●東洋経済保険特集号の過去論文要旨(05年5月4日)
(週間東洋経済03年版保険特集号巻頭論文:山野井良民著作元稿の一部に加筆)
「縮む生保」の勝つビジネスモデル
少子高齢化による市場縮小、デフレ・超低金利による資産劣化と逆ざや、団塊世代の死亡保障市場からの退出、脱落した不在籍営業職員が生み出す大量の「孤児化」契約の解約など、縮む一方の日本の生保産業。国内生保・外資系生保・損保系生保各社の「勝つビジネスモデル」のあり方を探る。
☆勝つ手順は見えている 一気に生まれ変わればいい
朝日生命が勝ち組になる?!
環境変化に適合すべくストック&フロー改革を進め、一気にビジネスモデル転換を断行すれば、見合う答えが出るだろう(図1)。
同社経営改革の第1段階、昨年度のプロジェクトRで人と資産のリストラ(内勤社員の4割削減、団年撤退・団保縮小、国内株式を総資産の8%以下にするなどリスクアセットの削減)を断行した。
今年度は第2段階のサクセスAで、利益の98%を稼ぐリテール市場特化推進商品として、団塊世代の第3分野へのニーズ移転を先取りしたシニア専用の介護・医療保障型ユニバーサル商品を4月に発売。320万顧客中、43%を占める50歳以上の顧客への転換受け皿商品(利下げ効果と利率変動責準による運用負担軽減効果)の位置付けだが、5月末販売実績1万9500件の中で、同社と過去未取引の純新規客が約4割もあった。
抜本的なフロー改革として収益管理体制を見直し、BPI=業務収益指標による営業拠点管理を実施。これに伴い、国内生保で初めて業績指標の新契約S(保険金額)ベースを全廃し、収益連動性の高いP(保険料)ベースの評価体系を導入した。営業拠点の一律業務運営も廃止し、地域市場に合わせて継続重視型3割、陣容重視型3割、バランス型4割の拠点ビジネスモデルを策定した。後は現場完結型の業務運営改革と生産性を最大化する営業関連職員の給与改革を一気に仕上げれば、同社のビジネスモデル転換は完成する。
藤田譲社長は、「かけがえのない社員の犠牲との引き換えで決断した以上、必ず成功させる。資産デフレとの戦いに勝利した時、改めて迎えに行くつもりだ」と、思いを秘めてきっぱり語る。
☆旧破綻生保営業職員が外資系で勝利の感涙
破綻生保(旧協栄生命)が瞬く間に勝ち組になった。ジブラルタ生命(GIB)の旧会社在籍の女性営業職員(LA社員)が兄弟会社プルデンシャル生命(POJ)の男性LP社員同様に、オープニングインタビューから始まるニードセールスを実践し、すでに同社は国内大手生保を上回る生産性を上げている(表2)。新契約高53%増(02年度)というマクロな数値より、純新規契約の13月目継続率91%、LA社員1人当たり月平均新契約件数3・8件の生産性数値は他社の女性営業職員チャネルを圧倒的に凌駕する。
また、女性LA社員がニードセールスの基本動作を習慣化する基礎訓練法である「3W」(1週間に新契約を3件獲得し、毎週欠かさずに継続する取り組み)にも挑戦している。連続50週で本社表彰するが、今年6月時点で連続50週達成者が累計43人、連続50週2回目(100週連続)達成者が9人もいる。国内社の実態に照らして、これはもう驚異と言う他はない。営業管理職(支社長・支部長は採用・育成業績評価)、LA社員(新契約・継続業績評価)ともどもフルコミッション制で、営業職員に本業のセールス以外に採用・育成業務を強いる悪しき風習はすでにない。
7月の社長杯コンベンションで優績者300人とその家族1人ひとりを称賛し、2年半前に破綻の悔し涙にくれたばかりのLA社員に勝利の感涙を流させたティモシー・E・ファイギー社長は言う。
「LA社員は劇的な体制変化によくついてきてくれた。彼女たちは立派に勝利した。POJをフェラーリに例えるなら、GIBは大衆車から高級車まで扱うトヨタブランド。彼女たちと共に、プルデンシャルグループ初の女性LA主体の世界に誇れるビジネスモデルを必ず確立する」
☆縮小する生保マーケット、第3分野市場はバラ色か
少子高齢化とは直截に言えば人口減少を意味し、生保マーケットは縮んでいく。2010年の個人保険保有契約高は約1割縮小する(2000年対比=02年版本誌拙稿参照)。分かりやすく言えば、シェア1割の大手生保1社分が消滅する激変なのだ。縮む生保マーケットの中で、子育てを終えた団塊世代を中心に第1分野から第3分野へのニーズ移転が顕著になるという構図であり、第3分野の拡大によって生保マーケット全体のパイが拡大することはない。では第3分野市場とは果たしてバラ色の世界なのだろうか――第3分野のうち、医療保険(単品医療・ガン保険+医療関係特約)の向こう10年間の保険料規模を推計すると、03年度3兆3829億円→2012年度3兆3760億円(可処分所得推移を考慮しない数値では3兆4668億円)となり、単品商品の増加分と、主契約の死亡保険の落ち込みに連動する医療関係特約の減少分が相殺され、医療保障分野全体のパイはほととんど横這いで推移する(図2)。
今後、ストックの傷みが長期化するということは、ひたすら生産性を上げてフロー収益を極大化し、すべてのコストを賄ったうえで内部留保を厚くし、着実に純資産価値の増大を図っていくことが生保経営の鉄則となる。国内生保の利源別損益は死差・費差がプラス、利差がマイナスだが、実態は死差の安全率でどうにかしのいでいる状況にある。各社ともALM重視の確定利付資産化を進めて利差損益変動の極小化を図っているが、ALM重視とは究極のところ、利差益の放棄に他ならない。商品体系も責準のウェートを抑制するか(第3分野商品)、運用リスクを顧客に転嫁するか(変額商品)に収斂して行く中で、やがて生保がフィービジネスに変身して行くかもしれない。
入口のフロー統計もリスクテイクを本業とする損保のように積立除く正味収保(危険保険料+付加保険料)ベースで捉える必要があるようだ。生保会社が自律的に差配できるのは費差損益のみだが、価格競争が進行する中で、死亡保険から第3分野へのニーズ移転が顕著になるということは、端的に低ローディング(付加率)化の進行を意味する(定期保険約40%→医療・ガン保険約20〜25%)。ローコストオペレーションを断行するのみである。
営業職員に採用・育成業務まで兼務させ、挙げ句2年以内に8割も脱落させ、不在籍職員の契約が孤児化(担当者不在のまま放置された契約が保有契約の5割前後を占める)し、これが解約・失効の高止まり、すなわち保有純減の主因になっている。生保のビジネスモデル転換に時間的猶予はない。
☆〈国内大手生保〉デパート型営業の4社は厳しい舵取り
国内大手4社は好むと好まざるとに関わらず、リテール・ホールセール市場に両足を置いて、ヒト・モノ・カネが嵩む労働集約型の総合デパート営業を継続せざるをえない(表1)。「環境要因は分かっていても、像がネズミには変われない」(大手生保経営者)のが正直なところ。巨像の大手4社の死亡S重視のマーケティングは不変で、低ローディングの第3分野市場に傾斜することはない。
日本生命は、01年度から収益原価事業費率方式(新契約価値で当年度事業費を割り戻した数値)によるローコストオペレーションを挑戦している。フルラインサービス・プラットホームの保険口座を拡充(現在の契約者単位の名寄せ→家族単位の名寄せ)で顧客世帯管理を指向しつつ、エリア担当制の営業職員5万8845人を配置し、営業職員1人当たりの顧客数を従来の200人から170人まで絞り込み、生産性向上に注力している(他に保全スタッフ約1000人)。代理店チャネルも6070店(税理士2500店、金融機関350店、その他3200店)抱えるが、死亡Sウェートは2%に過ぎない。定期付医療終身保険のがん保険付帯契約は73万2900件で11・8%減(02年度)と、特に第3分野でアクセルを踏んでいないことが分かる。
「死亡S主体の総合デパート経営を守りつつ、市場の変化に対応する。定期付医療終身保険も死亡保障あってこその商品であり、死亡保障市場が成熟化しているとはみなしていない。死亡保障を主体に、医療・介護・老後の資産形成といった生存保障ニーズにも応えるのが生保会社の使命」(石橋三洋・日本生命副社長)
第一生命は国内生保中、最も「選択と集中」がはっきりしている会社だ。他業の損保(損保ジャパン)と第3分野(がん保険=AFLAC)は外注で済ませ、第1分野に資源集中している。日本経営品質賞を受賞(01年度)した企業価値の源泉となる経営理念「生涯設計」が同社の一貫したコアバリュー。P/Lベース、B/Sベースの業界最高水準の部門別収益管理体制による「揺らぎのない経営」が最大の強みと言える。
森田富治郎社長は、「営業職員1人当たりの顧客数は約250人で、生産性を上げるにはさらに陣容拡大が必要。個人能率の概念も保有を重視する考え方に変え、会社の収支構造と給与体系の最適調和を図っている。940万顧客に生涯設計を提供する責務を負っており、短い保険を回して行くような回転商いはできない。老後の生活保障まで一貫して堂々と大きなお世話をやかせてもらうのが、生涯設計の思想だ」と語る。
明治安田生命(合併時)は生保・年金、医療・介護保障、損保(団保関連の管財市場は合併損保子会社で扱い、リテール市場での併売損保商品は日本興亜損保と代理代行)、アセットマネジメントの事業ドメインを策定。
「来年1月の合併をインパクトに顧客数と顧客基盤を深堀し、顧客シェアで勝ち抜くビジネスモデルを構築する。@ギャランティード(元本保証の貯蓄性商品)、Aプロテクション(保障性商品)、Bインベストメント(投資性商品)の3つのマネーをコアビジネスとするのが生保会社の強みであり、リテール、ホールセールの両面でトータルサービスを提供する」(金子亮太郎・明治生命社長)
明治生命は一足先に5月から、保有・継続重視型の新しい営業職員月例給与体系を導入。資格・勤続対応部分15%(従来40%)、保有対応部分25%(3%)、新契約対応部分60%(57%)の割合で、保有対応部分に本人以外の職員が募集した契約も含め既契約者フォロー活動を評価する顧客担当給を新設し、孤児化契約対策を給与体系に織り込んだ。
住友生命は02・03年度合わせて事業費500億円を削減、ローコストオペレーションを基礎固めする。同時に保有純増反転を目指して、「顧客密着こそ生保会社本来の強み」(横山進一社長)と、顧客密着型ビジネスモデルへの転換を急ぐ。不在籍職員の高額孤児化契約(担当者が不明確25%、1年間無訪問36%)対策として、保全サービス専任者950人(法人、S5000万円以上担当=内勤総合職200人、大都市部の定期付終身S2000万円以上担当=250人、それ以外の地域の同担当=500人)を配置する。
☆〈国内中堅生保〉リテール特化のスーパー型営業が勝つ
リテール市場で固有の純増基盤を保有、またはニードセールスによる純増マーケティングを確立している富国生命、大同生命、太陽生命、ソニー生命は収益重視時代の勝ち組として発展する。
来年4月、三井住友銀行など旧三井系金融グループ主体の出資支援(主に既拠出分の振替出資)で株転する予定の三井生命は、07年度までの5ヵ年計画でビジネスモデル転換を行う方針だが、三井系の安全ネットに乗っているためか、仕上げの期限設定に切迫感が感じられない。株主はEV(純資産価値+保有契約価値)を重視するもので、03年度末で総合職・業務職の5割削減(対01年度始)、営業組織のフラット化(支社・営業所の統合=営業部体制移行)、保有重視型の給与体系移行、総合職+保全部隊による孤児化契約対策は評価するだろうが、保有純増に直結しない先行投資施策(資産形成市場へのPMMサービスなど)を確たる将来収益とみなすかどうか。
純増マーケティングの創始会社・富国生命は、昭和22年度以降純増を継続している。昭和30年代から継続率改善の取り組みが始まり、56年度下期の全国支社長会議で古屋哲男社長(現相談役)が「失効・解約防止による保有純増へ向け万全を尽くせ」と訓示、これを契機に経営方針として同社の保有純増主義がスタート。「利差・死差で食えた当時に、効率化して費差を出せ、確実に残る契約を取って保険料収入を継続させなければならないと言われた。保険収益の原理原則を叩き込まれた」と、秋山智史社長は言う。以来、官公庁を主体に継続率の高い職団市場開拓に注力、現在これが個人保険の3割強を占め純増基盤を形成。契約時の「初回3訪」(内容確認、引き落とし前、引き落とし直後の3回訪問)に象徴される基本動作の励行、「取った人が守る」保全文化、継続率と賞与のリンケージ等々、保有でものを考える風土が定着しており、解約失効率は業界平均10%前後に対し、同社は6%程度の低水準に保たれている。
商品・チャネル・市場特化の代表例がT&Dグループの大同生命、太陽生命である。両社の商品特性から逆ざや負担も軽微であり、今後、国内生保中、最も高い収益成長が確実視される。また、株転に伴う過去法・未来法の2回にわたる膨大な社員寄与分計算、EV数値開示により、自らの契約単位の収益構造を把握できたことが、さらなる経営革新の最大の糧となる。収益性の高い法人定期保険に特化し、他生保が攻略不可能な堅牢なピラミッド型構造の税理士チャネルに支えられた大同生命。人口20万以上の中核都市部限定の主婦市場への特化、国内生保唯一のフルコミッション給与体系、支社内支部制などによる外資系同型のローコスト構造を持つ太陽生命。相互に市場がバッティングしない「強み×強み」の希な組み合わせで両社は来年4月に持株会社統合する。
「契約者=被保険者=主婦の独自のマーケティングは不変だが、現在は旧来の短満期貯蓄性商品からS1000〜2000万円の主婦向け保障性商品にウェートシフトしつつあり、今期8・7%の保有純増とEV値向上を見込む」(大石勝郎・太陽生命常務取締役)
POJと同根で、男性LP社員主体の国産スポーツカーブランドのソニー生命は、親会社の業績悪化に伴う欧米外資へのM&Aの迷判断?で右往左往させられた。国内生保では断トツの生産性を誇るが、同根の外車スポーツカー・POJとの性能比較では、LP社員1人当たりの個人保険の生産性(99〜01年度平均値)は、@月平均新契約高=ソニー生命8711万円:POJ1億3675万円、A月平均新契約件数=ソニー生命9・76件:POJ8・20件、B25月目契約継続率(契約高ベース)=ソニー生命85・5%:POJ89・4%と、販売網の拡大に伴いややセダン型にシフトしつつある。ローコストオペレーションのために10年前から代理店チャネル開拓を進めているが、収保ウェートはLP社員85%、代理店14%、通販1%で、同社の骨格はLP社員。顧客世帯名寄せ管理が可能な「セールスプロセス管理システム」を構築、35歳前後の中核顧客層の幅を広げるインフラも整備した。
「代理店と競い合うことでLPも伸びている。既存顧客層の裾野を広げるため、LPを1万、2万人と増やして規模と生産性をバランスさせて行く」(沖雅博副社長)
☆〈外資系生保〉米国の勝ち組が日本市場でも勝つ
なんのことはない、生保分野でAIG、プルデンシャル、健康保険分野でAFLACと、メトロポリタンを除く米国市場での勝ち組がそのまま日本市場でも勝ち組になっているという構図だ。当面、利差益が望めない日本の生保市場で資本投下効果を待つ余裕のない外資系撤退生保や崩れる行く国内生保の食物連鎖の頂点に立つのは、投資余力のある米国の勝ち組生保だ。アリコジャパンに加えて、AIGスター生命(旧千代田生命)、GEエジソン生命(旧東邦生命・セゾン生命)と、相次ぎ食物連鎖で傘下に収めたAIGのドナルド・P・ケナック、日本・韓国地域社長は、こう語る。
「米国市場の経験では、3社がそれぞれの顧客基盤に合わせたビジネスモデルであることが大切。相似点もあれば相異点もあるが、不経済な合併はやりたくない。各社個別にみれば、それぞれ1、2%程度のシェアしかなく、他社と競合することはあってもグループ内ではバッティングしない。AIGにとって見ればまだ96%が未開拓市場で、販売チャネルを拡大すれば日本での保険ビジネスはもっと伸びる。今後とも良い機会があれば買収したい」
アリコジャパンは創業30年で、米国アリコ全体の収保の約8割を占めるまでに成長した。AIGの中でも、同社は4本柱のチャネルが併存する珍しいビジネスモデル。新契約収保のウエートは、@男子営業職員(専属エージェンシー)40%、A代理店25%、B直販25%、C窓販10%で、いずれも対前年2桁の伸展。商品・チャネルのマトリックスでは、対面チャネルの@Aは第1分野の個人保険・中小企業グループ保険と第3分野商品、Bは主に個人の第3分野商品、Cは年金。価格は1物1価(ローディングは各チャネル共通)だが、各チャネルの顧客層・手数料水準により価格水準が異なる売り方をしている。いずれも収保の3〜4割が第3分野で、対前年3割以上の伸展。収益性が高いのは第3分野を主体とする通販、代理店チャネルで、専属エージェンシーは収保占率は高いものの、第1分野の運用負担の重い商品を扱うため収益性は低い。プロフィットセンターで、チャネル別・商品別にトップ&ボトムラインの販売量と収益指標を設定、毎月検証する。
「マイナスが出れば販売商品やマーケティングを即変える。各販売店にも販売量と収益のポートフォリオを設定している。伸展率は必ずクリアしないといけない。負けることは許されないのがAIGのDNA」(宮本富生社長)。
米国プルデンシャル・ファイナンシャル(PFI)はここ数年、健康保険部門、証券部門、損保部門を相次ぎ売却または合弁方式に移行する一方、変額年金大手のアメリカンスカンディアを買収、コアビジネスを生保と個人資産運用分野に再編した。PFI生保部門に占める日本の生保ビジネスのウェート(02年度保険料等収入ベース)は25%(POJ11%、GIB14%)で、日本市場での自力成長とM&Aの機会を窺う。米国プルデンシャル生命はLP社員(専属エージェント)と独立代理店を2本柱に据えているが、POJはほとんど原理主義的に少数精鋭のLP社員(2200人のうち、女性30人)体制一本のビジネスモデルで突き進んできた。重い死亡保険主体のオペレーションは業界最高の生産性があってこそ維持できるもの。前田一雄社長は、「この先もLP社員一本で行く。モラル、教育を徹底し、最優のサービスを提供するには専属エージェントが最適だ。LPの数を増やして売りやすいからと第3分野に傾斜するつもりもない。死亡保障と老後の資産形成を軸にLPが付加価値の高いコンサルをする保険会社――これがわれわれの誇れるビジネスモデルだ」と明快に語る。
新契約収保ベースで、AFLAC日本社は米国本社計上分の45%のウェートを占める。01年以降の第3分野市場解禁が危機バネになり、02年度末個人保険保有件数で日本一の座に着いた。団塊世代の死亡保険全盛の昭和49年11月開業当初、大蔵省にもキワモノ扱いされたがん保険の会社がいま市場のど真ん中にいる。
「第3分野へのフォーカスを守り、経営戦略の骨格はがん・医療・介護保険のリーディングカンパニーであり続けること。市場競争により緊張感が生まれ、顧客にとっての付加価値が高められることで、パイの成長を促す」(チャールズ・D・レイク社長)
第3分野商品で勝つポイントは「安くて早い」こと。第3分野商品の収益管理は費差、死差のコントロールが主体。先発会社として開業以降、様々な問題が発生し、一つ一つ克服してきた経験がノウハウとなり、今日、他社にない優位性となっている。軽い第三分野に特化し、企業代理店による職域回覧募集システムを構築し、代理店介在型通信販売を含めオール代理店チャネル(3月末で法人5369店、個人代理店7189店)によるローコストオペレーションを実現、第一生命(代理代行社)をして「外注のほうがトク」と言わしめた。「生きるための保険」の必須要件の給付金支払は原則2・2営業日までに実行している。
☆〈損保系生保〉低い生産性、プロ代理店の企業化がカギ
米国ステートファームの生保部門が短期間のうちに大手の一角に入ったように、損保から生保への参入は本来成功しやすい。独立代理店の顧客管理能力が優れていることがその主因で、日本でもプロ代理店の企業化がカギとなる。
上位3社のチャネル別の収保ウェートは、東京海上あんしん生命はプロ代理店60%、直販社員(260人)10%、その他(金融機関・ディーラーなど)30%。INA生命時代からチャネルが多様化している損保ジャパンひまわり生命は直販社員(116人)3%、通販2%、親会社委託代理店75%、その他(税理士などINA時代からの独自チャネル)20%。三井住友海上きらめき生命は、プロ代理店55%、その他45%。
「体験的ノウハウを持つプロパー営業社員200人を段階的に親会社の営業現場に出向させ、プロ代理店にニードセールスを直接指導する。収保ウェートは第1分野6割、第3分野4割で、収益性の高い定期保険を主体に生産性を上げる。損保系他社にはない税理士・会計士チャネル(収保占率14%)の優位性があり、中小法人市場開拓にも注力する」(田山泰之・損保ジャパンひまわり生命社長)
「最上級の中核代理店が3分の1の収保占率で、その5割は生保専任の営業体制を備えており、04年度までにこのクラスを2000店まで拡大したい。生保挙績拡大に向け、親会社MSA会員プロ代理店6000店の生保総稼働による成功代理店づくり、親会社や当社教育チームによる生保プロづくりのための各種集合研修を推進している」(今井信吾・三井住友海上きらめき生命社長)
損保系生保8社中、6社が1万店以上の実働代理店数(生保委託代理店数のおよそ6割前後の割合)となっているが、@「店主一人親方」的代理店が大半で、生保専任営業体制を持たないことからコンサル力が弱い、A既存損保顧客への第3分野単品など低単価の追販主体営業であり、生保の純新規客の獲得ができていない、Bリスク潜在型の死亡保険のコンサルに不慣れで、旧来の国内生保の高倍率型定期付終身との比較優位を前提に商品体系を構築してきたため、単体終身、長期平準定期などのバラ売りが主体で、各種定期性特約付帯によるSの嵩上げができないことなどから、生産性が低い。
親子会社による生損保総合損益のビジネスモデルを確立する王道は、零細なプロ代理店を再編し、生保専任従業員を抱える企業型プロ代理店網を構築することだ。東京海上は昨年度から中核代理店制度をスタートさせた。自走型プロ代理店を選別、その集約・合併を推進し、これまで1店当たり手数料収入規模で3000〜5000万円レベル、経営・営業・事務機能を分化した体制を持つ企業型プロ代理店約300店が誕生。この中核代理店が生保営業専任の従業員を配備すれば生損保併売のコアチャネルとなる。一方、後継者不在の大型プロ代理店を中心に、同社が出資して役員(主に部支店長経験者が出向)を派遣する直資型代理店を32店展開、今年度中に55店を目途に増強する見通し。
「生損保併売率は親会社のプロ代理店で5%程度。併売率を上げるにはインフラ面の手当では顧客世帯単位の名寄せデータベースの構築が必要。コアチャネルのプロ代理店は、中核代理店の生保併売体制強化に期待している。生保専任プロモーター社員(05年度までに550人)を地域営業拠点に張り付けることで、さらなる生産性向上を実現する」(太田資暁・東京海上あんしん生命社長)
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