契約の分離
・民間企業と同様に納税義務を負うとともに、新規契約分から郵便保険の政府保証を廃止し、生命保険契約者保護機構に加入する。
・公社勘定は公社清算法人が保有し、その管理・運用を郵便保険会社が受託する。運用に当たっては、公社清算法人の指示を受け、安全資産で行なう。また、顧客情報の管理を厳格に行なう。
(5 )公社清算法人
(ア)業務の内容
・郵貯・簡保の既契約を引き継ぎ、既契約を履行する
・郵貯・簡保の既契約に係る資産の運用について、それぞれ郵便貯金銀行及び郵便保険会社に行わせる
(イ)公社勘定の運用
・公社勘定に関する実際の業務は郵便貯金銀行及び郵便保険会社に委託し、それぞれ新契約分と一括して運用する。
・公社勘定の運用は、安全資産で行なう。
・公社勘定については、政府保証、その他の特典を維持する。
・公社勘定から生じた損益は、持株会社に帰属させる。

4 . 移行期・準備期のあり方
(1 )移行期のあり方
民 営化の後、最終的な民営化を実現するまでの間を、移行期と位置付ける。移行期のあり方は、以下の通り。
(ア)移行期間
・移行期間の組織形態
(イ)経営の自由度
・窓口ネットワーク事業においては、試行期間を設けつつ、民間金融商品等の取り扱いを段階的に拡大し、地域の「ミニ・ファミリーバンク」として地域密着型の金融サービスを行う。
・郵便事業においては、国際的な物流市場をはじめとする新分野への進出を図る。
(ウ)郵便貯金及び郵便保険事業の経営
(エ)イコールフッティングの確保
・新会社は、移行期当初から民間企業と同様の規制・監督の下に入り、政府保証の廃止、納税義務、預金保険機構ないし生命保険契約者機構への加入等の義務を負う。
・また、郵便事業については、ユニバーサルサービスの維持のために必要な場合には、優遇措置を設ける。
(オ)移行期の終了
・移行期は遅くとも2017 年3 月末までに終了する。
(2 )準備期のあり方
2007 年4 月の民営化までの時期は、準備期と位置付け、民営化に向けた準備を迅速にすすめる。
(ア)経営委員会(仮称)を設置し、民営化後の経営や財務のあり方について検討する。
(イ)円滑な分社化を図る観点から現在の勘定区分を見直す。
(ウ)新旧契約の分離の準備を行う。
(エ)職員の新会社参加の意向調査を実施し、希望者に対して再就職先の斡旋を行う。
(オ)国際物流事業への進出を開始する。
(カ)投信窓販の提供を可能とする。
(キ)その他の新規事業分野への進出を準備する。
(ク)関連施設等
5 . 雇用のあり方
(ア)民営化の時点で現に郵政公社の職員である者は、新会社の設立とともに国家公務員の身分を離れ、新会社の職員となる。
(イ)人材の確保や勤労意欲・経営努力を促進する措置の導入等、待遇のあり方について制度設計の中で工夫する。
6 . 推進体制の整備
(ア)最終報告の取りまとめ後は、全閣僚で構成される郵政民営化推進本部(仮称)(本部長は内閣総理大臣)を設置し、民営化に向けた関連法案の成立の準備、公社からの円滑な移行及び最終的な民営
化実現への取り組みを進める。
(イ)郵政民営化推進本部の下に、有識者から成る監視組織を設置する。
7.法案の提出等
・以上の基本方針に沿って、政府は早急に郵政民営化法案策定作業を開始する。法案化のための更に詳細な制度設計については、引き続き検討する。
・基本的な法案及び主要な関連法案は次期通常国会へ提出し、その確実な成立を図る。

●総務省、「無認可共済調査」の中間結果を公表(04年6月8日)
 総務省行政評価局は「根拠法の無い共済に関する調査」の中間取りまとめ結果を公表した。近年、根拠法のない共済の実施団体が急増、事業形態も多様化し、消費者保護上の問題が指摘されているが、共済実施団体の詳細な実態が不明なことから、根拠法の無い共済の実態を調査中で、この種共済事業の規制を検討している金融審議会から情報提供要請を受けて行っている。
<中間取りまとめの概要>
@団体名や商品名に「共済」を使用しているものなどについて、総務省行政評価局・管区行政評価局・行政評価事務所の全国調査網により情報を収集し、任意団体等による共済と思われるものを中心に400 強の団体を把握。このうち、これまで299 団体について共済の実施状況等の確認・精査を終了。
その結果、
・実際には共済を実施していなかったもの91 団体
・既に休廃止していたもの8 団体
・パンフレット等で把握した住所にはおらず所在が不明のもの22 団体
・調査への協力が得られなかったもの32 団体
の計153 団体を除く、146団体について、訪問等による実地調査を実施(平成16年4月〜5月)。今回、この調査結果の一部を先行して取りまとめ、公表。
Aまた、公益法人やNPO 法人、企業内共済・互助会等において行われている根拠法のない共済の実態についても調査中。
B根拠法のない共済に関する苦情・相談等についても調査し、年内に、行政上の課題を含めた最終的な結果報告書を取りまとめる予定。
<根拠法のない共済の概況>(平成14年度・146団体分)
1 共済の規模
〔加入件数別団体数]
▼加入件数の合計は約306 万件(104団体):加入件数について、無回答が42 (28.8%)で、20 万件以上3(2.1%)、15万件以上20万件未満5(3.4%)、10万件以上15万件未満2(1.4%)、5万件以上10万件未満9(6.2%)、1万件以上5万件未満14(9.6%)、1万件未満71(48.6%)。
〔共済掛金の年間総額別団体数・共済金支払額の年間総額別団体数〕
▼共済掛金の総額は約473億円(105団体):無回答が41(28.1%)で、10億円以上9(6.2%)、1億円以上10億円未満35(24.0%)、1千万円以上1億円未満42(28.8%)、100万円以上1千万円未満14(9.6%)、100万円未満5(3.4%)。
▼共済金支払額の総額は約209億円(107団体):無回答が39(26.7%)、10億円以上2(1.4%)、1億円以上10億円未満17(11.6%)、1千万円以上1億円未満、39(26.7%)、100万円以上1千万円未満26(17.8%)、100万円未満23(15.8%)。
2 共済の種類
〔共済の種類別団体数〕
▼半数近くの団体が生命・身体に関する共済を実施:生命・身体60(41.1%)、生命・身体を含む複数の共済10(6.8%)、家財27(18.5%)、ペット9(6.2%)、葬儀9(6.2%)、その他(・建物完成保証・遭難時の救援費用補償・休業所得補償・交通反則金補償等)31(21.2%)。
3 共済の対象
[共済の対象別団体数]
▼4分の3の団体が「特定の任意団体の構成員等」を対象とするが、この中には特定の任意団体の構成員になるための要件がないものが7団体(6.3%)あり:特定の任意団体の構成員等111(76.0%)、特定企業の社員8(5.5%)、特定大学の学生9(6.2%)、特定連合会の構成団体の会員16(11.0%)、無回答2(1.4%)。
▼「特定の任意団体の構成員等」になるための要件別団体数:特定の機器・サービスなどの購入者や特定の賃貸業者と契約した入居者39(35.1%)、特定の免許・資格を有することや特定の職業・職種に従事していること28(25.2%)、団体入会金のみ26(23.4%)、特定の地域に居住していること3(2.7%)、その他8
(7.2%)、団体入会の要件なし7(6.3%)、合計111(100.0%)。
▼支払最高限度額:「生命・身体」「生命・身体を含む複数の共済」→死亡時保障額2万円〜1億円、「家財」→家財保障額400万円〜4000万円、「ペット」→ペット通院保障(年間限度額)8万円〜70万円。
4 共済団体
〔事業開始時期別団体数〕
▼半数近くの団体がここ5年の間に事業を開始:昭和24年度〜28年度1、29年度〜33年度1、34年度〜38年度3、39年度〜43年度4、44年度〜48年度4、49年度〜53年度7、54年度〜58年度9、59年度〜63年度8、平成元年度〜5年度14、6年度〜10年度26、11年度〜15年度69。
▼146団体のうち半数近くが東京都内に所在。また7割強が団体名に「共済」を使用。
〔組織形態別団体数〕
▼任意団体129(88.4%)、株式会社8(5.5%)、有限会社2(1.4%)、社会福祉法人1(0.7%)、中間法人1(0.7%)、特定非営利活動法人3(2.1%)、無回答2(1.4%)。
〔職員数別団体数〕
▼4割の団体が専従職員なし:0人57(39.0%)、1〜5人49(33.6%)、6人〜25(17.1%)、無回答15(10.3%)
※職員数0人はすべて任意団体(57)であり、概ね以下のような状況にある。
・団体の代表者は団体設立の資金を提供した法人の代表者が兼務。
・共済事務の処理については当該法人に事務委託。
・団体と法人の所在地も同一。
(これらのすべてに該当するものは11団体)
5 募集・勧誘形態
〔募集・勧誘形態別団体数〕
▼大半は直販・代理所活用であるが、新会員を勧誘した会員に手数料を払う募集・勧誘形態の団体もあり(11団体):代理所を活用(代理所自らの加入不要)66(45.2%)、直販のみ52(35.6%)、会員を活用(新会員勧誘に対する手数料あり)11(7.5%)、特段の募集をしていない13(8.9%)、無回答4(2.7%)。
6 財務内容の開示状況
〔開示対象別団体数〕
▼3割の団体が会員に財産の状態や決算に関する情報を開示していない:会員のみに開示とするもの79(54.1%)、一般及び会員に開示とするもの9(6.2%)、非開示43(29.5%)、無回答15(10.3%)。
※「誰に対して、どのような情報を開示しているか」との問いに対する回答を集計したもの。開示情報の内容については現在、精査中。
7 責任準備金・再共済契約の有無
28 団体(2割)がいずれも未措置。
〔責任準備金の有無別団体数〕
▼3分の1の団体が責任準備金なし:責任準備金あり86(58.9%)、責任準備金なし51(34.9%)、無回答9(6.2%)。
※責任準備金を積み立てていない理由の例(複数の理由を挙げた団体あり)
・小規模な共済であり、そこまでの制度は必要ないと判断したため:5団体
・共済契約内容について、出資元会社が保証するとしているため:3団体
・再共済契約を締結しており、このことで消費者保護は担保されているため:16団体
・給付に支障がない程度の流動資金を保有しているため15団体
・収支決算が赤字であり、財政的な理由で準備金の積立を行うのが不可能な状況にあるため:4団体
〔再共済契約の有無別団体数〕
▼3分の1の団体が再共済契約なし:再共済契約あり88(60.3%)、再共済契約なし49(33.6%)、無回答9(
6.2%)。
再共済契約を締結していない理由の例(複数の理由を挙げた団体あり)
・小規模な共済であり、そこまでの制度は必要ないと判断したため:7団体
・共済加入者は特定の者のみで構成されており、個々のリスクは一般に比して低く、破綻の危険は極めて低いと考えられるため:2団体
・共済契約内容について、出資元会社が保証するとしているため:4団体
・十分な額の責任準備金を積んでいることで、消費者保護は担保されているため:8団体
・給付に支障がない程度の流動資金を保有しているため:4団体
・再共済契約の締結は希望しているものの、その引受先が見つからないため:5団体

●銀行等による保険窓販で金融審WG報告(04年3月31日)
 3月31日、金融審議会金融分科会第二部会の第16回会合で、保険の基本問題に関するワーキンググループから、「銀行等による保険窓販規制の見直しについて」の報告が要旨下記の通り行われた。
<保険WGによる報告の概要>
1 .はじめに
 本年1 月16 日の金融審議会金融分科会第二部会において、「銀行等による保険販売規制の見直し」が、保険に関する主な検討課題の一つとされ、「保険の基本問題に関するワーキング・グループ」(保険WG )において検討することとされた。
これを踏まえ、保険WG においては、本年1 月以降、これまで8 回にわたり検討を重ねてきた。検討は、商品の提供者や利用者等の関係者から広く意見を聴取するなど、幅広い観点から行われた。なお、保険WG の開催状況は別紙のとおりである。
保険WG は、これまでの検討を踏まえ、銀行等の保険販売規制の見直しに当たっての基本的な考え方や論点の整理を行った。保険WG としては、本報告を踏まえ、今後、行政当局において更に実務面での検討も深め、適正な販売規制の見直しを行うことを求めるものである。
2 .銀行等による保険販売についてのこれまでの経緯
 保険募集を行う者については登録制とされており、登録拒否要件に該当しない限り保険募集人となることが認められているが、銀行等及び証券会社については、過去において保険募集をその業務とすることは認められていなかった。
その後、各般の議論を踏まえ、証券会社については、平成10 年の証券取引法改正により、本業以外の業務範囲が大幅に拡大され、保険募集を業務とすることが認められた。また、銀行等については、平成12 年の保険業法改正により、「保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ない場合」に保険募集を行うことが認められた。
その後、銀行等による保険商品の販売解禁は、以下のように2 度にわたり行われてきている。
(1 )平成13 年4 月住宅ローン関連の信用生命保険・長期火災保険・債務返済支援保険(信用生命保険については引受保険会社が子会社又は兄弟会社である場合に限る)、及び海外旅行傷害保険の販売が解禁。
(併せて、信用供与の条件として保険募集を行う行為等を禁止する弊害防止措置が設けられた。)
(2 )平成14 年10 月 個人年金保険、財形保険、年金払積立傷害保険、財形傷害保険の販売が解禁。住宅ローン関連の信用生命保険に係る引受保険会社の限定を解除。
(併せて、保険商品を購入しないことが他の取引に影響を及ぼさないことの顧客への説明等の弊害防止措置が設けられた。)
銀行等による保険販売規制の見直しは、これまで、それに伴うメリットとデメリットとを比較考量し、必要な弊害防止措置を講じた上で行われてきたところである。
今回の見直しに当たっても、銀行等が販売できる保険商品の範囲の拡大のメリットと、これに伴う弊害の懸念を踏まえ、検討する必要がある。
3 .メリットについて
 銀行等が販売できる保険商品の範囲の拡大については、以下のようなメリットがあるとの意見が出された。
(1 )銀行等の参入により販売チャネルの多様化が進めば、消費者がアクセスできる保険商品の選択肢や商品に関する情報が増え、利用者利便の向上が期待できる。
(2 )販売チャネルの適切な競争を通じて販売システムの効率化が進めば、保険料の低廉化により、利用者利益の増進につながり、また、保険市場の拡大も期待できる。
(3 )販売チャネルの多様化は、各販売チャネルの特性を反映した、利用者のニーズに適合する商品開発の促進につながり、市場の発展にも資する。
(4 )銀行等が販売できる保険商品を一部に限ると、保険市場全体の商品構成を歪めることにつながる。また、販売できる商品の規制に合わせるための、ループホール(抜穴)的な商品が出てくるおそれがある。
(5 )少子高齢化など保険業を取り巻く環境が変化している中で、保険会社においても、国民のニーズに適合した商品開発や効率的な販売体制の確立等、変化に対応したビジネスモデルの構築が求められている。こうした観点からも、販売チャネルの多様化が必要である。
4 .懸念される弊害(デメリット)について
 他方、銀行等が販売できる保険商品の範囲について、特に保障性の高い商品を含め拡大する場合には、以下のような弊害(デメリット)や問題点があるとの意見が出された。
(1 )銀行等は強力な販売力を有している。特に融資先に対しては極めて強い影響力を有しており、圧力販売が行われるおそれがある。
(2 )銀行等が保障性の高い商品を販売する過程で入手することとなる健康情報が、融資判断に流用されるおそれがある。
(3 )銀行等は、保険商品の販売を行うのみで、保険の引受けを行わないため、不当に保険加入しようとする者の第一次選択がおろそかになるおそれがある。また、現在の販売チャネルで行われているようなアフターケア等が十分に行われないおそれがある。
(4 )銀行等が、その強力な販売力を背景に、引受保険会社のリスク管理能力を超えた保険販売を行うことや、保険会社を実質的に支配したり系列化することにつながるのではないか。
(5 )不良債権問題の終結に向けた取組を行っている等の現下の状況では、銀行等は本来の業務に徹するべきではないか。
(6 )保険会社の主力商品である死亡保障商品や自動車保険の市場が縮小又は伸悩みの傾向にある中で、新たな販売チャネルが既存の販売チャネルに与えることとなる影響についても考慮する必要がある。
5 .考えられる弊害防止措置
 弊害については、これをどのように防止するか工夫する必要があるが、検討すれば以下のとおり。
(1 )銀行等による融資先への販売
 銀行等が保険商品の販売を行うことの弊害として、特に強い懸念が示されたのは、銀行等が融資者としての影響力に基づき圧力販売を行うことである。圧力販売については、銀行等にその意図がない場合であっても融資先は圧力を感じるおそれがあるとの指摘があった。また、保障性の高い商品について圧力販売が行われた場合には事後的な救済が困難であるとの指摘もあった。
なお、圧力販売については、抱合せ販売(融資の条件として保険販売を行う行為)が既に禁止されており、それで十分に対応できるとの指摘があった。また、そもそも自由であるべき契約を事前に制限することについては慎重であるべきとの指摘も複数出された。
次に、同じく銀行等と融資先との関係の問題として、銀行等が保障性の高い商品を販売する過程で入手することとなる健康情報が、融資判断に流用されるのではないかとの懸念も示された。
これら各般の指摘を踏まえた上で、保険WG においては、銀行等が販売できる保険商品の範囲を保障性商品まで認める場合、新たに認められる商品については、従来の抱合せ販売の禁止に加えて、「圧力販売につながるような融資先に対する保険販売を禁止」することが適当であるとの意見が大勢を占めた。
以上の考え方を踏まえ、保険販売の規制の対象となる、「圧力販売につながるような融資先」の具体的な範囲については、圧力販売の懸念を排除しながら、一方において過剰な規制とならないよう、実務的な問題も含め、行政当局において更に検討を深めることを求めたい。
(2 )適切な情報管理
 情報管理については、銀行等が保険販売業務を通じて得た情報を、銀行等の融資業務等との関連においてどのように取り扱うかという問題と、逆に、銀行等の融資情報や決済情報等を、保険販売業務の関連においてどのように取り扱うかという問題とを区分して考える必要がある。また、後者については、更に融資情報の場合と、決済情報等の場合とを区分して考える必要がある。
まず、保険商品の販売によって得られた健康情報の融資判断への流用という点については、「圧力販売につながるような融資先に対する保険販売を禁止」する措置により問題は相当程度解消されると考えられるが、いずれにしても健康情報については厳格な管理が必要となる。
一方、融資情報については、「圧力販売につながるような融資先に対する保険販売を禁止」する措置を的確に実施するため、保険販売の際に利用する必要があり、適正な手続きやコンプライアンス体制の整備が必要である。
また、その他の情報の取扱いについては、非公開情報保護措置(保険販売業務とその他の業務の間で顧客の同意なく非公開情報の流用を禁止する措置)一般の問題であり、例えば預金・決済等の業務で得られた顧客情報については、顧客の同意なく保険販売に用いられることがないよう、適切に管理することが求められる。
(3 )銀行等の保険販売と保険会社等への影響
 銀行等の保険販売の拡大による保険会社等への影響、具体的には、引受保険会社のリスク管理能力を超えた保険販売を行うことと、保険会社を実質的に支配したりすることの懸念や、既存の販売チャネルに及ぼす影響についての懸念が指摘されている。
こうした懸念については、「圧力販売につながるような融資先に対する保険販売を禁止」する措置を講ずることにより、相当程度緩和されるのではないかと考えられる。また、一方において、販売チャネルの多様化というメリットの享受という面もある。
なお、保険会社が特定の銀行等に保険商品の販売を過度に依存することや、銀行等が特定の保険会社の商品のみを販売することは、リスク管理の在り方や利用者利便の向上等の面から、適切ではないとの指摘もある。一方、保険会社が銀行等とどのような提携をするかは、基本的には保険会社の自主性や経営上の選択の問題であるとの指摘もある。これらの指摘も踏まえ、何らかの対応が必要かどうかについて、実務面も踏まえた検討がなされる必要があると考えられる。
(4 )コンプライアンス体制等の確立
 銀行等における保険販売業務が適切に行われることを確保するとともに、各般の弊害防止措置を有効に機能させていくためには、コンプライアンス体制の整備や苦情・紛争処理体制の活用が重要な課題であり、今後、例えば、銀行等の各営業所に保険商品の販売についてのコンプライアンス責任者を設置するといったことも含め、適切な措置を講ずる必要がある。
6 .基本的方向性と実施時期
 保険WG においては、契約者や国民全体にとっての利益の増進という視点から、銀行等において原則として全ての保険商品を取り扱えるようにすることが適当であり、その際には、以上のような弊害防止措置が適切に講じられることが前提となるとする意見が大勢を占めた。
実施時期については、メリットの実現を目指す観点から、できるだけ早期が望ましい。その際、銀行等での販売体制の整備や弊害防止手続きの確立等のための準備期間を設ける等、円滑な実施を図る必要がある。
以上を踏まえ、銀行等による保険販売規制の見直しについては、本報告後例えば1 年後から段階的に行うこととし、新たな弊害防止措置の実効性をモニタリングしながら、遅くとも本報告後3 年後には、銀行等において原則として全ての保険商品を取り扱えるようにすることが適当であるとの意見が大勢を占めた。今後は、行政当局において、本報告の趣旨を踏まえ、速やかに適切な措置を講じるよう期待する。
7 .その他考慮すべき事項
 その他、銀行等による保険販売規制の見直しに関して、以下のような意見も出された。今後の施策の展開に当たって十分に考慮するよう求めるものである。
― 既存の弊害防止措置に加え、行政当局においても、銀行等による保険販売の適切な実施をモニターするため、例えば現行の「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」のような仕組みを導入するなど監視・監督の強化を図るべきとの意見があった。また、保険会社の経営の健全性の確保のため、行政当局の監督体制の更なる充実を図るべきとの意見もあった。
― 消費者保護に関して、金融商品に関する消費者教育についての施策の充実や、消費者に対する情報提供の充実が必要との意見があった。特に、銀行等の大規模な代理店については、顧客のニーズに応じた商品説明の充実を図る必要があるとの意見があった。また、保険契約の乗換えの不当な勧誘等の防止を徹底することや、苦情処理体制や裁判外紛争解決手続(ADR )を充実・活用することが必要との意見があった。更に、金融商品の販売・勧誘についての横断的なルール整備を検討すべきとの意見もあった。
― 今後、金融について、異なる業態や業務の融合が一層進展していくこととなれば、金融機関が他の業態の金融商品の販売を行うことにより自ら新たなリスクを抱えることになっていくことも考えられ、そのような変化も視野に入れたリスク管理体制を検討していくことも必要になるのではないかとの意見もあった。


●ユナム傷害保険を虚偽の取締役会で行政処分(03年1月9日)
 ユナム傷害保険は平成14年3月11日より4月8日まで金融庁の立入検査を受けていたが、9日、虚偽の取締役会議事録作成などを理由に、金融庁より保険業法第133条に基づく業務の一部停止命令及び同法第132条第1項に基づく業務改善命令を受けた。同社では処分を受けるに当たり、「今回の行政処分を厳粛に受け止め、このような事態を二度と起こすことのないよう、再発防止に向けて全社を挙げて取り組む」とコメント。

1. 行政処分の内容(要旨)
  (1)  保険業法第133条に基づく業務の一部停止命令:平成15年1月20日から2月18日までの間、保険契約の締結及び募集(これに係る保険業法第123条第1項の規定に基づく認可の申請及び同条第2項の規定に基づく届出を含む。また、損害保険代理店に委託しているもの及び再保険を含む。)に関する業務を停止すること。ただし、契約者からの要請を受けて、保険内容の拡充を伴わない範囲内で行う契約継続を妨げない。
  (2)  保険業法第132条第1項に基づく業務改善命令:@ 現地法人形態から支店形態への変更等米国親会社によるガバナンス強化を図ること。A法令等の遵守について、全役職員及び代理店に対する教育・指導を徹底するとともに、法令等遵守態勢の抜本的な見直しを図ること。 B保険募集活動の適正化について、全役職員及び代理店に対する教育・指導を徹底するとともに、保険募集管理態勢の抜本的な見直しを図ること。

2. 行政処分の理由となった行為
  (1)  取締役会の最低水準3名が実質的に維持されておらず、前代表取締役社長の指示により虚偽の取締役会議事録の作成が行われていたこと、事業免許申請時から常勤監査役が事実上不在であったこと等、取締役会や監査役会の運営について商法等に違反する事例が認められたこと
  (2)  保険募集活動において、契約者が被保険者(加入者)からそれぞれの保険料を徴収し一括して保険会社に収める場合に保険会社が契約者に対して支払うことができる集金事務費を、集金事務を実質的に行っていない一部の契約者に対して支払っていたこと等が、保険業法第300条第1項第5号に定められた「保険契約者又は被保険者に対して、保険料の割引、割戻しその他特別の利益を提供する行為」に該当すると認められたことや、保険業法第275条第1項第2号に違反して、同法第276条に従った登録を受けていない特定の外部の者を通じて一部の保険募集を行っていたこと
   
3. 再発防止策の実施について
  (1)  業務改善命令に従い、すでに取り組みを開始している諸策(下記(2))に加えて、抜本的かつ適切な改善策を講じる。
  (2)  昨春の検査終了直後から全社を挙げて取り組んできた改善策の継続またはフォローアップを行い、法令違反の再発を不退転の覚悟で防止して、業務運営の適正化を実現する。
<これまでに実施を決定し開始した業務改善策の例>
・ コンプライアンス室の独立・専任体制化(社内各部門の業務監査機能を併せ持つ)
・ コンプライアンスを人事考課の一項目とすること等によるコンプライアンス意識の徹底
・ 役職員教育の実施(コンプライアンスおよび契約募集制度や商品・料率制度等の再徹底)
・ 代理店の教育・指導の徹底
・ システム及び体制の強化・改善による保険料チェックの徹底
・ 募集文書の審査体制の確立と審査の徹底

4. 契約者及び代理店への影響について
  平成15年1月20日から2月18日までの間(30日間)、同社店舗及び代理店等において、全ての保険契約(契約者の意向を受けて保険内容の拡充を伴わない範囲内で行う契約継続を除く)の締結及び募集に関する業務を停止する。

5. 人事:前代表取締役社長は昨年(平成14年)3月に退任。


●アクサ生命に業務改善命令(02年9月25日)
 アクサ生命・アクサグループライフ生命ともに、福祉団体定期保険について加入率が事業方法書に定める水準を下回り、本来そのままでは契約更新が行なえない団体があるにもかかわらず、関係書類の記載計数を嵩上げして契約更新を行なうとの、不適切な行為が確認されたとして、25日に金融庁は保険業法第132条第1項の規定に基づく業務改善命令を発出。両社は今回の処分を厳粛に受け止め、業務の改善と適切な運営に全社を挙げて取り組むとともに、従来にもましてコンプライアンスの徹底を図り、信頼回復に向けて努力していくとしている。
《業務改善命令の内容》
(1)法令等遵守体制について、会社組織内の改善を図るとともに、法令等遵守について、同社役員、使用人及び生命保険募集人に対する教育・指導の一層の充実強化を図ること。
(2)福祉団体定期保険の契約更新についての適否を含め契約内容の点検・確認体制を改善すること。
(3)福祉団体定期保険の保険契約の更新要件である加入率を充たしていない団体について、加入率の改善を図る、あるいは代替商品への転換を図るなど適切な措置を講ずること。
《改善への取り組み》
 両社では改善への取り組みとして、保険募集および契約内容の点検・確認体制全般の見直しにより、@法令遵守体制を再構築するとともに、再発防止のためのコンプライアンス教育を強化、A福祉団体定期保険における契約内容の点検・確認体制の改善・整備を図るとともに、加入率のチェック体制を強化し、再発防止を図り、加入率を充たしていない団体に関しては早急に改善を図る。


●損保ジャパンに業務改善命令(2002年8月2日)
 2001昨年8月31日から10月12日まで金融庁の立入検査を受けていたが、8月2日、金融庁から法令等遵守および保険募集活動の適正化につき業務改善命令を受けた。
1.業務改善命令の内容(保険業法第132条第1項の規定に基づく業務改善命令)
@法令等の遵守について、全役職員および代理店に対する教育・指導の充実・強化を図るとともに、会社組織における法令等遵守態勢の抜本的な見直しを図ること。
A保険募集活動の適正化について、全役職員および代理店に対する教育・指導を徹底するとともに、実効性のある保険募集管理を確保するために社内態勢の抜本的な見直しを図ること。
2.業務改善命令の原因となった行為
@自動車保険で、顧客の意思確認を行わずに特約を付帯するなどの不適正な契約締結について、社内調査で把握していたにもかかわらず改善が徹底しておらず、保険募集管理態勢に実効性を欠いていたこと。
A1営業店において代理店の保険料流用費消の事実を把握していたにもかかわらず、社内報告手続きを怠ったうえに、当局に対しても速やかに事実の届出をしなかった。さらに、当局検査で、代理店主の呼び出しならびに求められた書類提出にも速やかに応じなかったなど、法令等遵守態勢に実効性を欠いていたこと。
3.今後の再発防止策
@内部牽制部門について役員の担当を専任とした、A検査部の人員増強を実施、Bコンプライアンス部門を法務部門から分離し人員を増強、C営業第一線の牽制部門として本店および全地区本部の20カ所に業務管理室を新設し、総計60名の専任者を配置、D法令等遵守の状況を評価制度へ反映させる仕組みとした−−の対応を行い、保険募集管理態勢及び法令等遵守態勢の充実・強化を図るとともに、全役職員および代理店に対する教育・指導を徹底していく。
4.社内処分
全取締役の役員報酬の一部返上と併せて、関係者の厳正な社内処分を実施。


●日動火災に業務改善命令(2002年8月1日)
 8月1日、金融庁から保険業法第132条第1項の規定に基づく業務改善命令を受けた。先の業務停止命令期間中(5月8日〜10日)における違反行為に関し、業務改善命令を受けたもの。
1.業務改善命令の内容
 損害保険代理店に法令等遵守を徹底させるための本店の統制力を強化する方策を含め、法令等遵守体制の整備・充実を図ること。
2.業務改善命令の理由となった違反行為の内容
 平成14年4月25日付で保険業法第133条の規定に基づき発令された「平成14年5月8日から平成14年5月10日までの間、自動車保険(自賠責保険除く)の保険契約の締結および保険募集(自動継続契約を除き、他の保険会社および損保代理店に委託しているものを含む)の業務の停止を命ずる」行政処分に違反して、平成14年5月8日から平成14年5月10日までの間に自動車保険の保険契約の締結および保険募集を行ったこと。 
3.今後の改善取り組みについて
 同社では、「改めて全社を挙げて、法令等遵守の徹底に取り組むとともに、代理店、社員に対し、保険募集に係る教育・指導の徹底に努めていく。また、当該違反行為の関係役職員に対しては厳正な人事処分を行う。なお、具体的改善計画の策定等に関しては、親会社であるミレアホールディングスとも十分に連携をとる」としている。


●日動火災が認可外予定利率使用、不正申請で一部業務停止(2002年4月25日)
 金融庁は25日、日動火災に対し、保険業法133条に基づく業務の一部停止命令を発出。行政処分の対象となった違反行為は、@積立自動車保険において、一時払保険料の算出に使用する補償保険料にかかわる予定利率を1%で認可を受けていたにもかかわらず、実際には2%を使用していたなど、認可内容に違反した運用を行っていた、A特約の認可取得に際し、他社と同水準の保険料率とするため、料率算出の基礎となる自社データを変更のうえ、自社の真のデータと偽って説明を行い認可を取得した――など、不適切な商品申請を行っていたこと。
 同社では「契約者、関係者に衷心よりお詫びする。今回の処分を厳粛に受けとめ再発防止に向け、全社を挙げてコンプライアンスの徹底に取り組む」とコメント。
 【行政処分の内容】
 (1)業法133条に基づく業務の一部停止命令:@5月8日〜10日の3日間、自賠責保険を除く自動車保険の契約締結および保険募集(自動継続契約を除き、他の保険会社・損保代理店に委託しているものを含む)の業務を停止すること。A5月8日〜6月7日の間、123条1項の規定に基づく認可申請および2項の規定に基づく届出に関する業務を停止すること。
 (2)業法132条1項に基づく業務改善命令:以下に関して、具体的で実施時期を示した業務改善計画書を5月2日までに提出すること。@保険商品の認可申請・届出に関する管理体制を抜本的に見直し、再構築を図ること。A全社組織における法令等遵守体制の整備を図ると共に、法令等の遵守について役職員への教育・指導の充実強化を図ること。B認可申請の内容と異なった内容で保険契約を締結した契約者等に十分な事情説明を行うと共に、必要に応じ保険料の返還等の対応を行うこと。
 【日動火災の再発防止策】
 金融庁による行政処分を受け、かかる事態を2度と起こさぬよう、以下の点を中心に内部管理体制の改善・強化を行っていく。
 @商品部門において開発・運用を担当する社員はもちろんのこと、役職員全員がコンプライアンスに関する研修・指導を徹底的に行う。A認可申請書・届出書作成時点での点検を強化し、さらに法務コンプライアンス室による認可申請書・届出書の事前点検、確認を行う。B内部検査の強化を図る。
 【契約者への影響について】
 業務停止期間中、全国の部支店・課支社、代理店等において自賠責保険を除く自動車保険の保険契約の引受に関する業務を停止する。現在契約している自動車保険契約は有効に成立しており、業務停止期間中も事故の受付・相談を含めた保険金支払に関する業務は通常通り行う。
 【業績への影響】
 全役職員挙げて信頼回復に励み、業績への影響を極力軽微に止めるよう努力する。
 【人事処分】
 全役員の賞与を全額返上する。本社の役付役員の月例報酬を減額する。関係する従業員に対して厳重な処分を行う。


●10月からキャリア規制なしでの生保個人年金など窓販拡大(2002年3月19日)
 金融審議会金融分科会第二部会(座長:福井俊彦富士通総研理事長)は3月19日、 第10回会合を開き、銀行等における保険商品の窓口販売について審議し、10月1日からキャリア規制なしでの個人年金保険(定額・変額)など窓販商品の拡大を決めた。
【審議内容】
1 .銀行等における保険商品の窓口販売は、次の商品を対象として、平成13年4月1日から開始されたところ。
 ○ 住宅ローン関連の長期火災保険・債務返済支援保険・信用生命保険 、○ 海外旅行傷害保険
(注 )住宅ローン関連の信用生命保険は、窓口販売を行う銀行等の子会社・兄弟会社である保険会社の商品に限定されている。
 上記解禁の際、対象保険商品の拡大等については、実施状況をみながら更に検討を行い、平成13年度中に改めて結論を得ることとされていた。
2 .これを受け、今般、利用者利便の向上、販売チャネル間の競争の促進、保険契約者保護等の観点から検討を行った結果、以下のとおり見直すこととし、今後、パブリック・コメント等の手続を経て、所要の規定の整備を行うこととする。
(1) 次の保険商品を窓口販売の対象として新たに加える。
 ○ 個人年金保険(定額、変額)、財形保険、年金払積立傷害保険、財形傷害保険 
(2) 現在、銀行等が窓口販売できる住宅ローン関連の長期火災保険・債務返済支援保険・信用生命保険については、対象物件が専用住宅であるものに限られているが、これに店舗併用住宅を加える。  
(3) 現在、住宅ローン関連の信用生命保険は、窓口販売を行う銀行等の子会社・兄弟会社である保険会社の商品に限定されているが、この規制を撤廃する。
3 .今回の規制緩和に併せて、以下のような弊害防止措置等の充実を図ることとする。
 ○ 銀行等が保険商品を販売する際に、保険商品を購入しないことが他の取引に影響を及ぼさないことについて、顧客への説明がなされるための措置を講じる。
 ○ 銀行等が変額個人年金保険を販売する際に、融資を受けて保険料に充てた場合、当該商品が元本割れすると、借入金が残ることについて、顧客への説明がなされるための措置を講じる。
 ○ 銀行等が住宅ローン関連の信用生命保険を販売する際に、住宅ローンの返済に困ったときの相談窓口(当該銀行等の内部及び外部の相談窓口)について、顧客への説明がなされるための措置を講じる。
 ○ 銀行等の内部でマニュアルを策定して研修を実施するとともに、内部検査を行うなど適切な募集体制を整えることを求める。
 ○ 銀行等による保険商品の窓口販売の際に発生したトラブルについて、保険業界に設けられた紛争処理の場で解決を図る場合には、募集を行った銀行等にもその場への参加が義務付けられるようにする。
4 .上記2.及び3.の措置を平成14年10月1日から実施する。
5 .なお、対象商品の更なる拡大については、平成14年10月1日以降の実施状況をみながら、引き続き検討を行い、平成15年度中に結論を得ることとする。


●日本生命に不公正募集で行政処分(2001年11月1日)
 金融庁は1日付で他社を誹謗・中傷するような資料を作成し不公正募集を行ったとして、日本生命に対し次の業務改善命令を発出。
 【日本生命に対する行政処分】
 日本生命について、保険契約等に関する事項であって保険契約者等の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて、誤解させる恐れのある資料を作成し、保険契約者等に配布・提示していたことが確認された。この行為は保険業法300条1項9号に基づく同法施行規則234条4号に抵触する。このため、本日、同社に対し、保険業法132条1項の規定に基づき、以下の内容の行政処分(業務改善命令)を行った。
 1、法令等の遵守について、役員、使用人、および生命保険募集人に対する教育・指導の徹底をはじめ、会社組織における法令等の遵守体制の整備・充実を図ること。
 2、保険契約者等に対して、保険契約等に関する事項でその判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて、誤解させる恐れのあることを表示等する行為の再発防止のための実効性のある対策をとること、および内部牽制体制を整備すること。